河田惠昭のレビュー一覧
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第1章 水害や水没の多発・激化は地球温暖化が元凶
●鬼怒川水害は、どこでも起こりうるのか?
●大雨が降るメカニズム
●台風の強大化と増加する雨量
●地球温暖化で変化する気象、海象
●沿岸域の影響――海面上昇や海岸侵食――
●想定外洪水対策が必要な時代に突入
●海抜ゼロメートル地帯の浸水、水没
●地下街の水没
第2章 世界の大都市の水没危険性
●水没する都市の特徴
●米国・ニューヨークの水没
●チェコ・プラハの水没
●タイ・バンコク郊外の水没
●イタリア・ベニスの水没
第3章 東京の水没危険性
●東京は「世界一水害に弱い」都市?
●2015年9月の関東・東北豪雨、東京は氾濫・水没を危うく逃れ -
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私が生まれた大阪市大正区は、江戸期の新田開発目的の干拓を発端にして海に向かって低い土地が広がるエリアだ。そのため、他の地域では見られないような巨大な防潮水門が河川に設置されている。小さい時からそれを見て育ったので、ずっとこう思っていた-「これがあれば、たいていの津波が来ても安心じゃないの?」
正直に言うとこの考えは2011年のあの震災の津波を見ても変わらなかった。「大阪湾は奥まっているし、これだけ頑丈な水門や堤防があれば津波も多少は弱められるし」という理屈で。でもこの本を読んで考えは変わった。全くの間違いだと。
この本は当初、南海トラフ巨大地震が確率的に必ず来ることを再三警告する内容で刊行さ -
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■鬼怒川水害で常総市の約3分の1,約40平方kmが水没したにもかかわらず犠牲者が3名に留まったのはひとえに堤防の高さが4メートルと低かったから。堤防が低いゆえに氾濫速度は遅く,氾濫水深も浅かった。
■雨が降るメカニズムは単純である。空気には飽和水蒸気圧という値があり,この値以上,水蒸気の形で水分を含むことができない。気温が下がるとこの飽和水蒸気圧も小さくなり,水蒸気が液体,即ち雨に変わる。これが大雨になるかは温かくて充分湿気を含んだ空気がどれくらい長期にわたって一定の方向から吹き続けるかどうかによる。
■大雨警報の発令基準は地域によって異なる。雨の降り方や水害の起こり方には地域性があるから。長 -
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巨大災害を研究テーマとしてマスコミにもよく登場する河田先生の著書。東日本大震災以来、地震と津波のリスクはかなり考慮されるようになってきましたが、過去の発生頻度や被害規模から考えると、3大都市圏への高潮・洪水による被害リスクの方が断然大きいという著者の主張が展開されます。そして何より国難となり得るパターンは、南海トラフ地震と首都直下型地震が起こり、河川堤防などにダメージが残る状況で、温暖化によって強大化した台風や、豪雨による河川氾濫、高潮などが追い打ちをかける複合型災害であるというのは非常に説得力があります。「そんな酷い災害が、立て続けに起こるのか」という素朴な疑問が沸きますが、実は江戸時代末期
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東日本大震災以来、津波に関する情報はテレビや新聞でかなり伝えられるようになりましたが、玉石混交でどれが信頼できる情報か、却って分かりにくくなった面もあります。私自身、大学で土木工学を専攻し、一般の人よりは知識はあると思っていましたが、一旦知識を整理しようと思い「何か良い書籍はないかな」と探していました。そこで辿り着いたのが、私も学生時代に在籍した防災研究所の所長も務められ、現在も巨大災害への提言をされている河田先生の執筆で、しかも出版は岩波新書という組み合わせの本書です。
専門的になり過ぎず、かつ重要な部分は割愛せず内容充実の印象でした。津波のメカニズム、特に「津波・高潮・高波」の違いの説明は -
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日本で起きた、地震、津波、噴火、台風、洪水、土砂災害、感染症、の歴史を知る。
未来の予測はできないが、起これば戦争よりも多くの死者が出てしまう自然災害。
1855年の安政江戸地震で浅草、本所・深川あたりは多くの家屋が崩れた。
1923年の関東大震災では、10万人以上の死者を出したが、墨田区だけで火事で4万人近くが死んでいる。
その20年後は、戦争で空爆を受け再度ひどい目に遭っている。
私の住まいの近辺は迷路のような狭い道だらけだが、両国・錦糸町、本所・深川の辺りは東西南北きれいに区画整理された街並みになっている。
この碁盤のように修復された道は、かつて地震と戦争でボロボロにされたことを物語っ -
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著者である歴史学者の磯田道史氏が大量の古文書を読み込んで日本の災害の歴史を研究(磯田氏は新聞と同じスピードで古文書を読めるということ)。江戸時代は識字率が高かったこともあり、様々な記録が残されている。本書はそれをマンガという形にして、若者でも受けられられやすいようにまとめたもののようで、ところどころ漢字にルビがふられている。
しかしマンガだからといってあなどるなかれ。文章量も多く、なかなか読みごたえがある。日本は本当に災害大国だ。記録を丹念に見ていくと、同じ場所で何度も同じような災害が起きているのがわかる。果たして現代人は、この教訓は生かせているだろうか…? -
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災害という視点で見ていくことで、日本史をより深く理解できるようにもなる一冊。
日本に住む以上、地震、津波などの天災と無縁ではいられない。これは多くの日本人が肌感覚でわかっていると思う。
古来より日本は天災の多い国だった。本書を読めば、それがよくわかる。
歴史から学ばなければ、僕らは命を奪うような天災には対処できない。なぜなら、一人の人間が幾度も経験できることではないからだ。人は失敗からしか学べないともいわれるが、失敗すなわち死に直結するような災害を何度も乗り越えながら学んでいくのはあまりにもリスクが高い。
だから思う。すべての日本人の基礎教養として、この手の知識をもっと学ぶべきであると。 -
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ここが大発見でした。「自助・共助・公助の意識」というものです。災害が起こる前は、自分で自分をを助けるべきだという自助の意識、周囲の人とともに助け合おうとする共助という意識、自治体や国といった公的機関の助けをあてにする公助という意識は、1:2:7の割合だそうで、これが災害後になると、7:2:1に逆転するそうです。つまり、災害を経験すると、「自分のことは自分で守らねばならない」という意識が大きく育ち、「国や自治体はあてにならない」という幻滅が生じるということです。これは真理であると思いました。自分は自分で助けてやらねばならないという「自助」というもの。そして、これは災害時に限らず、各人が生きていく
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