浜野アキオのレビュー一覧
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全世界を巻き込んだ〈ゾンビ戦争〉の終結から10年、わずかに生き残った人々はそれぞれの場所で復興の途中である……
そんな各国の人々にインタビューして回り、集めた回顧録。インタビュー形式は久々です、「巨神計画」以来?
所属している読書会の「ゾンビ回」で紹介された作品のうちのひとつ。
映画はおすすめされなかったですし、「この内容ならディスカバリーチャンネルでドキュメンタリー風に作ったら面白かったんじゃないか?」でした。確かに…!
上巻はゾンビ発生から対処の途中。
地域性や国民性で、対応に違いがあったのがリアルでした。
大いなるパニック、各国で採用される「レデカー・プラン」的な選別戦法。そして無力感から起きる自然死。
少数を犠牲にして大多数を救う、ポール・レデカーが考えた「レデカー・プラン」はこういう戦法あると知っていても実際やれるかどうか…だし、犠牲にされる・犠牲にするのまさにその場にいると双方とも絶望しかない。やる方もいつやられる方に回るかわからんし。。。
そう思うと、シン将軍はすごいな。
戦争に勝つには、大量の物資、物資を製造するのに必要な天然資源、これらを工場や前線に運ぶ輸送手段の掌握が必須というのはわかります。
どこの国の人でもアメリカ人みたいな文体で喋るなぁというのは置いておいても、『架空戦記』(対ゾンビの…)として面白く読みました。下巻へ続く。 -
Posted by ブクログ
評判どおり面白い翻訳エンタメ小説だった。
主人公は多重人格者の26歳のアンドルー。脳内に家を作り複数の人格をアンドルーという青年の人格がコントロールし、上手く暮らしている。彼はふとした弾みで殺人犯を事故死に追い込んだことをきっかけに、自分が継父を殺したのではないかという疑念を持つ。そして同じ障害を持つ同僚女性のペニーと一緒に故郷へ向かう話だ。一気読みとまでは行かない。とても読みやすいが、登場人物が複雑なのでホイホイと軽く読み飛ばす感じではない。
この本が書かれたのは2003年。デニス・レヘインが「シャッターチャンス」を書き、映画「ペイチェック」が撮影された年だ。何が現実か、自分の記憶は正しいのかもわからない、そういうテーマがもてはやされた時代の作品だ。
前半はダニエル・キイスの「24人のビリー・ミリガン」のようだ。多重人格のアンドルーとペニーそれぞれが複数の人格を持つので話が少し複雑だ。アンドルーの意識が離れているうちに暴走した別人格が起こしたことはアンドルー本人にはわからない。そんなトラブルが多々起こるが本人たちは大変だろうが明るいトーンで描かれる。
知らない間に別人格が勝手な行動をし違う方向に話が進むのは、クリストファー・ノーラン監督の映画「メメント」で記憶が10分しか保たないという障害の設定を思い出した。しかし話はそっちには行きすぎず、あくまで「24人のビリー・ミリガン」のように淡々と進む。多重人格サスペンスにはしていない。もっと明るいのだ。
後半は、継父の死の謎を追いかけながら次第にコントロールが効かなくなるアンドルー。アンドルーの本来の人格に隠された過去!何が現実で、何が起きたのか!何が何やら誰が誰やら。
さて、【すべてがここに詰まってる】と帯にある。確かにいろいろな要素をてんこ盛りに入れている。面白いエンタメ小説はそういうものだ。これを◯◯小説だと思い込んで読まない方が良いということだ。色々なことを描きながら、2人を含む登場人物それぞれがそれぞれの問題を乗り越えて前に進んでいく。そしてそこには新しい旅立ちがある。もちろん安心して読んで欲しいがハッピーエンドだ。あえて言うなら成長小説なのかもしれませんね。
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Posted by ブクログ
ネタバレ文庫本1冊で1077ページ(解説含む)。
京極夏彦にも引けを取らないページ数の長大な物語。
でも、紙質によるものなのかいわゆる「レンガ」まではいかず、厚揚げ程度の厚み。
始まりが良かった。
「父はぼくを呼び出した。
初めて湖から出てきたとき、ぼくは二十六歳だった。」
?
何言ってる?
となるのだが、次第に物語の設定が分かってくる。
「ぼく」の名前はアンドルー・ゲージ。
アンディ・ゲージを身体とする多重人格者の1人格。そして1魂。
そう、魂とは多重人格者における、人格達のこと。
この設定を明らかにしていく序盤の語りが多重人格者を題材にした小説にして、これまでにない引き込みだった。
『魂に秩序を』というタイトルに対する最初の印象は、もちろん内的な感情に対する何かを象徴したものが綴られたものだとは思ったが、どちらかというと理屈っぽい犯罪心理とか主人公の主義主張が語られるようなものかなぁと想像したのだが、全然違った。
混沌とする多重人格者の頭の中で秩序をもたらすために行われている営みのあれやこれやをSFチックに描きながら、「アンドルー・ゲージ」という1魂には記憶として持っていない、いわくありげな過去に向き合っていく物語。
『インサイド・ヘッド』の青年版という感じだが、売り文句にあるようにジャンル融合ぶりが凄まじい。
SF小説であり、青春小説であり、ミステリーであり、ロードノベル。
語り口はけっこうライト。
なのでさくさく読んでいけるので、全体のページ数に対して体感的には進みは早く感じる。
それでもやはり長い。
長いけど、不思議と必要性のある長さだと感じた。
ここの部分は冗長だなとかストーリーがもたついているなという感じは受けず、そのときどきの展開、ジャンルを勢いの中で楽しめた。
ふとした瞬間「あれ、これ何の話だったっけ?」と思うときもあるのだが、最終的にスタート地点に戻ってくるので、収まりも良かったと思う。
マット・ラフ、何か聞いたことあるなぁと思っていたのだが『バッド・モンキーズ』の作者だった。
あれも全く内容は覚えていないのだが、不思議なアメコミ調の話で意外と面白かった印象を持っている。
不思議なのはあの作品よりも出版年が前の大長編作品が今になってぽっと邦訳されたこと。
その辺の出版社事情とかも解説、あとがきで教えてくれると興味深かったのだが。。
このミス2025年度版海外編第8位。 -
Posted by ブクログ
本書は、深い問題を抱えた登場人物たちに驚くべき自己開示の瞬間を迫るという、絶妙なプロットのサスペンス小説である。
ニューヨーク市警のトップ殺人捜査官を退職し、現在はニューヨーク州北部で妻のマドレーヌと新しい生活を始めたデイブ・ガーニー。
「数字を一つ思い浮かべて見ろ!」
そんな彼の元にこのような文面の手紙が何週間にも渡って届き続けたのだ。この手紙は、ガーニーにとって退職後のマンネリ化した日々に刺激を与えるものであった。しかし、ほどなくして大規模な連続殺人事件が発生し、ガーニーは捜査に巻き込まれることになる。手紙の主は、脅しと警告に満ちた韻を踏むのが好きで、証拠を残さず捜査陣をいつも煙に巻く一筋縄ではいかない人物である。
これに対し、捜査活動の中心人物となったガーニーは、ほどなく地元警察を驚愕に陥れるほどの推理力を発揮することになる。あたかも千里眼のように見える相手と知恵を競い合うガーニーだが、悲劇に彩られた過去は次第に彼を悩ませ、いつしか結婚生活に危険な断崖絶壁を予感させることになる。
この本で私が印象に残った点は、随所で発生する法執行機関の不可解な決定と不信感が漂ってくる点である。途中から、アメリカの刑事ミステリの王道である警察機構内部の対立構造が絡み始め、捜査活動とは別の圧力で苦悩するガーニーの姿が非常にもどかしくなるところもGoodであった。 -
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ネタバレ面白かった。
著者の『World War Z』も面白かったがこちらも面白かった。主人公設定としては一人だが、いろいろな媒体から取り寄せて実像を浮かばせるやり方はここでもあった。
サバイバルモノとしては変化球であり、現代的。ネットインフラが遮断し、食料に心許なさを覚えるが、電気や水の心配がひとまずないのが面白い。
また、集まったコミュニティのキャラが風刺的。悪く言えば意識高い系。だからこそ、発案者が崩れるのが象徴的。
主人公のケイトの性格はわからないが、空気が読めて理論的で穏やかな人なんだろうなとうかがえる。ニュートラル。
ダンの変化もトニーやイヴェットの変化も面白い。
哲学者のラインハートは、家庭というか、過去、父親に追随し、手は動かさないが口は出しするキャラとして妹目線で描かれているのが良かった。
あと驚いたのは、ケイトの兄貴がゲイだったこと。さらりと出てくるのが良かった。
モスターは最初名前に慣れなくて、え?モンスター?と誤読したけど、これわざとなのか。街の名前からとったらしいが。念のために備えて行動出来てて良かったし、だからこそ、ケイトの闘争心に火を付けてて良かった。
あんまギスギスしなかったな。リアル。みんなインテリだから、見たいものを見ようとするが、仲間割れを望んでいるわけじゃないというのが良かった。
まあ、なんか、動物を傷つけるなんて!とか、共存や友好関係を夢見てるところは先進国諸国と独裁者国家とのやりとりみたいで面白かった。
タイトルは退化。確かに。文明を捨てて、狩りに行くわけだから。皮肉のきいたタイトルで面白い。 -
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上巻に引き続き、誰も彼もがアメリカンな喋り方をするのが鼻につく。
良かったところは、ゾンビ大戦の始まりから終わり、そして終戦後までを書ききったところ。特に終戦後、各人の価値観が経験や所属国家によって様々に変化した点が良かった。
上巻の後半から下巻の前半にかけては「ゾンビが発生してどうしたか?」が展開されるが、これは多くのフィクション作品でも見られるため、食傷気味に感じながら読んでいた。しかし、終戦後を描いた作品はとんと見ない。「CURE」か「学校ぐらし!」のエピローグくらいだろうか。それを、この作品はきちんと描いたのである。ツッコミどころはあれど、描いた点を評価したい。 -
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ネタバレ『硝子の塔の殺人』で内で触れられていて気になったので購入しました。久しぶりの海外ミステリ。
トリックそのものはわりと素直な印象ですが、冒頭からのTHE本格読んでるときのドキドキ感が味わえたのが良かったです。続きが気になって一気に読んでしまいました。主人公の元刑事と奥さんの哀愁漂う倦怠期描写にも緊張していたので、再生に向かうラストも心地よかったです。
ところで「1-1000の間の数字をひとつ思い浮かべろ」と聞かれたら、皆様なら何が浮かびますか?本編とは関係ないものの、このテストを現実で実際にやってみたらどういう分布になるか、それも興味が湧きました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレあくのある登場人物が織り成すアメリカ的な骨太警察物と怪事件のトリックの解明が主である本格ミステリとの見事な融合。
序盤は、”お前のことは全てお見通しだ”的な脅迫文とその後に続く全くわけのわからない殺害現場、何か個人的な恨みを買うようなことがありそうな被害者にまつわる誰が何のためにという謎でぐいぐい引っ張られる。
そうかと思うと別の場所で類似の手口の事件が発生し「え!?」と全く予期せぬ展開に。
ときおりある主人公で元警察感のガーニーと妻のメデリンの意味深な、かつぎすぎすした会話が適度な緊張感を生むと共に事件解決への糸口となっていることも、何か根底で通じ合う愛がある故の賜物という気がして、夫婦の絆を取り戻すという副ストーリーとしての良いスパイスになっていた気がする。