浜野アキオのレビュー一覧
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ネタバレ文庫本1冊で1077ページ(解説含む)。
京極夏彦にも引けを取らないページ数の長大な物語。
でも、紙質によるものなのかいわゆる「レンガ」まではいかず、厚揚げ程度の厚み。
始まりが良かった。
「父はぼくを呼び出した。
初めて湖から出てきたとき、ぼくは二十六歳だった。」
?
何言ってる?
となるのだが、次第に物語の設定が分かってくる。
「ぼく」の名前はアンドルー・ゲージ。
アンディ・ゲージを身体とする多重人格者の1人格。そして1魂。
そう、魂とは多重人格者における、人格達のこと。
この設定を明らかにしていく序盤の語りが多重人格者を題材にした小説にして、これまでにない引き込みだった。
『魂に秩序 -
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本書は、深い問題を抱えた登場人物たちに驚くべき自己開示の瞬間を迫るという、絶妙なプロットのサスペンス小説である。
ニューヨーク市警のトップ殺人捜査官を退職し、現在はニューヨーク州北部で妻のマドレーヌと新しい生活を始めたデイブ・ガーニー。
「数字を一つ思い浮かべて見ろ!」
そんな彼の元にこのような文面の手紙が何週間にも渡って届き続けたのだ。この手紙は、ガーニーにとって退職後のマンネリ化した日々に刺激を与えるものであった。しかし、ほどなくして大規模な連続殺人事件が発生し、ガーニーは捜査に巻き込まれることになる。手紙の主は、脅しと警告に満ちた韻を踏むのが好きで、証拠を残さず捜査陣をいつも煙に巻 -
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ネタバレ面白かった。
著者の『World War Z』も面白かったがこちらも面白かった。主人公設定としては一人だが、いろいろな媒体から取り寄せて実像を浮かばせるやり方はここでもあった。
サバイバルモノとしては変化球であり、現代的。ネットインフラが遮断し、食料に心許なさを覚えるが、電気や水の心配がひとまずないのが面白い。
また、集まったコミュニティのキャラが風刺的。悪く言えば意識高い系。だからこそ、発案者が崩れるのが象徴的。
主人公のケイトの性格はわからないが、空気が読めて理論的で穏やかな人なんだろうなとうかがえる。ニュートラル。
ダンの変化もトニーやイヴェットの変化も面白い。
哲学者のラインハート -
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上巻に引き続き、誰も彼もがアメリカンな喋り方をするのが鼻につく。
良かったところは、ゾンビ大戦の始まりから終わり、そして終戦後までを書ききったところ。特に終戦後、各人の価値観が経験や所属国家によって様々に変化した点が良かった。
上巻の後半から下巻の前半にかけては「ゾンビが発生してどうしたか?」が展開されるが、これは多くのフィクション作品でも見られるため、食傷気味に感じながら読んでいた。しかし、終戦後を描いた作品はとんと見ない。「CURE」か「学校ぐらし!」のエピローグくらいだろうか。それを、この作品はきちんと描いたのである。ツッコミどころはあれど、描いた点を評価したい。 -
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ネタバレ『硝子の塔の殺人』で内で触れられていて気になったので購入しました。久しぶりの海外ミステリ。
トリックそのものはわりと素直な印象ですが、冒頭からのTHE本格読んでるときのドキドキ感が味わえたのが良かったです。続きが気になって一気に読んでしまいました。主人公の元刑事と奥さんの哀愁漂う倦怠期描写にも緊張していたので、再生に向かうラストも心地よかったです。
ところで「1-1000の間の数字をひとつ思い浮かべろ」と聞かれたら、皆様なら何が浮かびますか?本編とは関係ないものの、このテストを現実で実際にやってみたらどういう分布になるか、それも興味が湧きました。 -
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ネタバレあくのある登場人物が織り成すアメリカ的な骨太警察物と怪事件のトリックの解明が主である本格ミステリとの見事な融合。
序盤は、”お前のことは全てお見通しだ”的な脅迫文とその後に続く全くわけのわからない殺害現場、何か個人的な恨みを買うようなことがありそうな被害者にまつわる誰が何のためにという謎でぐいぐい引っ張られる。
そうかと思うと別の場所で類似の手口の事件が発生し「え!?」と全く予期せぬ展開に。
ときおりある主人公で元警察感のガーニーと妻のメデリンの意味深な、かつぎすぎすした会話が適度な緊張感を生むと共に事件解決への糸口となっていることも、何か根底で通じ合う愛がある故の賜物という気がして、夫婦 -
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『本格ミステリ・ベスト10』で高評価だったので読んでみた。男に手紙が届く。その中には脅迫めいた文章と「1000までの中で数字を一つ思い浮かべろ」の文字。男が三桁の数字を思い浮かべて同封の紙を広げたら、正にその数字が書いてあった。後日、同じように数字を当てられ、その男は不可能状況の中で殺される・・・というミステリ。
黄金時代の本格ミステリが現代に甦った、との宣伝文句だが、確かに重厚で良く構成された作品だった。
何とも不思議な現象の割に、解明されたトリックは驚くほどの事では無かったし、もう少し簡潔(半分位のページ数)に書かれていたら尚更良かったが、傑作である事は間違い無い。 -
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ネタバレマックス・ブルックスによるゾンビ小説下巻。
いよいよ人類による反撃が始まる。よくあるゾンビものと同様、頭を潰すか吹き飛ばせば倒せるが、核は効かないとか、海の底でも問題なく動けるとか、でも寒いところでは動きが止まるとか、街が壊滅的な被害を受けているのに武器弾薬はどうやって製造しているのかとか、いろいろ微妙にツッコミどころは多々あるが、それでも非常によく考えられ、ある程度は納得のいく説明もなされている。下巻では日本人もようやくといった感じて登場するが、アメリカ人から見た日本人のイメージってこんな感じなのかなという、日本人から見るとやや違和感のある設定となっている。が、非常によく調べており、その点で