あらすじ
わずか2年前、アンドルーは多重人格者の魂の代表として26歳にして“誕生”し、魂たちの共存のため奮闘していた。ある日、殺人犯を事故死へ追い込んだことで、自分が継父を殺害したのではないかという疑念に囚われる。真相解明のため、同じ障害をもつ女性ペニーと故郷へ向かうが、自身の隠された秘密だけでなく闇の魂からの脅威にも晒され……。あらゆるジャンルを包み込む物語の万華鏡!(解説・霜月蒼)
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Posted by ブクログ
このミステリがすごい!で知り、手に取りました。
主人公は多重人格者で、予想通り、辛い過去を持っているのですが、とある理由から、それを感じさせない程、明るく落ち着いていて、読んでいて好感が持てました。むしろ、その他の非多重人格者の方が、少し性格に問題がある…と感じられる方が多かったです。
どう面白かったのか、説明するのは難しいですが、分厚いのに、読むのは全く苦痛ではなく、次々と繰り広げられる展開に、ページを捲る手が止められなかったです。本を読み終わりたくなかったです。
ゆっくり時間の確保が出来る、年末年始におすすめします。
Posted by ブクログ
分厚いが、文字は大きめ。
分厚さは必要なのか。と思ってしまったが、最後まで読むと必要だと思った。
歩み出す一歩がキラキラしてました。
みんな幸せになって、と願いましたね。
Posted by ブクログ
鬼★5 多重人格×多重人格の人格群像劇!複数の自分自身と戦う若者たちの成長ストーリー #魂に秩序を
■きっと読みたくなるレビュー
鬼★5 今年の翻訳ミステリートップレベル。
怪物のような作品です、はー、面白かった~。新潮文庫史上、最もぶ厚い本とのことで、1,000ページ以上あります。でも面白過ぎてあっという間にページが進んじゃうのでご安心を。
前半は多重人格障害者の背景や様々な日常が描かれ、後半は自らの過去を探し出す展開になっていく。ミステリーはもちろん、青春、恋愛、サスペンス、冒険小説など、様々な要素を含んだエンタメ小説です。兎にも角にも「強烈」な作品ですので、是非お時間をとって読んで欲しいです。
〇多重人格障害、ふたりの物語
アンドルー:
多重人格障害でありながらも、人格アンドルーが各々の人格をしっかり管理している。いま誰が体を支配しているか、誰が何を言ったかなどをそれぞれが覚えられる状態。人格アンドルーは2年前に生まれたため、自身で起こったことでも、誕生以前のことは知らない。人格管理はできているが、お酒を呑んだり、心神喪失の状態に陥ると、人格破綻を起こしてしまう。
ペニー:
自身が多重人格障害であること自体を理解していない。人格をまったく管理できておらず、その時々でそれぞれの人格が支配する。そのため支配している人格以外は、突然記憶をなくしてしまう。
こんな二人をメインにストーリーは進行するのですが、多重人格なのでこんなやり取りになるんです。
・多重人格 1人 :ひとりの中にいる、複数の人格同志でやりとり
・多重人格 1人と1人 :複数の人格と複数の人格のやりとり
・多重人格 2人と一般人:複数の人格×2と一般人のやりとり
社会人として働く必要はあるし、友人もつくり、恋愛だってすることもある。時にはトラブルに巻き込まれるし、大切な人を守ったり、攻撃されたら排除しなければいけない。そして物語の後半には、たった二人で旅をしながら自らのルーツを探ることになる。もちろん協力的な人もいるが、害悪を加えようとする人もおり…
いやーーーーーー、無理でしょ!無理。
こんなに胃の奥底に圧力がかかる物語はないですよ、すべての場面でどうなることやらってヒヤヒヤ。それはヤバいよ、なんでそうなっちゃうんだよって、感情が揺れまくりで大変でしたよ。
〇多重人格障害の現実
こういうことなのか…
話には聞いたことはあっても、障害を持った方と会ったことはないですし、経験したこともない。どうやって人格に秩序をもたらしているのか、そのためにどういった努力をしてきたか。完治するのがいかに難しいのか。
ひとりの中で、こんなにも複雑で綿密なやりとりがされているとは知りませんでした。これは大変だわ… 1,000ページ、しっかりと勉強をさせてもらいました。
〇障害に至った背景
原因は幼い頃の虐待と言われますが、実際に体験した人は… ホントに可哀想すね。特にペニーが障害を発生してしまうときの描写は、単にツライとかヒドイとかそういうレベルではなく、絶望の闇の底に落ちていく感じなんですよ。文字だけでここまで追い込まれる気持ちになるとは…
子どもの頃に「愛」が得られないと、人間はどうなってしまうのか。腹が立ってしかたがないのですが、虐待する側の事情があるでしょうし、社会がしっかり守ってあげない課題だと思いました。
〇二人のそばにいる人たち
イチ推しはミセス・ウィンズロー(アンドルーの住まいの大家)ですね。
彼女にも深い傷があるけど、人間と向き合う力がある素敵な女性。うわべだけの優しさではなく、自らを犠牲にしても、弱い人を守ってあげられるような人間でありたいですね。
あとジュリー、あんた正直でいい奴なんだけど、無邪気がすぎる。
〇おわりに
さて、まだ書こうと思うばどんだけでも書けるんですが、このくらいにしておきます。ミステリーとしても、なかなかの真相が待ち受けているし、サプライズなこともしっかりある。多重人格でも、温かみのある恋愛や友情も描かれてますが、突然罵詈雑言が飛び交う会話も凄まじい。
個人的には年間トップレベルの作品で、この衝撃を多くの人に体験をしてほしいです。
■ぜっさん推しポイント
やっぱり終章ですよ。長い長い本だったのに、終わってしまうのか… と寂しくなってしまうんです。この二人の人生をもっと見てみたい、幸せになってほしいと願わずにはいられない。
人生には様々な困難が待ち受けています。病気、人間関係、仕事、経済的なことなど、耐えがたいことがいっぱいある。ただこの二人を見てほしい。こんなにも困難な人生でも、日々あきらめずに成長しようと努力している。少しくらい嫌なことがあっても、挫けずに前を向くことが大切ですね。この二人に負けてられません。
Posted by ブクログ
多重人格の主人公が多重人格の女性と出会い、自身の闇にある過去の事件について調べていく。
一気読みではないけれど、読み進めるたびに印象が変化していくのが楽しく長いけど良かった。
よくこんなややこしい話考えるなぁ…
Posted by ブクログ
2人の語り手がともに多重人格という設定をうまく使って、それ単体で小説一本書けちゃうような様々な題材を一つの小説に無理なく取り込むことに成功している。
この分厚いお話を分冊しなかったのは英断だと思うけど、それを売りにするのはちょっと違うんじゃないかなあ。
Posted by ブクログ
評判どおり面白い翻訳エンタメ小説だった。
主人公は多重人格者の26歳のアンドルー。脳内に家を作り複数の人格をアンドルーという青年の人格がコントロールし、上手く暮らしている。彼はふとした弾みで殺人犯を事故死に追い込んだことをきっかけに、自分が継父を殺したのではないかという疑念を持つ。そして同じ障害を持つ同僚女性のペニーと一緒に故郷へ向かう話だ。一気読みとまでは行かない。とても読みやすいが、登場人物が複雑なのでホイホイと軽く読み飛ばす感じてはない。
この本が書かれたのは2003年。デニス・レヘインが「シャッターチャンス」を書き、映画「ペイチェック」が撮影された年だ。何が現実か、自分の記憶は正しいのかもわからない、そういうテーマがもてはやされた時代の作品だ。
前半はダニエル・キイスの「24人のビリー・ミリガン」のようだ。多重人格のアンドルーとペニーそれぞれが複数の人格を持つので話が少し複雑だ。アンドルーの意識が離れているうちに暴走した別人格が起こしたことはアンドルー本人にはわからない。そんなトラブルが多々起こるが本人たちは大変だろうが明るいトーンで描かれる。
知らない間に別人格が勝手な行動をし違う方向に話が進むのは、クリストファー・ノーラン監督の映画「メメント」で記憶が10分しか保たないという障害の設定を思い出した。しかし話はそっちには行きすぎず、あくまで「24人のビリー・ミリガン」のように淡々と進む。多重人格サスペンスにはしていない。もっと明るいのだ。
後半は、継父の死の謎を追いかけながら次第にコントロールが効かなくなるアンドルー。アンドルーの本来の人格に隠された過去!何が現実で、何が起きたのか!何が何やら誰が誰やら。
さて、【すべてがここに詰まってる】と帯にある。確かにいろいろな要素をてんこ盛りに入れている。面白いエンタメ小説はそういうものだ。これを◯◯小説だと思い込んで読まない方が良いということだ。色々なことを描きながら、2人を含む登場人物それぞれがそれぞれの問題を乗り越えて前に進んでいく。そしてそこには新しい旅立ちがある。もちろん安心して読んで欲しいがハッピーエンドだ。あえて言うなら成長小説なのかもしれませんね。
Posted by ブクログ
2025年1冊目。
テーマが多重人格と初めて触れるジャンルで興味深く読めた。
昔何かで読んだ、文字や音に色がついて見える人の話を読んだ時みたいな、自分にはない感覚(感覚だけどその人にとっての現実)を覗いてる見たいで、引き込まれた。
後味も良く、長いけど面白かった。
Posted by ブクログ
文庫本1冊で1077ページ(解説含む)。
京極夏彦にも引けを取らないページ数の長大な物語。
でも、紙質によるものなのかいわゆる「レンガ」まではいかず、厚揚げ程度の厚み。
始まりが良かった。
「父はぼくを呼び出した。
初めて湖から出てきたとき、ぼくは二十六歳だった。」
?
何言ってる?
となるのだが、次第に物語の設定が分かってくる。
「ぼく」の名前はアンドルー・ゲージ。
アンディ・ゲージを身体とする多重人格者の1人格。そして1魂。
そう、魂とは多重人格者における、人格達のこと。
この設定を明らかにしていく序盤の語りが多重人格者を題材にした小説にして、これまでにない引き込みだった。
『魂に秩序を』というタイトルに対する最初の印象は、もちろん内的な感情に対する何かを象徴したものが綴られたものだとは思ったが、どちらかというと理屈っぽい犯罪心理とか主人公の主義主張が語られるようなものかなぁと想像したのだが、全然違った。
混沌とする多重人格者の頭の中で秩序をもたらすために行われている営みのあれやこれやをSFチックに描きながら、「アンドルー・ゲージ」という1魂には記憶として持っていない、いわくありげな過去に向き合っていく物語。
『インサイド・ヘッド』の青年版という感じだが、売り文句にあるようにジャンル融合ぶりが凄まじい。
SF小説であり、青春小説であり、ミステリーであり、ロードノベル。
語り口はけっこうライト。
なのでさくさく読んでいけるので、全体のページ数に対して体感的には進みは早く感じる。
それでもやはり長い。
長いけど、不思議と必要性のある長さだと感じた。
ここの部分は冗長だなとかストーリーがもたついているなという感じは受けず、そのときどきの展開、ジャンルを勢いの中で楽しめた。
ふとした瞬間「あれ、これ何の話だったっけ?」と思うときもあるのだが、最終的にスタート地点に戻ってくるので、収まりも良かったと思う。
マット・ラフ、何か聞いたことあるなぁと思っていたのだが『バッド・モンキーズ』の作者だった。
あれも全く内容は覚えていないのだが、不思議なアメコミ調の話で意外と面白かった印象を持っている。
不思議なのはあの作品よりも出版年が前の大長編作品が今になってぽっと邦訳されたこと。
その辺の出版社事情とかも解説、あとがきで教えてくれると興味深かったのだが。。
このミス2025年度版海外編第8位。
Posted by ブクログ
新潮文庫最厚というこの作品――敢えて分冊(上·下巻とか)にしなかった理由は、読み進めていくと理解出来ましたけど、まあとにかく長い。
色々なジャンルを網羅的に展開しているとは言え、ゴチャっとしている感じ。大きな鍋に手当たり次第に食材ぶち込んで煮ている、と言うか…
Posted by ブクログ
このミスのランキングに入っているのを見て知りました。大作で読み応えありそうとわくわくしながら本棚に飾っておき、年明けから読み始めました。
読み終えて、ミステリーの枠組みで期待しすぎたことを反省。
登場人物の違和感を感じる言動から伏線かもしれないと深読みしていた複数の事柄が、ただそういうパーソナリティの人物だったということでした。。勝手に期待外れな気持ちになってしまいました。
あとがきにもあったように、ジャンルの枠に嵌めず読むと楽しめたと思います。
「多重人格を持ちながら生きることを模索する」というテーマを縦横無尽に描ききった物語だったと感じました。邦題が物語の根幹を的確に表していて、秀逸。
文章量は多いけれど登場人物が少なく、訳も難しい表現は使われずに読み易く(「クソ」の多さにやや辟易するけど慣れます)するすると読み進められ、気楽に楽しめるエンタメ作品でした。
Posted by ブクログ
一気読み必至というほどの推進力はあまりなかった気がします。年始2冊目で挫折したくなかったので、なんとか最後まで読みましたが、期待したほどのスリルを感じられらなかったせいかもしれません。