山鳥重のレビュー一覧
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心像の形成によって、見えている世界。この世に対する知識は、暗記するところから始まっている。生まれた瞬間は無であってそこからあらゆる情報を蓄えていき、自分の中にある理解と照らし合わせていき、知識の束を創出する。
しかし、そうと考えると、人間は生まれた瞬間から元から「何か」を知っている生き物ではないのかとも思った。ただそれは筆者の畑とは異質な哲学的、非科学的考えといいうるが‥。対称的に、脳神経医学の見地から人間の記憶の根本理解から発生まで論理的に説明しているため、説得力があった。また、端的な内容で、余計な説明等がなかったことを高く評価したい。 -
Posted by ブクログ
本書は、「わかる」ということ、認識の仕組みをやさしくまとめたものです。
「わかりました」って、本当にわかったのか。どこまでをどうわかったかという、いつもながらの疑問に応えるヒントの書です。
脳科学から、「わかる」へのアプローチです。
気になったのは、以下です。
・わからないことがあるからこそ、わかったがある。わからないのがわかったというのは考えたからです。考えなければわからないままです。
・こころの動きには2つあります。ひとつは感情で、もう一つは思考です。
感情はこころの全体の動きである傾向を示します。なんとなく好き、なんとなく嫌い、なのであって、理由ははっきりしません
思考は心像という心理的な単位を、縦にならべたり、横にならべたりそれらの間に関係を作りだす働きです。
・知覚を介して新しい経験を受け入れます。視覚、聴覚、臭覚、味覚、体性感覚などがあります。心像の獲得は知覚からはじまります。
・知覚のもっとも重要な働きは、対象を区別することです、違いがわかることです。
・知覚を十分に発揮するためには、注意という仕掛けが必要です。注意をかき立てるのは感情です。好奇心です。心は、好奇心⇒注意⇒知覚の流れで働きます。何事も好きになることが大事です。「好きこそものの上手なれ」です。
・視覚系の機能は、対象を区別し同定することです。
・心像には、現在まわりで起こっていることを知覚し続けている知覚心像と、すでに心に溜め込まれている記憶心像の2種類があります。
・知覚心像のままでは、意味をもちません。記憶心像という裏付けがあってこそ、意味を持ちます
・名前を付けるというは、記憶心像に音声記号を張り付けるということです。
・記号とは、なにかを表すためのしるしです。そのしるし自体には、もともと意味がありません。しるしはかくかくしかじかというモノを表しますという取り決めです。
・記号の中でもっとも重要なモノが言語です。単語を区別するための記憶心像を音韻といいます。
・正確な通信手段が集団としての行動を可能とし、危険を未然に防ぎ、種族を生き延びさせるのに大いに役立ったはずです。
・石原慎太郎の「「NO」といえる日本」。日本語にNOにあたる言葉がないので、わざわざNOを使っています。使う必要のない言葉は、生まれないのです。
・外来文化が大量に入ってくるときには、異なる概念である言葉が大量に入ってきます。これを自分の国の言葉に消化するのに時間がかかります。その時間がとれないと、消化不良の言葉が社会に溢れることになります。明治時代がそうでした。
・新しい概念は、解説付きの新しい言葉としてしか受け入れることができません。
・わかる、分かったという経験の第一歩は、なんといっても言語体験です。相手と同じ心像を喚起するためには、その手段である言葉とことばの意味を正しく覚えておく必要があります。記憶になりことはわからないのです。
・分からない言葉はきちんと辞書を引くか、その都度正しく覚えておかなければなりません。
・「IT」などという記号をなんとなく雰囲気や脈絡だけでつかうのはもっとも危険です。なんとなくわかったような気分になりますが、わかっているのは文脈から立ち上がる輪郭だけで、中身がありません。しっかりした記憶心像はきちんと記憶しておかない限り作れません。
・音だけを気分で使っていると頭の方がそれに馴れてきて、聞きなれない言葉を聞いても、「それ何?」と問いかけなくなります。
・わかるの原点は後にも先にもまず、言葉の正確な意味理解です。ここをおろそかにしてはいけません。
・単語の意味がわかるためには、その記号を自分が蓄積させている記憶心像と照合させる必要があります。その都度、辞書を引いて「あゝ、わかった」ではなかなか先へ進めません。自分でちゃんと記憶しておく必要があります。
・いろんな記憶
① 情動反応 悲しくなるとなけてくる、うれしくなると笑えてきます。この情動反応も記憶の1つです。
② 出来事の記憶 身の回りに起こる1回1回の出来事の記憶 出来事、場所、時間、感情、その時の考えなどさまざまな情報の複合体で、シーンの連続として記録されます
③ 意味の記憶 出来事のうちの変わらない部分です。生活に必要な概念や約束事の記憶です
ことがらの記憶 あるまとまりを形成していることがらがそのまま記憶されていて、それを呼び出せばその記憶の働きが終了するタイプの記憶 何度も繰り返し経験することで少しずつ作り上げている記憶
関係の意味 ことがらとことがらの関係 たとえば親子関係
変化の概念 動詞のイメージ 隠れる、移るなどの概念
④ 手順の記憶
・すべて最初は出来事として記憶される
・いろいろな「わかる」
① 全体像で「わかる」 地図をイメージ、大局観、俯瞰、 「木を見ず、森を見よ」
② 整理すると「わかる」 分類できるとすっきりする
③ 筋が通ると「わかる」 説明がうまくつながれば「わかった」と感じられる。
④ 空間関係で「わかる」 2次元、3次元イメージでわかる。立体の理解、回転、移動、変型できるとわかる
⑤ 仕組みで「わかる」 物体の相互の動きを理解することでわかる 動きの背後・理由を知ることでわかる
⑥ 規則で「わかる」 原理原則を理解する 手順を進めてわかる わかったというのは感情なのでです。約束の手順を進めるにあたって何かを感じることはありません。
・どんなときに「わかる」
① 直観的に「わかる」 納得する、合点がいく、腑に落ちる
② まとまることで「わかる」 本を読み終えてわかる。ドラマを見終えてわかる。友人と会話をしてわかる
③ ルールを発見することで「わかる」 仮説検証してわかる
④ 置き換えることで「わかる」 比喩や、たとえ話をみてわかる
・「わかる」ためには何が必要か
意味が分からないとわかりたいと感じる。わかるというのは秩序を生む心の動き。秩序が生まれると、心はわかったと感じてくれる、心に快感、落ち着きが生まれる
わかるためには、記憶と知識の意味の網み目が必要、そのためには、何千語という言葉の知識の蓄積が必要
知識の網の目にひっかかってくれるのが、「わからない」。わかること、知識がないと「わからない」は引っかからない
そのためには、網の目を長い時間をかけて作る必要がある。近道はない
わかるためには、「これはわからない」「ここまではわかった」ということに気がつく必要がある。「わからない」とは、新しい問題に直面したときに、これは自分の頭いんはおさまらないぞという、「心の異物感」である
わかるとは自分でわかる必要があります。自分でわからないこと路を見つけ、自分でわかるようにならなくてはならない
・本当にわかったか
図にしてみる わからなければ、図にかけない
自分でやってみる 運動化できなければ本当にわかっていない
自分のことばで説明し直してみる わからなければ、自分の言葉で表現はできない
そうしてみれば本当にわかったのか、それとも、分かった気になっているが全然わかっていないのかがわかる
・全体のつながりを理解することが大きな意味、言葉や出来事、細かいことを理解するのが小さな意味。大きな意味を理解する必要がある。
【結論】
生きることは、自分の足で立ち、自分の足で歩くことです。世界に立ち向かうためには、自分が使えるしっかりした海図を自分で作っていく必要があります。そうやってはじめて、大きい意味や深い意味を発見することができるようになります。
目次
はじめに わかる・わからない・でもわかる
第1章 「わかる」ための素材
第2章 「わかる」ための手がかり
第3章 「わかる」ための土台
第4章 「わかる」にもいろいろある
第5章 どんな時に「わかった」と思うのか
第6章 「わかる」ためには何が必要か
終章 より大きく深く「わかる」ために
ISBN:9784480059390
出版社:筑摩書房
判型:新書
ページ数:240ページ
定価:800円(本体)
発行年月日:2021年12月10日第25刷 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「わかる」ということを脳科学の観点から解説した本。
「わかる」というのは感情。
「わかる」ためには、記憶が必要であり、わかったことでないと表現できない。逆にいえば、表現をするためには、「わかる」必要があり、そのためには記憶が必要である、ということが「わかった」。村上春樹が「職業としての小説家」で記していたように、名文であれ駄文であれ古今東西の小説の表現の記憶つまり「記号」とその「意味の記憶」、および自分が人生に遭遇する出来事(人であれなんであれ)の「記憶心象」の二つが小説を書くためには必要という話と通ずるものがある。
はじめにーわかる・わからない・でもわかる
第1章 「わかる」ための素材
第2章 「わかる」ための手がかりー記号
第3章 「わかる」ための土台ー記憶
第4章 「わかる」にもいろいろある
第5章 どんな時に「わかった」と思うのか
第6章 「わかる」ためにはなにが必要か
第7章 より大きく深く「わかる」ために -
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人間にできて機械にはできないことの一つに意味というものを持つことがあるそうだ。AIには言葉の意味が分からない。統計的に意味にあたるものを確率論的に持ち出すことしかできないのだそうだ。それでは人が感じる意味とはどのような仕組みで獲得されるのだろうか。そのヒントがある。本書の筆者は神経心理学という分野の第一人者で高次脳機能障害などの研究をされている方である。
タイトルのように人には「気づく」という自覚がある。視界に入ったものでもはっきりと意識されないうちは気づかない。しかし、神経的には深く眠る感情のようなものがあり、それが特定のイメージに結び付き言葉と結びついて行動となるという。一連の流れをつかさどっているものを我々は普通、こころと呼んでいるのだそうだ。
気づきの経験は蓄積され、つねに今の自分に影響を与える。こころにとっては今が過去とともにあるだという。そこに意味が生じてくるのだ。意味はその人の人生のすべてが関与したものになる。だから、機械が得意とする一対一の変換では対応がしにくいのだ。
脳がどのような働きをしているのかについては、高次脳機能の障害が出た人の実態調査から経験的に証明できることは私も実見したことがある。人にとっての心とか精神といったものがいかなるものなのかを考えさせられるのがこの種の研究の魅力だと思う。 -
Posted by ブクログ
失語症の説明から始まって、言葉と脳の関係を科学的に説明し、さらには心と脳の関係について明解にわかりやすく書かれている。
心は意識→情→知→意という構造になっているらしい。
「感情は心という器を満たしている液体のようなものである。この感情の海に、ことばのような記号性の心像や、物体の形状のような知覚性の心像や、それらの複雑な集合体である概念や思念のような「かたち」あるものが漂っている」という筆者の抱く心のイメージは衝撃的だった。
前半は専門用語っぽいものも出てきて、ん~んめんどくさいなぁ…と思うところもあったが、最後はなんとも言えないほっこりとした余韻が残るとてもいい本だった。
Mahalo -
Posted by ブクログ
「わかる」とはどういうことか?
という本ではあるが、
同時に「わからない」とはどういうことか?を教えてくれる本でもある。
日常において、「わからない」場面に直面することが多々あるが、
本書は「なぜわからないのか?」を紐解く一助となる。
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会話の中で「アイデンティティ」という言葉を使うとき、自分にとっての意味と、相手にとっての意味が異なる場合がある。一見、コミュニケーションが成立しているように見えて、実のところは認識のズレが生じているケースが少なくない。
これは普段のコミュニケーションだけでなく、仕事においても同じことが言える。お互いの中で「言葉」の意味が違っていると、自分の伝えたい意図が正しく伝わらないことがある。だからこそ、言葉の定義にズレがないか、注意したいと思う。
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子育て、教育に活かせる一冊だと思った。
どういう過程を経て、子供は「わかる」ようになるのか。あるいは「なぜわからない」のか。
本書は一つの参考になる。 -
Posted by ブクログ
『わかるとはどういうことか』という題名に惹かれて本書を手に取りました。当初は、文学作品や日常の事象を題材に「わかる」ことの意味が論じられているのだろうと想定していました。ところが実際には、著者が神経内科医であり、脳の仕組みを通して「理解に至る過程」を解き明かす内容でした。そのため、医学的でやや専門的に感じる部分も少なくありませんでした。
しかし読み進めるうちに、学びとして取り入れたいと感じる考え方が二つありました。
第一は、「わからないことはミステリーの犯人探しに似ている」という視点です。限られた手がかりから答えを導き出すプロセスは、まさに推理小説のようであり、仕事や日常で疑問が生じたときにも、主体的に調べながら答えを探していくことの大切さを教えてくれました。現在の自分は「日々を面白く過ごす」ことを意識しているので、この考え方は大いに共感できました。
第二は、「わからないことがあれば図にする」という方法です。頭では理解できたつもりでも、人に説明しようとすると意外と曖昧なことがあります。図に描くことで理解が可視化され、より深い定着につながると感じました。今後は意識的に実践していきたいと思います。
本書を通じて、「わかる」とは単に知識を得ることではなく、問いを立て、探求し、表現を通じて理解を深めていく営みであると気づきました。今後はこの姿勢を仕事や生活に活かし、学びを一層広げていきたいと考えています。 -
Posted by ブクログ
神経心理学から心のかたちを表現した面白い本だ。本書は神経心理学者である山鳥重氏によって書かれた。
心についての本はたくさんあるが、本書では神経心理学者が臨床で出会った患者との体験をもとに、疾患が引き起こす心理症状について解説する。その過程で、著者が考える心の機能に関するさまざまな仮説が提出されていて、ユニークで面白い。たくさんの患者の事例を毎日少しずつ楽しませてもらった。
脳のある部分が活動を停止して現れる症状を見ることで、その部分の機能を明らかにしていく。完成品から部品を外してみて、なんの機能を果たしていたかを明確にしていくようで面白い。理系の方にはもってこいなジャンルだ。 -
Posted by ブクログ
読んだきっかけは息子がトライしている中学入試で塾が紹介したからだった。著者は神経内科が専門で高次機能障害学を研究しているらしい。私は「高次機能障害」にちょっと興味を持っていた。自分が1年前に適応障害にかかり、3か月くらいで治ったように思える部分と何か脳の一部に問題があるのではないかと感じたことがあった。なんとなく認知能力や記憶力の低下を年のせいにしていた。半分あってるかもしれないけど。
息子と会話がかみあわず、お互いにイライラしていることが多かった。単なる息子の反抗期にも思えたのだが、それだけとは言えなさそうだ。会社の仕事で重要なことを記憶違いしてしまったり、記憶が欠落したかのようになってしまうことがあって、ショックを受けたこともあったからだ。このとき理由を調べてみると、うつ病や適応障害との関連で脳の認知機能障害や高次機能障害の話が出てきたため、関心を持つようになった。普通は高次機能障害というと脳卒中になったり、脳に事故などで損傷を受けた人がなりやすい病気らしい。でも脳の血流という捉え方をすれば、メンタルの問題でも同様のことが起きてもおかしくないと思う。
ひとえに記憶力がなくなったといっても、短期記憶と長期記憶のどちらも記憶力かでも原因は異なるし、全体的な関係性の記憶と具体的な直近の記憶なのかなどで記憶に結びつけて「分かる」といっても様々だ。それを理解しやすく説明してくれているのは、ありがたい!
心像(メンタルイメージ)は、普段聞きなれない言葉だから慣れるのに時間がかかったが、わかるということにおいて区別できる、特に言葉で違いを明確化できることは一つの重要な要素だと改めて思った。筆者が説明する知覚心像と記憶心像をふまえて読み進めると、人が語感をどうやって身に着けていくのかが理解できる。知覚と記憶のリンクで考えていくと、なるほどなあと思った。
サイエンスの領域で「分かる」ことに対して「分類整理」、明らかにするものに対して分かっていることとわかっていないことの「識別」、「モデル」思考という概念が重視して取り組まれる理由がこの本を読んでいくと納得がいく。
いろんな意味でなるほどねぇ、と「分かる」体験をさせてくれる本だった。 -
Posted by ブクログ
例えが多く読みやすい文章だった。
わかると心に秩序が生まれるため、人はわかりたいと願う。
特に印象に残った点を2つ書くと、
「わからない」ことに気づく
自分から自発的にわからないことをはっきりさせ、それを自分で解決してゆかない限り、自分の能力にはならない。
わからないことをはっきりさせるには応用すること。図にしたり関係性を説明してみる。
わかったことは行為に移すことが出来る。
世界に立ち向かうには、自分の解釈だけで世界を理解しようとするような理解力ではなく、仮説と検証によって答えを導き出すような発見的な理解力を身につけていかねばならない -
Posted by ブクログ
なにかを理解しようとしても、わからない理解できない。
そもそも自分がなにがわからないのかもわからない。
「わかる」とは一体なんなのか、どうしたら「わかる」のか
そんな経験のある人にはいい本かもしれない
著者は脳に障害を生じて、認知機能をきたした人の診断治療リハビリの先生であり神経内科の専門で高次機能障害学のプロだそうだ
そんな先生が専門用語を使わずにとても簡単で分かりやすい言葉で教えてくれる
この本を読んだからと言って、その「わからない」が急に「わかる」ようになることはないが
自分の「わからない」レベルに気づき、どうしたら「わかる」ようになるのか参考になるかもしれない