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40年以上、さまざまな患者さんに接し、研究に携わるなかで、著者は、「人の<思い>が、どのように心の中で<像>をつくり、<音>と結びつき、<ことば>になり、発せられるのか」ということの追究も重要ではないか、と考えるようになりました。そのような考えを、経験を通してわかりやすくまとめたのが、本書です。「ことば」に関心を持つあらゆる方に読んでいただければ幸いです。
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Posted by ブクログ
失語症を研究している筆者が言葉とは何か、心とは何かを考察する一書。専門的な知識に関することはよくわからないが研究しようと知る方向性は極めて興味深い。 そもそも私たちは物事を言葉で考え、言葉のルールに乗っ取ってものごとを判断する。脳に障害が起きたときには言葉が不自由になるが、その不自由になるなり方...続きを読むが幾層にも段階があるらしい。それを脳の働きとして語っている。 脳の機能を語るうちに筆者は人間の物事の把握の仕方を考えていく。言葉になる前に私たちはどのようにして外界を把握しているか、言葉にする段階にはどのような工程があるのかについて比喩を交えてわかりやすく述べていくのである。 私たちは脳の異常という現象によって、心というものが脳の作用で作られているのではないかいう根本的な問題に直面させられる。つまり、身体を離れた魂のようなものは存在せず、あくまで脳がつくり出す心像が感情や思想をつくり出しているのではないかいうことである。 これはなんというかとても気分の悪いものであり、自分の先祖はバクテリアであることを知った時の衝撃にも似たなにかがある。脳科学の本を読むときはそういう面に耐える覚悟が必要かもしれない。
「言葉が出ない」「発話できない」ってそもそもどういうことなの?「言葉を失う(文字通りの意)って、何??」という疑問から手にとった本。脳・神経医学の著者が症例を元にわかりやすく説明してくれていて非常に興味深かった。 言葉を失う、というか言葉がどのように脳で生成され発話されていくのか、に至ってもまだまだ...続きを読む解明されている部分が少ないんだね。「脳と心は別もんです」と序盤ではっきり言ってくれているのも好印象。失語症患者でも歌はうたえる、呼称できないモノや意識できない身体の麻痺について脳が勝手に補填して文をつなげてしまうことがある、というのが特に印象深かった。脳損傷によって「心理的空間」が壊れてしまう・・・というくだりはなんとなく円城塔の「良い夜を持っている」を思い出す。 エピローグで触れられていた「意識のない部分を意識できない」「意識に欠損を見いだすことができるのは観察者のみ」についてももう少し詳しく知りたいな。このあたりは哲学に繋がってしまうだろうから、いい意味で途方もなさそうだけど。
面白い事例とともに作者なりの仮説にあわせて解釈していくところが好きです。 言語というのがどうやって頭脳の中でプロセスされているのかという問題の解決ではないですが、それについて事例や理論を提供し、もっと考えさせる一冊だと思います。
平易な言葉遣いで、これまでの研究と自説を展開しつつ失語症についてまとめてくれている新書です。 ただ、じゃぁどうやったら失語症が治るのかという問いには答えていませんというか答えられないというのが現実なのではないかという感想も抱きました。 脳と心の違いに最初に触れていただけてるのもありがたいです。 た...続きを読むだ概念についてはもう少し踏み込んで欲しかったかなぁというのはこれは心理学的な立場から飲み方でしょうか。 最後、山鳥さんご本人が 「読み返してみて、俺はまだまだなにもわかってないな」というもどかしさだけが残っています と記してらっしゃるのですが、本当に読みながら「ことばとはなんぞや意識とはなんぞや心とはそれにあたる脳とは」みたいになって頭がバーンしました。おちついたらまた読み返しますです。
2011.10.04. もうすぐ失語症友の会へ見学に行くので。この新書、わかりやすいです。専門用語がけっこう出てくるので、下準備に子ども向けの失語症の本とかを読んでおいたら、理解が進みます。ブローカ失語、ウェルニッケ失語、健忘失語、伝導失語について、いろいろな考え方が載っていて、後期の失語症の授業の...続きを読む準備にもなるし。また、読み返したいです。
失語症の種類 ・健忘失語 名前が分からなくなる。 抽象的態度が障害される。色の名前を付ける時、その色が持っている個別のニュアンスではなく、その個別の色が属している大まかな性質です。その性質を抜き取り、その大まかな性質に対して「赤」「青」と名前を与えるのが抽象的態度。 ・ブローカ そもそも言葉が出なく...続きを読むなる。相手の言っている事は理解できるが、言葉が出ない。プロソディ障害がひどい。プロソディとは言語特有、話者特有の速度やリズム、抑揚や強勢の事。その言語らしさを作るもの。 ・ウェルニッケ失語 自分が相手の言葉を理解できていないという自覚が欠ける。自分の病気が理解できない。相手の発話の理解が大まかで、細部にまで進めない状態。 ・伝導失語症 相手の言葉をそのまま言おうとしても、言おうとした言葉も「いい間違えてしまう」「音節を間違えてしまう。「猫」→「なこ」 ・言語機能の領域は左半球に大い。 ・てんかん発作は脳神経細胞の異常な興奮で起きる。 ・どの失語症も脳のどこに原因があるのかはハッキリしない。 ・ハイパーラリア(多弁症) よく喋るようになる。お喋りが止まらない。夜間多弁。発症後しばらくすると消失する。
失語症から脳の中で何が起きているかを考えてみる内容.人の認知能力を特に言葉という点から,病例を見ながら理解しようとしている. このような言語についての理解も含めて,脳の中で何が起きているのかという疑問はまだまだ解けそうにない.
健忘失語,ブローカ失語,ウェルニッケ失語,伝導失語等普通見かけない言葉が出てきたが,失語症という言葉の障害を脳の損傷が原因と捉えるのではなく,心の働かせ方の障害が主因だという主張を展開している.色々な症例をみると,「日常茶飯の何の努力も必要としないように思われる言語活動が,いかに複雑な心の動きに支え...続きを読むられているか」がなんとか理解できたと思う.さらに「その複雑な心の動きの仕組みというものがいかによくわかっていないか」ということも認識できた.
「失語症」を通して言葉と心と脳の関係について考える。 感情が発生して、そこに言葉で名前(「不安」とか「嫉妬」とか)をつけることで感情の感覚化の手助けになり、感情に気付きやすくなる。・・・ 「言葉」「心」「脳」に関してはさまざまな見解があるが、ひとつの視点として、失語症という「現象」を通して考えると...続きを読む、また違った考え方ができてくる。
専門ではないですが、言葉の領域は少しかじったので、興味を持って読みました。言葉を発するという、それだけのことに思える行動が、意外とはっきり説明しきれない。でも、心は関係しているのだと思います。心の定義が難しいですが。
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言葉と脳と心 失語症とは何か
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山鳥重
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