山鳥重のレビュー一覧
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心像の形成によって、見えている世界。この世に対する知識は、暗記するところから始まっている。生まれた瞬間は無であってそこからあらゆる情報を蓄えていき、自分の中にある理解と照らし合わせていき、知識の束を創出する。
しかし、そうと考えると、人間は生まれた瞬間から元から「何か」を知っている生き物ではないのかとも思った。ただそれは筆者の畑とは異質な哲学的、非科学的考えといいうるが‥。対称的に、脳神経医学の見地から人間の記憶の根本理解から発生まで論理的に説明しているため、説得力があった。また、端的な内容で、余計な説明等がなかったことを高く評価したい。 -
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本書は、「わかる」ということ、認識の仕組みをやさしくまとめたものです。
「わかりました」って、本当にわかったのか。どこまでをどうわかったかという、いつもながらの疑問に応えるヒントの書です。
脳科学から、「わかる」へのアプローチです。
気になったのは、以下です。
・わからないことがあるからこそ、わかったがある。わからないのがわかったというのは考えたからです。考えなければわからないままです。
・こころの動きには2つあります。ひとつは感情で、もう一つは思考です。
感情はこころの全体の動きである傾向を示します。なんとなく好き、なんとなく嫌い、なのであって、理由ははっきりしません
思考は -
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ネタバレ「わかる」ということを脳科学の観点から解説した本。
「わかる」というのは感情。
「わかる」ためには、記憶が必要であり、わかったことでないと表現できない。逆にいえば、表現をするためには、「わかる」必要があり、そのためには記憶が必要である、ということが「わかった」。村上春樹が「職業としての小説家」で記していたように、名文であれ駄文であれ古今東西の小説の表現の記憶つまり「記号」とその「意味の記憶」、および自分が人生に遭遇する出来事(人であれなんであれ)の「記憶心象」の二つが小説を書くためには必要という話と通ずるものがある。
はじめにーわかる・わからない・でもわかる
第1章 「わかる」ための素材
第 -
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人間にできて機械にはできないことの一つに意味というものを持つことがあるそうだ。AIには言葉の意味が分からない。統計的に意味にあたるものを確率論的に持ち出すことしかできないのだそうだ。それでは人が感じる意味とはどのような仕組みで獲得されるのだろうか。そのヒントがある。本書の筆者は神経心理学という分野の第一人者で高次脳機能障害などの研究をされている方である。
タイトルのように人には「気づく」という自覚がある。視界に入ったものでもはっきりと意識されないうちは気づかない。しかし、神経的には深く眠る感情のようなものがあり、それが特定のイメージに結び付き言葉と結びついて行動となるという。一連の流れをつ -
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失語症を研究している筆者が言葉とは何か、心とは何かを考察する一書。専門的な知識に関することはよくわからないが研究しようと知る方向性は極めて興味深い。
そもそも私たちは物事を言葉で考え、言葉のルールに乗っ取ってものごとを判断する。脳に障害が起きたときには言葉が不自由になるが、その不自由になるなり方が幾層にも段階があるらしい。それを脳の働きとして語っている。
脳の機能を語るうちに筆者は人間の物事の把握の仕方を考えていく。言葉になる前に私たちはどのようにして外界を把握しているか、言葉にする段階にはどのような工程があるのかについて比喩を交えてわかりやすく述べていくのである。
私たちは脳の異常と -
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失語症の説明から始まって、言葉と脳の関係を科学的に説明し、さらには心と脳の関係について明解にわかりやすく書かれている。
心は意識→情→知→意という構造になっているらしい。
「感情は心という器を満たしている液体のようなものである。この感情の海に、ことばのような記号性の心像や、物体の形状のような知覚性の心像や、それらの複雑な集合体である概念や思念のような「かたち」あるものが漂っている」という筆者の抱く心のイメージは衝撃的だった。
前半は専門用語っぽいものも出てきて、ん~んめんどくさいなぁ…と思うところもあったが、最後はなんとも言えないほっこりとした余韻が残るとてもいい本だった。
Mahalo -
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『わかるとはどういうことか』という題名に惹かれて本書を手に取りました。当初は、文学作品や日常の事象を題材に「わかる」ことの意味が論じられているのだろうと想定していました。ところが実際には、著者が神経内科医であり、脳の仕組みを通して「理解に至る過程」を解き明かす内容でした。そのため、医学的でやや専門的に感じる部分も少なくありませんでした。
しかし読み進めるうちに、学びとして取り入れたいと感じる考え方が二つありました。
第一は、「わからないことはミステリーの犯人探しに似ている」という視点です。限られた手がかりから答えを導き出すプロセスは、まさに推理小説のようであり、仕事や日常で疑問が生じたときにも -
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神経心理学から心のかたちを表現した面白い本だ。本書は神経心理学者である山鳥重氏によって書かれた。
心についての本はたくさんあるが、本書では神経心理学者が臨床で出会った患者との体験をもとに、疾患が引き起こす心理症状について解説する。その過程で、著者が考える心の機能に関するさまざまな仮説が提出されていて、ユニークで面白い。たくさんの患者の事例を毎日少しずつ楽しませてもらった。
脳のある部分が活動を停止して現れる症状を見ることで、その部分の機能を明らかにしていく。完成品から部品を外してみて、なんの機能を果たしていたかを明確にしていくようで面白い。理系の方にはもってこいなジャンルだ。 -
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読んだきっかけは息子がトライしている中学入試で塾が紹介したからだった。著者は神経内科が専門で高次機能障害学を研究しているらしい。私は「高次機能障害」にちょっと興味を持っていた。自分が1年前に適応障害にかかり、3か月くらいで治ったように思える部分と何か脳の一部に問題があるのではないかと感じたことがあった。なんとなく認知能力や記憶力の低下を年のせいにしていた。半分あってるかもしれないけど。
息子と会話がかみあわず、お互いにイライラしていることが多かった。単なる息子の反抗期にも思えたのだが、それだけとは言えなさそうだ。会社の仕事で重要なことを記憶違いしてしまったり、記憶が欠落したかのようになってし -
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例えが多く読みやすい文章だった。
わかると心に秩序が生まれるため、人はわかりたいと願う。
特に印象に残った点を2つ書くと、
「わからない」ことに気づく
自分から自発的にわからないことをはっきりさせ、それを自分で解決してゆかない限り、自分の能力にはならない。
わからないことをはっきりさせるには応用すること。図にしたり関係性を説明してみる。
わかったことは行為に移すことが出来る。
世界に立ち向かうには、自分の解釈だけで世界を理解しようとするような理解力ではなく、仮説と検証によって答えを導き出すような発見的な理解力を身につけていかねばならない -
Posted by ブクログ
なにかを理解しようとしても、わからない理解できない。
そもそも自分がなにがわからないのかもわからない。
「わかる」とは一体なんなのか、どうしたら「わかる」のか
そんな経験のある人にはいい本かもしれない
著者は脳に障害を生じて、認知機能をきたした人の診断治療リハビリの先生であり神経内科の専門で高次機能障害学のプロだそうだ
そんな先生が専門用語を使わずにとても簡単で分かりやすい言葉で教えてくれる
この本を読んだからと言って、その「わからない」が急に「わかる」ようになることはないが
自分の「わからない」レベルに気づき、どうしたら「わかる」ようになるのか参考になるかもしれない