長谷川英祐のレビュー一覧

  • 利己的な生物がなぜ協力し合えるのか 「進化論」の残された謎に挑む

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    「老兵はただ去り行くのみ」と書き捨てて一般書を終えるの、なんかカッコいい。
    全体を通して、かなり嫌味な文体だなと思いながら読んだが、書いてある内容は極めて鋭く、特に血縁選択のところは極めて難解な理論が展開されており、私には半分も理解できなかった(働きアリと女王アリが分かれることで、遺伝情報を広めやすい? みたいな考え方らしいが、数学的な根拠が私にはよくわからなかった)。ヨモギヒゲナガアブラムシの箇所は、とても面白かった。
    この方は、もう私は研究者やめたんで、ということで自由に書き、八丈島でのんびり暮らしているらしい。しかし、思考のスケールは極めて大きく、社会全体を分析するような実験性、批評性に富んでいる。
    利己的な生物がなぜ協力し合えるのか、それはそれぞれの生物がコストを払い利益を受け取って、系が持続しているからという、この発想は素晴らしいと思うが、研究の身からも自由になり、専門知を有しつつも闊達に語る様は、さながら仙人(ヨモギヒゲナガアブラムシの「ひげなが」を彷彿とさせる)のようである(が、本人の写真はひげながではなく、ポニーテールの方が長かった)。色んなものから自由になって、あとは後世に託した、というスタンスがとても良い。

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    2026年04月08日
  • ヤマケイ文庫 働かないアリに意義がある

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    とても、面白くて楽しい本でした。
    アリの研究を通して、遺伝子がいかに利己的に残っていくのか、利他と利己はどう考えるのか、社会の進化とは、一個体も細胞から言えば一つの社会であること、などが、語られます。
    働かないアリの意味が、気になり読みました。働かないアリとは、大変になるまで働けないアリのようで、出番が来るまで待つアリだということでした。

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    2025年10月02日
  • ヤマケイ文庫 働かないアリに意義がある

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    働きアリの中にも働かないアリが存在するそうで、なんでそんなことになるのか…!?
    その答えは、「全員が疲れて働けなくなると、誰かがいつもやっている重要な仕事をこなすことが出来なくなり、集団が大きなダメージを受けることを回避するため」だそうです。
    その時々の効率よりも、自分たちの存続を優先するために、一見無駄と思われる働かないアリが存在しているらしいのです。
    「誰もが必ず疲れる以上、働かないものを常に含む非効率的なシステムでこそ、長期的な存続が可能」…生物学的には、無駄にこそ意義があるということがよく理解出来ました。

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    2024年09月18日
  • ヤマケイ文庫 働かないアリに意義がある

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    ハウスに放たれたミツバチはなぜかすぐに数が減り、コロニーが壊滅してしまう。
    人間も効率ばかり求めてはいけない、最大限に頑張るときでも2割(時間?)は休む必要があると思えました。
    余裕がないと、効率の下がる事って(考えたり、気付けない)良くありますよね。

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    2024年01月04日
  • ヤマケイ文庫 働かないアリに意義がある

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    社会を持つアリの世界の奥深さ、そして社会性という面で人の世界との対比もあり、どんどん読み進めて面白かった。もう一度読んで、更に熟知したくなる本である。働かない働きアリは、無駄に意味を見いだし、それを楽しめることを体現しているのかもしれない。

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    2023年02月27日
  • 面白くて眠れなくなる生物学

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    小難しいところは飛ばして読みましたが面白かったです。
    「ある蝿の雄は自分の子孫をより多く残すために繁殖相手の雌に毒を注入する」というのを見て、個の利益のために相手を尊重しないのは人間も虫も大差ないなぁと。

    個人的にはもっといろんな動物や虫の雑学が紹介されていると思って手に取ったのでガッカリでしたが、高校生物の復習だと思って読める部分も多かったので懐かしかったです。

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    2022年06月02日
  • ヤマケイ文庫 働かないアリに意義がある

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    昆虫学にとどまらず、集団意思決定やネットワーク理論、個別最適化など、AI研究に関わってくる部分もあり

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    2022年04月17日
  • 働かないアリに意義がある!

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    働かないアリと窓際族は違う

    巣のアリのうち7割は仕事をせず、場合によっては一生働かないまま死んでいくアリもいるという。
    しかしそれは、働かなければならない時が来ると、今まで働かなかったアリが、今まで働いていたアリと同等の能力を発揮できる極めて有能な存在であるがゆえにできること。
    窓際族やニートのように、何かの代替えにならないものは、この働かないアリと比べる価値のないものであることをうかがい知ることができる。
    大事なのは、有事の際に動ける遊び人を、組織の余裕度として確保しておくことなんだな。

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    2019年03月04日
  • 面白くて眠れなくなる生物学

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    生命には理由がある――生物の驚くべき多様性を「進化」を基軸に解き明かそうとしてくれる本。
    なぜ「進化」かというと、進化メカニズムは全ての生物現象の基盤となっているから。

    ぐっとくるのは、「生物はあえてミスを犯すシステムを採用することで、自らの存続性を確保する道を選んだのかもしれない」という考え方。
    遺伝情報はコピーされて受け継がれていきますが、そのとき、ごく低い確率でミスコピーが起こります。もしこれが完全なら、何世代経っても同じってことに……そんな「進化しない生き物」がいたとしたら、ほんの少しずつミスコピーをしながら、何世代にもわたって少しずつ、そのときの環境に最適なカタチに進化し続けるもののほうが勝ち残るのにどう考えても有利。
    何事にも理由がある。そして世界の理由を明らかにする(説明する)ことこそ、学問が目指す目標だと考えている著者ならではの論理。

    間違える。人は間違える。それをこんなふうに肯定されると救われます。

    マイナス面にしか目が向かない鬱状態についても、適応的意義はよくわからないと前置きしつつ、以下の3つが紹介されます。
    ・鬱になったザリガニ
    ・悲観的なミツバチ
    ・抗鬱剤成分が川に流れたときの魚の行動
    鬱状態の生理的メカニズムはヒト同じように起きているそうです。だとすればこんな心の動きもまた、脳を初めて持った祖先から受け継がれて進化してきたことを示していると考えるのが自然だと著者は言います。魚の例からは、鬱状態は逆に生存率を上げる効果を読み取ることさえ可能です。

    生物のすべてをまずそのまんま見つめて、そこにある意味を見出していく姿勢に、惚れます。

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    2018年01月27日
  • 働くアリに幸せを 存続と滅びの組織論

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    組織と個人の関係の話。学部の卒論で使った。
    おもしろい。こういう本は好きだ。
    人間の社会についての話を生物に引き寄せて書いている。
    読みやすいけど、身につまされる。
    全部は理解できてないんだろうけど、頭がよくなった気がする。また読みたい。

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    2013年12月19日
  • ヤマケイ文庫 働かないアリに意義がある

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    『働かないアリには意義がある』は、アリ・ハチなど社会性昆虫の分業システムを通じて、「効率だけを追求した組織は脆い」という逆説を描く本です。反応閾値のばらつきにより一部の個体が働かずに温存されることで、コロニーは想定外の負荷に対応できる。フリーライダーや遺伝的浮動といった一見マイナスに見える要素も、集団の長期的な存続においては単純に排除すべきものではない。読み終えての結論は、「ゆとりを持って対応できる状態こそが最適である」という一点に集約される。

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    2026年08月26日
  • 利己的な生物がなぜ協力し合えるのか 「進化論」の残された謎に挑む

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    「美しく残酷なヒトの本性」などの進化生物学の長谷川眞理子氏と夫妻の人かと思ったら違った。
    クセが強いのは個人的に好き。内容は進化論のあらましと専門分野の研究内容。学術界への距離の置き方などは「反発的情熱」が感じられる。紙幅は限られているが、端的にまとまっている。

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    2026年06月13日
  • ヤマケイ文庫 働かないアリに意義がある

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    働かないアリと一見すると、ネガティブに捉えられがちな存在だが、視座を上げて見ていくと、持続可能性にとっては必要なものだということが理解できました。その観点において、余裕、無駄、の必要性を改めて理解できたように思います。今は何かしら無駄なく、効率的にという世の中の風潮ですが、アリの世界から人間界に警鐘をならされてるようにも感じました。非常にユニークな視点が描かれておりとても面白かったです。

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    2025年09月25日
  • ヤマケイ文庫 働かないアリに意義がある

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    あり社会は人社会を投影してるな感じる。
    ニートは次の働き要員、確かにそれもある。
    しかし、これからの世界、AIや機械がほとんど人の仕事をするようになれば、人自体もいなくなり、より働かなくなっていくような気もしてる。

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    2025年07月20日
  • ヤマケイ文庫 働かないアリに意義がある

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    全く働かなくても会社に居座って大丈夫!という話ではない。
    タイトルで働かなくても生きる方法が載っているかと思ったがもちろん違った。
    アリの社会を覗くことによって自分の所属する組織を見つめ直す機械になったし、結局は利他的な構成員による組織が繁栄するのだとアリに教えられた。
    いざ!というときに活躍できるよう、きちんと休養して真面目に働こうと思えた。

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    2024年11月18日
  • ヤマケイ文庫 働かないアリに意義がある

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    2010年に発刊された『働かないアリに意義がある』を底本とし、改訂されたもの。2021年初版。改訂版とあるが、うーん、正直どこが変わっているのか。読み比べてみたが、章立てもまとめも同じように感じるのだが。
    ただ、あとがきが追加されているのは、明らかに変わっている点。(ここだけ読むだけでもお得感あり)
    「働かないアリ」以降、筆者の生活がどのように変化したか、また、コロナ過の社会を迎えてしまい、人類がどのように”存続”を考えていくべきなのか。
    「大地変動の時代」に柔軟性を維持するヒントが満載だ。

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    2023年04月21日
  • 面白くて眠れなくなる進化論

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    『面白くて眠れなくなる植物学』から続くこと2冊目。進化論もなかなか面白かったが、植物学の本よりも時系列でストーリーとなって研究の経過がつながっていっているので、集中して読まないと着いていけなくなる。だが、ダーウィンやメンデル等が神の作り出した世界・生物体系論とどう戦い、現代科学にまで発展してきたかが大変わかりやすく書かれていて、面白い。確かに…!なるほど…!の詰まった本。さらっと読めます!

    p.40 生物には交配することのできる同種の個体はたくさんいます。そしてたくさん生まれる子供のうち、大人になるまで生き残ることができる答えはごく1部です。生まれる子供の中で、他の答えよりも現在の環境に適した答えがいれば、その答えは生き残りやすいでしょう。つまり、平均的に見て、より環境に適応した個体のみが生き残れると言うわけです。多くの子供の中でごく1部の答えしか生き残れないため、生き物の中には生き残りをかけた競争があります。これを「生存競争」と呼んでいます。「生存競争」が繰り返されれば、品種改良と同じ原理で「その環境に適した性質を持った答え」が増えていきます。生物の平均的な性質は徐々に変化して、より環境に適応した形になる。これがダーウィンの考えた「自然選択説」の骨子です。あ、まだ1つ残っていました。ラマルクの「用不用論」がダメ出しされたのは、親が経験によって獲得した性質は子供に伝わらないからでした。ダーウィンの「自然選択説」でも、選ばれた性質が子供に伝わらないのであれば、それがいかに有利の性質でも2世代にも集団から消えてしまいます。つまり、生物が変化していくことになりません。賢明なダーウィンはもちろんそれを知っていましたから、ちゃんと答えを用意しています。当時、遺伝の仕組みをわかっていませんでしたが、人間では、後は生まれつき親によく似ています。この事実から、形質の遺伝はあり、そのように遺伝する性質だけが「自然選択」により、適応進化したのだとダーウィンは考えたんです。

    p.98 すべての科学的事実と言うものは常に「現時点でのベスト」に過ぎません。つまり、本当はもっと優れた仮説が存在する可能性を完全に否定する事は、それこそ「絶対にできない」のです。同様にあることが「絶対にない」と言うことも決して言えません。

    p.124 その一方で、科学の世界では、オリジナリティが大事だと言われるのですが、オリジナリティに富んだ研究をしているとなかなか論文が増えないと言うジレンマを抱えています。プロの学者として生きていくためには業績が必要なので、誰もが認める、既存の理論の延長線上の研究を行った方が、論文生産効率が高くなり、たくさんの業績を出しやすくなる。その結果、新しいことにチャレンジする人は業績が出にくくなると言う矛盾が起こるのです。そんな中、自然選択により進化とは全く異なる進化があることを喝破し、適応万能論が滅びる中、毅然とそれをそれと相容れない主張し、抵抗と闘いながら認めさせていった1人の研究者がいました。

    p.156 ダーウィンの「自然選択説」を要約すると、「2つの異なる遺伝的変異体は、どちらがより子供が残しやすいかと言う競争をしており、この能力に優れた方が生き残り、劣った方が滅びる」と言うものです。競争は、足の速さ、力の強さ、上に耐える力など様々な形質によって置いて行われますが、結局は、「子供をどれだけ残せるか」と言う観点に還元されて評価されるわけです。ダーウィンのこの考え方は「競争的排除」と呼ばれ、「自然の選択説」の大原則として認識されています。

    p.168 古くは、「種が進化の単位である」と言う意見を持っていた今西錦司博士によるかげろうの研究で示されました。川の岸から流心まで出るように形態の違うかげろうの種が連続的に住んでおり、1つの川の中で、競争が起こらないように利用場所を変えていました。今西博士はこれを「棲み分け」と名付け、種が生き残るために競争しないように進化したのだと解釈します。しかし、「自然選択説」の観点から見ると、この現象は環境利用が似た闘争的な2種類が出会った時に、「まともに競争にさらされるような形質を持ったタイプ」と「競争を緩和させるような形質を持ったタイプ」がいる場合は、後者の方が競争にコストをかけないですむぶんだけ、前者よりも適応度が高くなります。そのために、それぞれの種類の中で、互いに競争が緩和されるような形質が進化したからだと説明できるのです。つまり、個体レベルの自然選択が働いた結果、棲み分けが生じたと言うことであり、環境利用が同じ種類は、やはり「環境的排除」によって、どちらかが絶滅するのだと言うことです。

    p.194 生物学的には、性とは、「子供を残す時に他の答えの遺伝子の1部を取り込んで混ぜる行為」として定義されます。生物のほとんどは何らかの形で声を持っていますが、生物はもともとバクテリアのようにただ分裂して増えていくものだったはずですから、性は無性の状態から二時的に進化してきたものです。そこがこれだけ多くの生物に見られると言う事は、性には無性生物にはない何らかのメリットがあるからだと考えられます。

    ところが、性があると言う事は、「適応度」の点から見ると大きなデメリットのです。例えば、子供を産むのはメスです。という事は、自分の子供全部メスにした時、孫世代に最も多くの子孫を残せることになります。有性生殖生物は必ずオスの子供を生まざるをえません。子供の半分をオスにすると、孫の世代に生産される子供の数も半分になってしまうのです。しかし、無性的に繁殖すれば、すべての子供は子供を産めますので、この問題が生じません。つまり、性を持つと、それだけで適応度がいきなり半分になるのです。これを「性の2倍のコスト」と呼びます。無性生殖をしている集団の中に優勢の変異体が現れたとしても、そのメリットが2倍より大きくならなければ進化できないと考えられます。

    環境がさまざまに変動しても、子供の中の遺伝的多様性が多ければ、いずれかの子供は生き延びることができ、自分の子孫が絶滅しないと考えているのです。種の進化を説明する時、変動する環境と物理的な環境のことではなく、宿主に致命的ダメージを与える病原菌などの生物的環境の変動も考えられています。病原菌の多くは宿主がある遺伝的な特徴を持っているときにだけ感染できるので、この場合も子供が遺伝的に多様であれば、すべての子供が病気に感染して絶滅することがなくなると言うわけです。物理的環境が変動する場合と、生物的環境が変動する場合は、理論上は別の仮説として考えられていますが、根本的なロジックはどれも同じで、子供が遺伝的に対応だと、すべての子供が死亡する確率が下がると言うことです。

    p.211 ダーウィンの「自然選択説は「環境に応じて生物が適応する」と言う観点では広く受け入れられて受けられましたが、「進化にはもっと決まった方向性がない」と言う観点はほとんど理解されませんでした。何故でしょうか。もし、決まった方向に向かって進化するんだとしたら、完成された形があるならば、何らかの理想がそこにあるからだと言うことになります。…もちろん神のです。科学はもともと、自然がうまくできていることを示すことにより、神の全能性を証明し、神を称えるための思想として広まったのです。もちろん、ダーウィンの時代の科学者も、自分では意識していなかったかもしれませんが、そのような思想的背景が自分の中にあったことでしょう。ましてや一般の人々ならなおさらです。「自然選択説」の思想は、そのような無意識的な進化の目的性をうまく説明します。だからこそ、ダーウィンの「進化論」がブームとなり受け入れられたのでしょう。また、人々が無意識に「神」、あるいは「超自然的な目的」と言う考えを受けられたので、敵を表示させる「統一原理」である自然選択が、「生物の多様性を説明する唯一の原理」として歓迎されたのでしょう。世界の裏には、それを実現するただ1つの原理がある。唯一心を掲げるキリスト教文化の下では、そのような「美しい世界」は1つの理想として輝いて見えたのでしょう。しかし、それは「適応万能論」や「現在の適応度を次世代の遺伝子コピー数とする」と言う硬直化した定義につながっているのです。つまり、多くのことを説明できるただ1つの原理により検査できる世界は、一神教的な基準ではとにかく美しいのです。

    しかし、科学としてのダーウィンの「進化論」の偉大さをむしろ、ダーウィニズムが一切「神」を必要とせずに、生物の多様性を適用を説明できた、と言う進化の無目的性にあります。ダーウィンの「進化論」が生まれ現れて初めて、私たちは、世界には完成形があると言う前提の子(神の子)に、生物の進化を理解することが可能になったと言う点にこそ、ダーウィンの「進化論」がその後の「進化学」の基盤となった根拠を求めることができるのです。

    p.216 進化には2つの側面があります。1つは、生物を多様化させて、適応を起こさせる機能的原理としての側面。これは「自然選択」であり、生物がどのような形質を持ち、どのような環境にいたとしても、常に働き続ける普遍の力として理解されています。ただし、ここだけでこれだけでは進化を説明したことにはならないのかもしれません。「進化学」には、「生命がこの世に誕生してから、どのように変化を続けて、様々な生物となっていったか」と言う、いわば進化の歴史を推定し、記述すると言う側面があるからです。この観点からは、「自然選択」の存在だけで、そのパターンが一元的に説明できるものではないでしょう。

    p.219 しかし、心配する事はありません。そういう新たな展開がまだあるだろうと言うこと自体が、学問にとっては希望となります。何をやっても従来の考え方からはみ出ることがないとしたら、もうその学問を研究する必要は無いのです。

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    2022年06月26日
  • ヤマケイ文庫 働かないアリに意義がある

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    難しく理解が仕切れなかった部分もあるけど面白かった!
    特に反応閾値の件らへん
    他にも女王蜂の精子を体内で生かす事や
    蜂の蜜の場所を仲間に八の字の向きや回数で伝える事とか

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    2022年04月13日
  • ヤマケイ文庫 働かないアリに意義がある

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    <目次>
    序章   ヒトの社会、ムシの社会
    第1章  7割のアリは休んでる
    第2章  働かないアリはなぜ存在するのか
    第3章  なんで他人のために働くの?
    第4章  自分がよければ
    第5章  「群れ」か「個」か、それが問題だ
    終章   その進化は何のため?

    <内容>
    5年以上前に一度読んでいるのだが(2016年中経の文庫)、これを改訂したもの。コロナ禍においてより意義が高まったといえよう。進化生物学の泰斗が、”社会”がどのように作られているのかを解いている。アリやハチの社会は、確かに我々人間とは違っているのだが、それでも”似た社会”なのだ。そこをこの本から考えてしまった。「ヤマケイ文庫版あとがき」と鎌田浩毅氏の解説が秀逸である。  

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    2022年03月20日
  • ヤマケイ文庫 働かないアリに意義がある

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    ネタバレ

    ・巣の中は安全、外は危険がいっぱい。だとすると余生が長い若いアリには巣の中で安全な仕事(子育て等)をしてもらい、歳を取ったアリには外で危険な仕事をしてもらう。結果として死んでしまったとしても余生は短いので巣全体に対する損失は小さい。人間は逆(老人を敬う)のは、過去は老人の経験や知識が有益であったから。現代はどうだろうか?
    ・エサを取りに行く時に、発見したアリのルートを辿らずに間違えてしまうアリがいた方がショートカットを見つけられるかもしれない。
    ・個々のアリは仕事をしたい/したくないという主観ではなく、単に刺激(=業務)に対しての閾値が違うだけ。怠け者も仕事量が増えれば働くようになる。
    ・皆が同じ閾値を持っているといざという時に疲れてしまっていて、酒が絶滅する可能性がある。短期的には怠け者のアリがいると非効率になるものの、長期的には種の存続に貢献するのである。
    ・短期的な効率性の追求と長期的な持続性はトレードオフの関係ということか。
    ・中には全く働かないフリーライダーも出てくるが長期的には、巣はフリーライダーだけになり滅びる。その滅びた巣に種への貢献だけを行うアリが移ってきてまた反映していく。つまり、フリーライダーだらけにはならない。

    ・今は役に立たないことでも社会が変化した際に役に立つ可能性があることは持続性の意味ではmake sence(ふらふらしてるアリが餌までの最短距離を見つけることもある)

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    2022年02月19日