天野節子のレビュー一覧
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昭和33年、目黒の洋館”倉元家“で住み込みの女中として奉公するよし江。
「お屋敷の中で見たり聞いたりしたことを、他人に話してはいけません」女中頭の聡子は言った。
のっけから不穏な気配に包まれる。
一方、目黒坂下交番の脇田巡査部長は、立て続けに起きた2人の若い御用聞きの失踪が気に掛かっている。配達先は皆聞き込みに口を閉ざす中、2人が最後に配達したのが倉元家だと判明する…。
よし江、脇田目線の章にその63年後の“篠田家”の章を織り込みながら話は進む。
過去と現在、時代背景は懐かしく、価値観の変化も面白い。肝心の謎が次第に明らかになっていく過程もスリリングでミステリとしても申し分ない。
物語を覆う不穏さは最後まで消えず、緊張と弛緩のバランスも絶妙で読み飽きない。
特に、物語最後のある仕掛けには小さな感動すら覚えた。
久々に面白いミステリに出会えました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ*専業主婦の恭子は、夫の子供を身篭ったという不倫相手を毒殺する。だが、何日過ぎても被害者が妊娠していたという事実は報道されない。殺したのは本当に夫の愛人だったのか。嵌められたのではないかと疑心暗鬼になる恭子は、自らが殺めた女の正体を探り始める。そして、彼女を執拗に追うベテラン刑事・戸田との壮絶な闘いが始まる。長編ミステリ*
再々読なのに、最初から最後まで気迫と緊張に満ちた展開に目が離せず、またしても一気読み。十重二十重に張り巡らされた罠と謎、その闘いに果敢に挑む妻の意地、戸田刑事との息詰まる攻防戦、何度読んでも本当に引き込まれる作品。 -
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二度目ましての作家さん。
本作がデビュー作でした(〇o〇;)
通常の文庫の2倍くらいの厚さにビビって積んでました。
けれど読み始めたら止まらない。
いやぁ~読み終わった時の脱力感と言ったら・・・
集中して映画を観終わった時のような虚脱状態でした。
これがデビュー作だとは驚きです。
特に、最後の方のどんでん返しがすごかったぁ~
執念VS自尊心って感じでしょうか?
普通、自尊心って活字を見ると、ちょっと嫌な気がするんですが
恭子は徹底的に自尊心が高いので、逆に凛とした姿勢が
魅力的に見えるから不思議。
久しぶりのスリリング体験が出来ましたぁ -
Posted by ブクログ
なんと、60歳でのデビュー作品。
しかも、自費出版で刊行されたものが大手出版社から再度刊行されたものだそうです。
作者の執念のすごさが、この作品の登場人物の執念に受けつがれているのかもしれません。
早くに両親を亡くしてはいるが、遺産と叔父の保護で何不自由ない生活をしている専業主婦の恭子。
夫の隆之は叔父が役員をしている会社で、出世頭の高給取り。
悩みがないわけではないけれど、人に弱みを見せたくないというプライドの高さから、毎日を優雅に華やかに過ごしていた。
そんな時、隆之の愛人だという女から電話が来る。
恭子の唯一の悩みは、不妊症であることなのだが、そのことをあざ笑う声に殺意を覚え、頭の回転の速い恭子は素早く完全犯罪を目論むのだが…。
犯人である恭子の視点で書かれている倒叙の部分と、戸田刑事が犯人を追う本格ミステリの部分があるのだが、倒叙の部分がとにかく面白い。
追い詰められても、プライドを捨てることのない恭子。
プライドが高いだけあって、あきらめが早い時もあるのだけれど、みじめな姿をさらすわけにはいかないという思いが最強。
恭子が逃げ切ったと思えば、戸田が彼女を追い詰め、しかし新たな事実が判明するとまたもや状況は恭子に有利に…と二転三転する展開にワクワクが止まらない。
めちゃくちゃ面白かった。
でも、不満もある。
戸田の捜査が一方的過ぎること。
最初から女性の犯行と考え、恭子を容疑者に決めてからは、違法捜査も辞さない。
普通これでは公判を維持できないと思うのだが、恭子のプライドの高さがこの場合戸田に有利に働いた。
でも、令状なしに勝手に庭を調べたり、髪の毛を持って帰ったりしちゃだめよ。
もうひとつ。
たった数時間で完全犯罪を行うための準備をぬかりなくできるくらい頭の回転が速いのに、たった数時間で殺意を実行してしまう浅はかさという矛盾。
それは彼女のプライドの高さゆえ、とのことだけど、私としてはどうも整合性が取れない気がした。
私だったら、もっとねちねちと周辺調査して、最も相手に衝撃を与えるような手段を考えると思うがなあ。
肝心のところだけが突発的というのが、ちょっと…。
そして最後の一撃を与えた彼女の家庭状況は、偶然以外の何物でもない。
そのような状況になるのもずいぶん作品的に都合のいい成り行きだし、実際問題として共働きだったんなら貯金くらいあるんじゃないの?って思ったわ。
いや、文句を書いてますが、本当に面白かったのは事実です。 -
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1958年(昭和33年)から、現代の202x年まで続く謎。
篠田(旧姓・長田)よし江は昭和16年3月30日生。
14歳で秋田の横手から上京。戦後の六三制の義務教育が始まっていた頃。家が貧乏だったこともあるが、高校へ進学せず、中学を出たら東京へ出て女中になる、それは憧れでもあった。
目黒の倉元家に女中として5年間勤めた。上司(?)の女中頭・村木聡子(むらき さとこ)には、お屋敷の中で見聞きしたことは決して外に漏らしてはいけないと言い聞かせられた。
それは、お屋敷を出たあとも続く呪縛である。
昭和35年の場面で刑事が、容疑者に対して、戦後15年も経った今でも、そういう身分制度にこだわっている人たちがいるのかという発言をしているが、今現在202x年の私たちから見ると、昭和35年は遥か遠く、戦後15年「しか」経っていないと感じる。
刑事は、世の中はもう変わったと認識していたかもしれないが、終戦でいきなり身分と財産を失った「華族」が意識を変えるのに15年は短すぎると思うのだ。いや、「出自」というものは死ぬまで意識の中に核心となって存在し、死ぬまで変われないのかもしれない。
同じ時代の中に肉体が存在していても、気持ちは同じ時代を生きてはいないのが村木聡子だった。
そしていくつかの物を墓場まで持っていったのだろう。
「お屋敷の中で見たことは話してはいけない」という呪縛に囚われ、悩んでいたよし江が80歳を過ぎて、やっと呪縛から解き放たれる。
その結末は分からないが、あの熱心だった刑事の息子が対応してくれて、何かが明るく解けた気がした。
長い物語だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ戦後の時代、あるお屋敷に奉公に上がった女中、よし江の話。
ワタシ、昭和の時代の地方から東京に出てきた女中さんの話、その雰囲気とかがすごく好き。素直に丁寧に暮らしている雰囲気が好き。
「小さいおうち」は戦前だったと思うけれど、女中さんのお話で、あれも好きだったな。
第1章は、女中さんのよし江が中心の話。
お屋敷に出入りする御用聞が、配達の途中で二人続けて行方不明に。
第2章は、刑事が中心の話。
お屋敷の主人が、殺される話。
雰囲気とか文章とかは、すごく好きなんだけれど、
事件の方はいまいち。
お屋敷の主人が殺される話は、まあ、納得いたしました
・・・が、御用聞2人の事件は、なんだかすっきりしませんけど
なんで殺されたのか、ワタシさっぱり分からないのですが。
・奥様は、激しやすい性格だった。虫を殺す。
・男性2人とも、東北出身、色黒がっしり体系で無口だった。
・男性Aは自転車で女子と2人乗りしていて、奥様がそれを見ていた。
・男性Bのマフラーに、奥様が反応した。
・よし江は2階の窓から、裏山へ1人で歩く男性(たぶんA)を見た。
・その男性を見た夜、奥様は熱をだした(らしい)、夜中に物置をガサゴソする音がした。
これくらい。
これだけで、2人の殺人事件の謎を解けと言われても、
殺害動機も殺害方法もさっぱり分かりません。
他の人の感想を検索していたら、Yahoo知恵袋で質問にAIが「主人公の夫の正太郎が妻の浮気を疑い、嫉妬で殺害」と回答していた。
いや絶対違うだろう!AI あてにならない!
って、正太郎ってだれ?屋敷の主人は宗一郎だし。