久世光彦のレビュー一覧

  • 桃

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    どのお話も色気と儚さとに満ちています。
    闇と光が渾然一体となって妖艶な吐息をつく感じ。
    悲しい話が多いはずなのに、涙よりも溜め息の方が先にあふれてしまいます。

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    2009年10月04日
  • 触れもせで 向田邦子との二十年

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    私の中で、じわじわとダメージが来るようなニュースがありました。
    久世光彦さんの死去。

    ふと、読み返したいと思ったのはエッセイ集でした。
    「触れもせで。」「夢あたたかき」などなど。
    いつかお会いしたいなと思っていた人は、どこか遠くへ出かけてしまいました。
    だから、久世さんの大事に丁寧に表現されていたその世界の素晴らしさをどこかで表現していきたいなと思います。

    久世光彦 様

    あなたがいなくなったことを思うと寂しい気持ちが溢れます。
    それは、毎年楽しみだった映像もあなたの選ぶ言葉も見れないからだと思います。
    でもきっとほんのちょっとそれは寂しいだけで、私はときどきふと思い出すだけの話です。

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    2009年10月04日
  • 一九三四年冬―乱歩

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    久世光彦。ドラマはそんな好きじゃないけれど。。。小説はいい!さすが脚本家。まず視覚で惑わせ、聴覚によって世界に引きずり込む。そして嗅覚で完璧に舞台を体感させる・・・。スランプ中の家出の40男・乱歩が主人公。滑稽で醜い現実世界と、エロス薫りたつ幻想世界を織り交ぜた怪しい世界に、読者の五感すべてを誘う。すばらしい文章。

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    2009年10月04日
  • 一九三四年冬―乱歩

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    久世さんの触れるか触れないか、という絶妙な空気の書き込み方が好き。

    作中作『梔子姫』を読み進めるうちに「乱歩」という迷路に入り込んでしまうでしょう。
    限りなく乱歩に愛を注いだ一作。

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    2009年10月07日
  • 一九三四年冬―乱歩

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    江戸川乱歩のスランプ期に、作者の空想を重ねた幻想?小説。
    当節の乱歩の饒舌体を通し、作者の芸術や文士への知見が散りばめられかなり楽しく読める。
    作品内で並行で描かれる乱歩の架空作品『梔子姫』も耽美的で非常に素晴らしい。
    前述の文体で読みづらさは否めないが、この作品を作り出した作者の創作力とセンスに驚く。

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    2024年06月15日
  • 桃

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    勝手に言うなら、概ね不幸な女子の話である。
    そして概ね、流行りの言葉で言うなら、性的に搾取されているとでも言うべきか。
    そこには必ずやってる男子がいて、それを読むオッサンとしては、けしからんとなる。いやー、この気持ちはオッサンにしか分からんか。
    と言っても最初の話はニャンコとオッサンの話で、いちいちオッサンがいやらしい気持ちでネコを見るという実に気持ち悪くて最高である。
    こういうのでいいんだよ、と言いたい。

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    2022年08月29日
  • むかし卓袱台があったころ

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    大人は過去の経験を分類し、記憶にとどめ、その文脈で今の体験に対して判断を下したがる。これは教育を通り越し、自己洗脳といえるのかもしれない。

    多くの人は大人になるにつれて忘れてしまっているが、本来誰しも子供のころは持っていたように思う感覚。
    この本で著者は、そういった経験知が成立する以前の感覚を表現している。

    病弱な子供の頃、布団の中で感じた生死が隣り合わせの感覚。戦時空襲の中で体験した現実と認識の乖離感。
    薄暗い白熱灯、障子越しの光と影。水漏れ、隙間風、虚無僧の尺八、隣家の暮らしの音。金木犀、便所掃除口のそばに生えるドクダミのにおい。

    社会通念や条件付けられた感情の決まりきった反応ではな

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    2016年07月19日
  • 卑弥呼

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    一見ラブコメ、でも実は新旧の作家や小説への深い愛と知識に溢れた作品。
    私自身この作品を通して興味を持った作家や小説は数知れず。太宰の「葉桜と魔笛」の切ない使い方に読む度に泣きそうになります。
    80歳になっても若者に文学問答をふっかけ恋に生きる橘のお祖母ちゃんは私の憧れ。

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    2014年01月05日
  • 桃

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    桃にまつわる、昭和初期の怪しくも美しい物語8編。現代よりもより死が身近であった時代。傍では悪い人生だったであろうに、当人にとって本当のところはどうだったのだろうか?がテーマか。全て佳作であるが、「尼港」の首と父の晩年、「指」のひどい仕打ちの客観視、「二人」の間際の救い、「響き」のもう一度同じ境遇に生まれ変わり、もう一度繰り返せたらよいねという送り言葉の4編が特に気に行った。

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    2013年02月07日
  • 書林逍遙

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    散歩ついでに久世さんの林に寄ってみたのですけど、木が皆一様に真っ直ぐ生えていることに吃驚しました。本への意識というか、志というか、そういうのが真っ直ぐなんですよね。天邪鬼的腐った子供のような、うねうねひん曲がった木は生えていません。ただ真っ直ぐ、高く高く空へ向かって伸びています。そう、「竹」なんですよ。ここは竹林なんです。それがとても潔くて、素敵だと思いました。いい竹の元には、いい筍もあるはず。次は筍狩りに行く予定です。

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    2011年03月03日
  • 一九三四年冬―乱歩

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    1934年冬、乱歩が失踪する。失踪先は麻布のホテル。乱歩はそこでエロティシズムにあふれた短編を書き始めていた。と、いう設定で久世光彦が乱歩になりきって描いていく。

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    2010年12月19日
  • 曠吉の恋 昭和人情馬鹿物語

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    久世光彦の作品は面白いが、どうしても文章に馴染めなかった。
    しかし、この作品はすんなり読める。そして、面白い。どちらかと言えば中間小説またはエンターテインメント小説の感じだ。

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    2010年11月24日
  • 桃

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    「桃」をモチーフにした短編集。
    どの話もねっとりとした湿った空気を感じる。
    直接的表現はほとんどないにもかかわらず、
    文章から匂い立つエロティシズムに圧倒される。
    画像をイメージすると、全体的に薄暗いのに、
    クッキリと桃の色や花の色が目の前に広がる。
    熟れた桃の果汁の匂いも漂ってきそう。

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    2010年05月31日
  • 一九三四年冬―乱歩

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    江戸川乱歩を主人公にした小説。
    乱歩の性格描写が良かった。なんだか、憎めないオッサンw
    芸術家ぶってみても結構俗物で、女性に興味があっても手は出せなくて、
    作中オドロオドロしいこと書いても、実際にはかなりビビリで
    気難しく気取ってはみても、甘えん坊。

    作品中に、さらに乱歩が執筆しているという小説が登場するという二重構造も凝ってて読み応えあり。
    これが乱歩が書きそうでいて、多分あの時代には書けなかったであろう性描写満載で、
    著者も楽しみながら書いたんじゃないかなーと、思う。

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    2009年10月07日
  • 一九三四年冬―乱歩

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    主人公は江戸川乱歩。スランプに陥って行方をくらまし、麻布の張ホテルに滞在する4日間を描いたフィクション。妖しくも怪しい登場人物と劇中小説『梔子姫』など様々なものがゆめうつつに溶け合ってて不思議に心地好い。つい中国人の美青年に注目してしまう乱歩さんに妙な親近感を覚えました。『梔子姫』は劇中小説としてではなく、一つの作品として好き。要素が似通っている『孤島の鬼』を読み終わったばかりだからか、無性に読み返したい。

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    2009年10月04日
  • 雛の家

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     昭和14〜20年ごろの話。日本橋の老舗人形屋の美しい三姉妹の恋模様。長女ゆり子は右翼の男、次女真琴は抗日運動の朝鮮人、三女菊乃は言葉を話せない住み込みの美少年人形師とそれぞれ恋に落ちる。……濃い恋模様だ(笑)
     文体も丁寧だからよけい濃い! 話の筋とか作者は何が言いたいんだーとかではなく、この濃密な雰囲気を楽しむのがよいのだと思う。でももっとエロスでもよかった(笑)
     「罪」とはなんだろうか。『こころ』みたいに、「恋は罪悪ですよ」ってことかな?

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    2016年01月05日
  • 桃

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    短編集。本から桃の匂いがしそうな話ばっかり。怪しい世界。若い女の子がでてきたり、戦争や関東大震災に絡んでる話が多い。どれも悲しい話に見えるけど、主人公達は一生懸命生きてるからそんなに暗くない。大正、昭和の雰囲気が出てて好き。「同行二人」が一番好き。八重が好き。「桃」は絶対どこかに使われている。(20080407)

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    2010年03月13日
  • むかし卓袱台があったころ

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    久世光彦さんのエッセイ集。昭和初期を語ったエッセイは色々とあるけれど、この人の優しい感性が伺える文章は、中でもすごく好きです…
    また、このエッセイを読んで「蕭々館日録」の麗子や「陛下」の梓が久世さん自身でもあったり、そうでなかったりするんだなと勝手に思いました。

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    2009年10月04日
  • 一九三四年冬―乱歩

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    久世氏の描く江戸川乱歩のお話。
    文章がとても綺麗で、尚且つすごく読みやすかったのを覚えています。
    妖しくて耽美な雰囲気を醸し出すのが得意な方なんだなぁ〜と感じました。
    幻想的ですがエロスです。
    作中作である『梔子姫』は、お話の中では乱歩の作品となっていますが、もちろん久世氏の書かれたものです。
    どうして乱歩本人ではない久世氏が、ここまで乱歩らしいものが書けたのかすごく不思議です。
    それ程までに乱歩の世界観を描ききっているんです。美しさとか、グロテスクさとか。
    乱歩ファンの方も楽しめる作品になっているのではないでしょうか。

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    2009年10月04日
  • 一九三四年冬―乱歩

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    くるたんさんのレビューを見て読み始めました

    もともと、江戸川乱歩が好きなので、このタイトルですぐに読みたくなりました。

    外国人ばかりが逗留する張ホテルや怪しい娼館など
    いかにも江戸川乱歩らしい世界観、昭和の初めの
    空気感とか、大好きな感じでした…

    その中で江戸川乱歩が作品づくりに苦悩する様や
    妄想する様、ちょっとのことに怯える小心なところもすごく人間味があってより江戸川乱歩がすきになりました。

    あらためて、江戸川乱歩の作品が読みたくなりました。

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    2020年11月10日