あらすじ
遅刻魔――あんなに約束の時間にいい加減な人も珍しかった。嘘つき――大きな嘘も上手だったが、とりあえずの小細工もうまかった。泥棒――どこを探してもあの人からもらったものなど出てきはしない。奪られてばかりいた。20年のパートナーなればこその知られざる「向田邦子の素顔」をはじめて明かす。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
再読。二人の関係を男と女にあてはめるには下世話だし、仕事仲間というには濃すぎるし、親友というには隠した部分が多いし、二人は二人でしかなく、それがとてもうらやましい。全編に向田さんの不在と喪失が顔を出し、「ああ、この人は若くして急にいなくなってしまったんだなあ」と泣けてくる。こんなふうに向田さんを失った久世さんは、その後をどんなふうに生きてきたのだろうか。
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数ある作家のエッセイの中で一番好きな本かもしれない。
向田邦子とのエピソードがとても綺麗な日本語でつづられていて、著者の向田邦子への思いが伝わってくるし、読み終わった後も、さわやかな気分がする。向田邦子は飛行機事故で亡くなってしまったけれど、この一冊には彼女とのエピソードの一つ一つに楽しい思い出やその人柄がぎっしり詰まっていて、著者の悲しみよりも愛や感謝が伝わってくる良い本だった。
料理研究家のコバヤシケンタロウさんがある雑誌でこの本を薦めていたのをきっかけに読みました。
Posted by ブクログ
私の中で、じわじわとダメージが来るようなニュースがありました。
久世光彦さんの死去。
ふと、読み返したいと思ったのはエッセイ集でした。
「触れもせで。」「夢あたたかき」などなど。
いつかお会いしたいなと思っていた人は、どこか遠くへ出かけてしまいました。
だから、久世さんの大事に丁寧に表現されていたその世界の素晴らしさをどこかで表現していきたいなと思います。
久世光彦 様
あなたがいなくなったことを思うと寂しい気持ちが溢れます。
それは、毎年楽しみだった映像もあなたの選ぶ言葉も見れないからだと思います。
でもきっとほんのちょっとそれは寂しいだけで、私はときどきふと思い出すだけの話です。
例えばそうだな、コーヒーにミルクを入れ忘れたまま飲み続けるそんな感覚です。
でも、思い出すたびにきっと「ああお会いしたかったな」とか「ドラマ観たいな」とかそんなことを勝手に思うのだと思います。
それはそれできっと構わないですよね?
私はそう思って生きていくことにします。
追伸 あなたが居なくなった世界は、私にとってあなたの世界から向田さんが居なくなった世界のようです。
とんでもなく大きな落し物です。でも私はそれを大事にしますから、よろしくお願いします。