【感想・ネタバレ】一九三四年冬―乱歩のレビュー

あらすじ

昭和九年冬、スランプの末、突如行方をくらました超売れっ子作家・江戸川乱歩。時に四十歳。謎の空白の時を追いながら、乱歩の奇想天外な新しき怪奇を照らす。知的遊戯をまじえ、謎の日々を推理。乱歩以上に乱歩らしく濃密で怪しい作中作を織り込み、昭和初期の時代の匂いをリアルに描いた第7回山本周五郎賞受賞作。

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Posted by ブクログ

久しぶりにぐいぐいひきこまれる小説を読んだなあと思う。乱歩は短編集1冊しか読んだことのない自分でもとても楽しめた。あまりのおもしろさに友達に勧めまくったけどヘンタイチックな表現が多々あるので、なんだかちょっと気まずいような……笑

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2013年03月21日

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乱歩ファンが乱歩を主人公に乱歩作品を書くというすさまじい実験作。特に作中作での描写が妖艶ですごいのだが、乱歩はもちろんポー、クイーン等の解説と、未来からの予言(既に今は過去)の段で幾度と無く現実に引き戻されるのが難点。乱歩作の短編(除く少年探偵団)は9割方読んだよ、と言う人にオススメ。ジャンルむずかしー。

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2012年02月09日

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 久世輝彦さんの傑作中の傑作です。

 1934年の冬、極度のスランプに陥った乱歩は行方をくらまします(事実)このことに着想を得た著者は、この間に乱歩がホテルの一室にこもり「梔子姫」という新作を書き上げたという話を作り上げました。ただこれだけの話です。ただこれだけなのに久世さんはものすごく面白い話にしてしまいました。
 乱歩の人物描写が秀逸ですが、それ以上にすごいのが「梔子姫」という小説です。乱歩が書き上げたことになっていますが、もちろん久世さんのオリジナルです。妖艶で奇怪なストーリーは、もう言い切ります! 乱歩以上にすごいです!

 もう亡くなってしまわれたのが残念ですが、久世さん以上に、妖しく美しく日本語を編み出せる作家はたぶんいません。

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2017年08月15日

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もうこんなペダンティックな文章で書かれた新しい小説は二度と読めないと思うと、残念というより悶え苦しむほど口惜しいのです。

まさしく自らの嗜好と性癖と偏向に呪縛されたイマジネーションの産物以外の何ものでもない、ピーンと張ったひとすじの妖しい耽美的感覚は、至上の喜びであると同時に戦慄の恐怖でもあるのです。

5年前の2006年3月2日、久世光彦は心不全で忽然と逝ってしまいました。享年70歳。

実際にひどいスランプになったことがある江戸川乱歩ですが、はるか80年を経た後年、自分が主人公にされて、環境の変化を求めて麻布の張ホテルで缶詰になり、そこで探偵小説狂いの人妻や謎の中国青年に悩まされつつも幻惑味たっぷりの新しい短編小説『梔子姫』を書く・・・・・などというまことしやかな物語をでっち上げられるとは、まさか夢にも思わなかったことでしょう。

二度目に読んだ時には久世光彦の息遣いが聞こえてきて、三度目には煙草の匂いがしてきました。そういうふうにして、著者というものは本の世界の中に永遠に生きるものなんだなあ、というより、私って他意識過剰なのかもしれません。

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2011年07月21日

Posted by ブクログ

とっても面白かった、いろんな本の話がでてきて興味深い、濃密で妖しい空気に酔った。品切重版未定とは…買っといてよかった、危なかった。

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2010年03月05日

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ネタバレ

― 1934年(昭和九年)冬、東京。
 雑誌「新青年」に頼まれた小説の原稿が進まず、衝動的に逃亡を図った江戸川乱歩(40歳・作家)。
 都心のホテルに一時避難し追手からは逃れたものの、このままでは作家の名が廃る。
 何としてもこの「梔子姫(くちなしひめ)」(←タイトルだけは決まってる)、完成させなければ… ―

 (※この作品に登場する「乱歩」はほぼ著者の妄想の結晶に近く、実在する「江戸川乱歩」とは多分に異なる人物である恐れがあります)


何というか、一言で率直に申せば、萌えました。

乱歩氏のどこまでも等身大の40歳な感じといい、華栄青年の絶妙な魅力といい、
昭和初期のやや陰のある独特の雰囲気を醸し出す文章といい、私の心をがっちりホールド。
物の成り行き的に読み出したはずが読み進むほどにテンションが上がり、読み終わる頃には大好きな一冊となっていました。
(※)の点さえ大丈夫であれば、全ての乱歩愛好者におすすめしたい小説です。
また文中に乱歩関連の小ネタが散在しているので、乱歩マニアな方ほど楽しめるはず。

ちなみにこのどうみても乱歩作品としか思えない作中作「梔子姫」は完全に久世さんのオリジナルだそうです。
ほんと、久世さんの乱歩に対するありとあらゆる種類の愛が結晶化した作品だと思います。
(2006年 3月)

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2016年11月24日

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江戸川乱歩の、ある冬の四日間をエロティックな文章で描く。作中、乱歩は「梔子姫」という小説の執筆に取り掛かる。本編と同時進行的に、この作中作が完成に至る過程を追っていくのだが……。この「梔子姫」がとにかく凄い。乱歩の完全な模倣、というより乱歩以上に乱歩的な作品に仕上がっている。久世光彦氏の筆力に驚き呆れました。

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2009年10月04日

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深刻なのかお気楽なのか、揺れ幅がおもしろい乱歩先生。
雰囲気のあるホテルにて両手に花状態。乱歩でなくてもキュートで艶っぽい翁青年にはクラクラします。
明治大正の名立たる文人・作家の影がサッとよぎるのもよいです。

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2009年10月13日

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スランプの末、突如行方をくらました超売れっ子作家・江戸川乱歩。謎の空白の時を追いながら、乱歩の奇想天外な日々を照らす。

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2009年10月04日

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主人公は白いモノが目立ち始めた40男の乱歩。
作家としての後ろめたさを言い訳しつつ逃げ込んだある宿での隠遁中に起こる幻想と妄想。
久世光彦の描く乱歩は乱歩の小説以上に乱歩の世界観を浮き上がらせてくれます。
中国人の美青年や美しき人妻に心惑わされ、若い頃の生き生きとした文章を生み出していきます。
「梔子姫」を挿入することで、現実と妄想が交じり合い、それでいて読みやすい構成には脱帽。
是非ご一読を。

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2009年10月04日

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久世光彦。ドラマはそんな好きじゃないけれど。。。小説はいい!さすが脚本家。まず視覚で惑わせ、聴覚によって世界に引きずり込む。そして嗅覚で完璧に舞台を体感させる・・・。スランプ中の家出の40男・乱歩が主人公。滑稽で醜い現実世界と、エロス薫りたつ幻想世界を織り交ぜた怪しい世界に、読者の五感すべてを誘う。すばらしい文章。

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2009年10月04日

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久世さんの触れるか触れないか、という絶妙な空気の書き込み方が好き。

作中作『梔子姫』を読み進めるうちに「乱歩」という迷路に入り込んでしまうでしょう。
限りなく乱歩に愛を注いだ一作。

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2009年10月07日

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江戸川乱歩のスランプ期に、作者の空想を重ねた幻想?小説。
当節の乱歩の饒舌体を通し、作者の芸術や文士への知見が散りばめられかなり楽しく読める。
作品内で並行で描かれる乱歩の架空作品『梔子姫』も耽美的で非常に素晴らしい。
前述の文体で読みづらさは否めないが、この作品を作り出した作者の創作力とセンスに驚く。

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2024年06月15日

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1934年冬、乱歩が失踪する。失踪先は麻布のホテル。乱歩はそこでエロティシズムにあふれた短編を書き始めていた。と、いう設定で久世光彦が乱歩になりきって描いていく。

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2010年12月19日

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江戸川乱歩を主人公にした小説。
乱歩の性格描写が良かった。なんだか、憎めないオッサンw
芸術家ぶってみても結構俗物で、女性に興味があっても手は出せなくて、
作中オドロオドロしいこと書いても、実際にはかなりビビリで
気難しく気取ってはみても、甘えん坊。

作品中に、さらに乱歩が執筆しているという小説が登場するという二重構造も凝ってて読み応えあり。
これが乱歩が書きそうでいて、多分あの時代には書けなかったであろう性描写満載で、
著者も楽しみながら書いたんじゃないかなーと、思う。

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2009年10月07日

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主人公は江戸川乱歩。スランプに陥って行方をくらまし、麻布の張ホテルに滞在する4日間を描いたフィクション。妖しくも怪しい登場人物と劇中小説『梔子姫』など様々なものがゆめうつつに溶け合ってて不思議に心地好い。つい中国人の美青年に注目してしまう乱歩さんに妙な親近感を覚えました。『梔子姫』は劇中小説としてではなく、一つの作品として好き。要素が似通っている『孤島の鬼』を読み終わったばかりだからか、無性に読み返したい。

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2009年10月04日

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久世氏の描く江戸川乱歩のお話。
文章がとても綺麗で、尚且つすごく読みやすかったのを覚えています。
妖しくて耽美な雰囲気を醸し出すのが得意な方なんだなぁ〜と感じました。
幻想的ですがエロスです。
作中作である『梔子姫』は、お話の中では乱歩の作品となっていますが、もちろん久世氏の書かれたものです
どうして乱歩本人ではない久世氏が、ここまで乱歩らしいものが書けたのかすごく不思議です。
それ程までに乱歩の世界観を描ききっているんです。美しさとか、グロテスクさとか。
乱歩ファンの方も楽しめる作品になっているのではないでしょうか。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

くるたんさんのレビューを見て読み始めました

もともと、江戸川乱歩が好きなので、このタイトルですぐに読みたくなりました。

外国人ばかりが逗留する張ホテルや怪しい娼館など
いかにも江戸川乱歩らしい世界観、昭和の初めの
空気感とか、大好きな感じでした…

その中で江戸川乱歩が作品づくりに苦悩する様や
妄想する様、ちょっとのことに怯える小心なところもすごく人間味があってより江戸川乱歩がすきになりました。

あらためて、江戸川乱歩の作品が読みたくなりました。

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2020年11月10日

Posted by ブクログ

スランプ気味の乱歩さん、美青年のボーイのいる長期滞在型ホテルに逃げ込んで…えらい妄想にふけりつつ『梔子姫』という小説を書き上げる…という話。
「禿げてるくせに甘えてみる」とか
「美青年と一緒に異国の曲を聞く-こんなことなら着替えてくれば良かった」
「別にやつれていなくたって、伏し目がちでなくたって、人妻というだけでエロティックだ」とか、40歳を目前に人妻と美青年に目がない乱歩さん。
なんか怪奇小説の巨匠とされているけれど、かなりお茶目というか何というか。
乱歩の小説を読み込んでいるわけでもない私ですが、久世光彦が乱歩として書いた『梔子姫』だけでも「乱歩っぽいな」とそれとなく浸れました。乱歩ファンの感想を聞きたいです

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2010年07月13日

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