あらすじ
昭和九年冬、スランプの末、突如行方をくらました超売れっ子作家・江戸川乱歩。時に四十歳。謎の空白の時を追いながら、乱歩の奇想天外な新しき怪奇を照らす。知的遊戯をまじえ、謎の日々を推理。乱歩以上に乱歩らしく濃密で怪しい作中作を織り込み、昭和初期の時代の匂いをリアルに描いた第7回山本周五郎賞受賞作。
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Posted by ブクログ
― 1934年(昭和九年)冬、東京。
雑誌「新青年」に頼まれた小説の原稿が進まず、衝動的に逃亡を図った江戸川乱歩(40歳・作家)。
都心のホテルに一時避難し追手からは逃れたものの、このままでは作家の名が廃る。
何としてもこの「梔子姫(くちなしひめ)」(←タイトルだけは決まってる)、完成させなければ… ―
(※この作品に登場する「乱歩」はほぼ著者の妄想の結晶に近く、実在する「江戸川乱歩」とは多分に異なる人物である恐れがあります)
何というか、一言で率直に申せば、萌えました。
乱歩氏のどこまでも等身大の40歳な感じといい、華栄青年の絶妙な魅力といい、
昭和初期のやや陰のある独特の雰囲気を醸し出す文章といい、私の心をがっちりホールド。
物の成り行き的に読み出したはずが読み進むほどにテンションが上がり、読み終わる頃には大好きな一冊となっていました。
(※)の点さえ大丈夫であれば、全ての乱歩愛好者におすすめしたい小説です。
また文中に乱歩関連の小ネタが散在しているので、乱歩マニアな方ほど楽しめるはず。
ちなみにこのどうみても乱歩作品としか思えない作中作「梔子姫」は完全に久世さんのオリジナルだそうです。
ほんと、久世さんの乱歩に対するありとあらゆる種類の愛が結晶化した作品だと思います。
(2006年 3月)