石川淳のレビュー一覧
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高校時代に「狭き門」を読んで激しく感動した。今でも読書体験としては最高のものの1つだ。そのあと「田園交響楽」を読んだが面白くなかったのでジッドはこれだけしか読んでなかった。それを30年たった今、ふとこれを読んだ。良いと思った。高校時代に「田園…」のかわりにこれを読んでいたら僕の何かが違っていたかもしれない、と思った。話自体はわりと淡々としているかもしれないが、趣味というか波長が特別に僕に合っているような気がした。風景描写のきれいさ。最初は愛なく結婚した妻だったが、その美しさにひかれるようになる。ロマンチックな時間。小説としてのバランスも良いと思った。
主人公が崩落していくさまは、特に外的な -
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ネタバレ紫苑物語
P12
7歳の時 年の初めに作った歌を父が見て あからさまに 褒めあげた。確かに 手 筋が良い。すでに 一かどの歌 読みの歌である。
しかし 父は主室を取って ただ1ところ言葉をあらためた。
「これで非の打ち所はない。」
その塩 入れられたところは宗頼もまた 迷ったところであった。そこに 二色の言い回しが考えられて、どちらにすべきかと思案の末に勝ったと思われたものを取り劣ったと思われたものを捨てた。しかるに 父が 改めて 書き記した言葉は先に宗頼自ら捨てた言葉そのままに他ならなかった。己が踊ったと見たものを 長者である 父はまさったと見ている。歌の道に於いて父は己より劣っているのだろ -
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☆3.5 復古派、石川淳
王道の幻想譚であらう。
後半にかけておもしろく読めたが、もっぱら筋のなりゆきゆゑ。雲の上のたゆたふ筆致は、読み手に依れば川のやうによどみ、ともすればしづんでしまふ。使ひ慣れぬ漢語和語の連打の蕩揺としたとりえが読み初めはこころ苦しくあり、のびた麺のやうに好むところがすくないこともある。竹を割った切れを味はひたいと願った。世の中を文章で美化しても、卑下しても、本質は変らない。自分には実直な方がいい。
構造としては、上田秋成「雨月物語」の影を落す。日本霊異記、宇治拾遺物語の滑稽感はなく、むしろ徳川期に多いやうな人間のくろぐろしい浅ましさをゑぐった王道の寓話伝奇が形を -
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芥川賞第4回受賞作(1936下期)
これぞ純文学といった様相で、長いし読みづらいし、構成がわかるわけもなく、「普賢」が一体なんなのかもわからず仕舞、もう少し私の文章を読む力(噛み砕く力)をつけて読み直したいと思います。
しかし、所々の表現がぶわっと吹き付けてくるものがあって、特に出だし「盤上に散った水滴が変り玉のようにきらきらするのを手に取り上げて見ればつい消えうせてしまうごとく、かりに物語にでも書くとして垂井茂市を見直す段になるとこれはもう異様の人物にあらず、どうしてこんなものにこころ惹かれたのかとだまされたような気がするのは、.....」。それから「おりから日にきらめく並木を吹き渡る薫