出久根達郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
お名前は存じ上げていたけれど、恥ずかしながら出久根さんの作品を読んだのは2007年最後辺り。「おんな飛脚人」(これもシリーズ、オススメ)とこのシリーズ1冊目「御書物同心日記」を古本屋で見つけて読んで、面白い!と2008年頭に一気に買ったのだった。
将軍家の御文庫に勤める同心、丈太郎が主人公。何より本が大好きで、稀本珍本に目を輝かせる丈太郎は、本好きならきっと共感出来る筈。もともと出久根さんが古本屋をやっておられたからか、本に対しての細やかな愛情が感じられるのだ。この珍しい職業設定が丁寧に書かれているので、書物同心の仕事ぶりを読むだけでも面白い。
一応事件簿ではあるのだろうけど、天下揺るがす -
Posted by ブクログ
恥ずかしながら、私は近代文学をほとんど読んでいません。この本に取り上げられている作家の中では、宮沢賢治が好きで全集を読んでいますが、それ以外はぽつぽつ程度。直木三十五や火野葦平に至っては一冊も読んでいません。
なので、こうして出久根達郎さんが丁寧に解説してくださるのは大変ありがたいです。「どの作家にも、『玄関の扉』的な作品がある。作家の予備知識を教えてくれる作品である。それさえ読めば案内なしに、まごつくことなく奥座敷に行くことができる。」つまり、この本は取り上げられた作家たちの読書案内としても有用だということだと思うのです。
私は樋口一葉著『通俗書簡文』の「猫の子をもらひにやる文」が気にいった -
Posted by ブクログ
古本にまで手を伸ばしたら収拾がつかなくなるので、あまり古本屋巡りをすることはなかったが、古書・古本に関する本を読むことは好きだった。今では文学全集を筆頭に古書の価格は下落しているし、大体の価格もネットで分かる時代になってしまったが、自分が上京してきた頃は、文学書の初版を収集したり掘り出し物を一所懸命探す人も身近にいたものだった。
本書の作者出久根さんは元々古書店主だった人だが、本書に収録されている作品を読んでいると、そんな時代の様相が彷彿と浮かび上がってくる。
著者自身の古書店主だったときの体験がベースになっているのかと思われるもの、本に取り憑かれた人の妄念や浅ましさが描かれているもの -
Posted by ブクログ
面白かったです。出久根さんは初めて読みました。
より江という少女の視点で、夏目漱石や妻の鏡子を描く…というより、メインはより江の成長でした。
より江と猪之吉とのあれこれがほとんどだったのですが、優しい目線でおおらかに読めます。
描かれる出来事は、どの登場人物にとっても結構おおごとなのですが、穏やかに素直に描かれているので良かったです。
鏡子夫人は悪妻でもなんでもなかったです。むしろ、漱石と付き合うにはこれくらいさばけていた方が良いと思いました。
漱石の著作のモデルとか、エピソードの元になったものも色々と挙げられていて、また読みたくなりました。
エピローグで、実際の久保夫妻が福岡にいたのを知って -
Posted by ブクログ
ネタバレ内容(「BOOK」データベースより)
佃の渡しが消えた東京五輪の年、男は佃島の古書店「ふたり書房」を立ち去った―大逆事件の明治末から高度成長で大変貌をとげる昭和39年まで移ろいゆく東京の下町を背景に庶民の哀歓を描く感動長篇。生年月日がまったく同じ二人の少年が奉公先で知り合い、男の友情を育んでいく。第108回直木賞受賞作品。
書店のほんわか話かと思いきや、古書が熱かった時代の闇をはらんでいます。昔は本がとても大きな力を持っていたんだと読んでいてある意味うらやましい気持ちになりました。本を語り合ったり議論したりは楽しかっただろうな。
色々盛り込み過ぎて商店がぼやけているのが残念。