清水徹のレビュー一覧
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『シーシュポスの神話』を読んでみた。
……。
ペストよりも複雑。訳のせいなのか、原文もやはり複雑なのか。
カミュの思考の断片を読む…みたいな目的があるなら楽しいかも知れない。けど、個人的には回りくどく延々と同じ事を違う言葉で言ってるだけにしか見えなかった。
この辺りの思考が『ペスト』のあのあたりに反映されてるんだな。という部分もあったけど。
知らなくてもペストはペストで十分、疲れる物語だった。私には『ペスト』で意味が分からず疲れた部分を、ぐっと深堀してもっと疲れるため作品でしかない。
頑張って読んでみたけど、何を読んでるのか分からなくなる。
物語ではなくて、エッセイなのでなおさら -
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異邦人の主人公、ムルソーの大ファンでありながら、今ひとつ理解できないもどかしさを解消したくて読んだ。表現が難解でさらに分からなくなってしまった。不条理=非論理的、不合理という簡単なものではないらしい。理屈にならない理屈ってなんだ。それ自体に矛盾を孕んでいて、荒唐無稽なものということなのか。自分で書いててさらに分からなくなってきた。一つだけ印象に残っている例え話をメモって逃げよう。未来の自分に任せよう。
183ページ、カフカの不条理を比喩する物語である。
狂人が風呂桶の中で釣りをしている。
精神病に独自の見解をもっている医者が「かかるかね」とたずねたとき、気違いのほうはきっぱり答えた、「とんでも -
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哲学書を高校の倫理以降読んだことが無い私としては難解な思想がずっと続いて読むのが大変だった。
不条理性をテーマに人間の生と幸福を考えさせられるエッセイであり、常にカミュが大事にしてきた思想が伺える作品でもあると思う。人間の死と、それに対する反抗的思考を冷静に思考する。飛躍した希望的思想になりがちであった宗教への評も、気づかされる事ではある。
人間が人間自体の目的であり、それ以外の何でもないと思う事により、自決や夭逝を避ける事も可能なのではないかと思う。
これ以上の批評は出来ないが、常に自分自身の生に置き換え人生を見つめる作品となった衝撃作だ。 -
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マルグリットが少女だったころ
さまざまな事情からデュラス家は貧乏だった
早くに夫をなくした母は、実らない耕作地を知らずに買ってしまった
フランス領インドシナにあるその土地で
白人の最下層に立った母は、誰にも見下されまいと身をこわばらせ
それがよくなかったのか
子供たちの教育に失敗したあげく、精神を病んだ
マルグリットはのちに、そのころを小説に書いて名声を得るのだが
必ずしもそのことに満足したわけではなかった
なぜならそこでは不道徳な真実が省かれていたからだ
母の不安はマルグリットの不安だった
精神的に、経済的に
それを癒すため、彼女はみずから男を求めたのだった
母が死に、兄たちも死に、年老 -
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ネタバレ通勤の地下鉄でこの本を読んでいると、荒涼とした世界の無機質さや奇怪さが迫ってきて気持ち悪くなってくる。哲学が辿り着いた理性の限界という結論には同意しつつ、だから神を信じるというのは「飛躍」だとして、キルケゴールに代表される実存哲学を退けるカミュ。クリスチャンとしてはカミュの示す生き方を受け入れるのは難しいが、悲惨な戦争を経て生み出されたカミュの思想をクリスチャンも無視はできない(教会がその戦争を止められず、加担すらしたことも考えると尚更)。「飛躍」がないからなのか、より近い時代だからなのか、訳文のためなのか分からないが、キルケゴールよりは難解でない気がする(それでもかなり難解だが)。
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ネタバレ自分なりにカミュの「不条理の哲学」を要約すると以下のようになる.人間はその理性から,世界の全て,万物の理を知ることを欲する.しかし,世界は自ら何も語らず,そこに存在する.人間の理性では,世界を理解することは到底敵わない.つまり,人間は世界に産み落とされた段階で,わかるはずのないものを知ろうとするという絶望を体験することになる.この二つに引き裂かれた状態を「不条理」と呼ぶ.この不条理な状態に対しては二種類の対応の仕方が思い浮かぶ.一つは,不条理を生きることであり,もう一つは,不条理な世の中から逃避する,即ち,自死である.究極の選択である自死に対して,生きることを選択するということはどういうことか
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ネタバレ確か島本理生さんが文体に魅せられたと紹介していたので読んでみた。
自伝的小説なのにほとんど現在形で語られ、一人称と三人称が混在しているのが斬新だった。が、翻訳によるところが多いので、たとえば村上春樹が訳したら1Q84みたいな普通の語りになるのではないか。
この訳はかなり原文に忠実なようで、翻訳小説らしくセンテンスが長く、挿入句、修飾句が多く入り、日本人にはかなり読みにくいと思う。
内容的には、長男にだけ異常な愛情を注いで家を破滅させた母親のせいで、15歳の若さで愛人を持ったヒロインに深く同調した。顧みられずに死んでいった下の息子も哀れであった。
表紙の写真は著者が18歳のときのものだそうな。な