清水徹のレビュー一覧

  • 愛人ラマン

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    南方の植民地小説の典型かもしれないが、それでもデュラスの自伝的な作品という意味で私小説的な側面もあり、興味深く読めた。私小説的であるがゆえにデュラジア(デュラス+アジア)の真骨頂ともいえる。幻想と現在と過去と、そこを行き交う肉親と友人と愛人。南方独特の高湿な空気と、性に目覚めることでしか自我を獲得できない主人公の価値観が絶妙な交配をみせる。圧倒的。

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    2011年10月22日
  • 愛人ラマン

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     たたみかけるように澱みなく言葉が迫ってくる文章が印象的。文の途中で主語が変わったり、時系列がばらばらだったり、地の文に直接話法の会話表現が用いられたりと、一見読みにくさを感じさせるような文法が目立つ(訳によるのかもしれない)。肌にまとわり付くように濃密な文章でありながら、肝心なことは何一つはっきりと語らないという点で淡々としている。好き嫌いは分かれそうだけれど、わたしは結構好き。言葉の本流に身を任せてほしいままに翻弄された。

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    2022年11月20日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

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    何回も挫折してる本。
    ちょっとは理解できたかも?

    世界は不条理で、不条理だからこそ幸福もある。
    不条理への反抗が生きるということ。
    目的、将来、価値などを考えるのではなく、ただ反抗し生きることが美しい。

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    2025年04月09日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

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    『シーシュポスの神話』を読んでみた。
    ……。

    ペストよりも複雑。訳のせいなのか、原文もやはり複雑なのか。
    カミュの思考の断片を読む…みたいな目的があるなら楽しいかも知れない。けど、個人的には回りくどく延々と同じ事を違う言葉で言ってるだけにしか見えなかった。



    この辺りの思考が『ペスト』のあのあたりに反映されてるんだな。という部分もあったけど。
    知らなくてもペストはペストで十分、疲れる物語だった。私には『ペスト』で意味が分からず疲れた部分を、ぐっと深堀してもっと疲れるため作品でしかない。



    頑張って読んでみたけど、何を読んでるのか分からなくなる。
    物語ではなくて、エッセイなのでなおさら

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    2023年12月14日
  • 愛人ラマン

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    もう大変。
    とんだおおやけどってやつです。

    読み方がまずわからん。
    彼女はわたし?彼女もわたし?

    飲み込まれ、放り出され、やけどしつつ、溺れたり、慣れない読書でした。

    この暑い中読むのには適してしたかな。

    一言では言えない濃密な人生、しかもかなり前半で。
    生き延びるために快楽を存分に解放する。閉じ込めておくわけにはいかなかった、そうしたら死んでしまう。

    解説を読んだら理解が深まるかと思ったら、ますますドツボ。
    修行が全然足りませぬ。

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    2022年06月16日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

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    異邦人の主人公、ムルソーの大ファンでありながら、今ひとつ理解できないもどかしさを解消したくて読んだ。表現が難解でさらに分からなくなってしまった。不条理=非論理的、不合理という簡単なものではないらしい。理屈にならない理屈ってなんだ。それ自体に矛盾を孕んでいて、荒唐無稽なものということなのか。自分で書いててさらに分からなくなってきた。一つだけ印象に残っている例え話をメモって逃げよう。未来の自分に任せよう。
    183ページ、カフカの不条理を比喩する物語である。
    狂人が風呂桶の中で釣りをしている。
    精神病に独自の見解をもっている医者が「かかるかね」とたずねたとき、気違いのほうはきっぱり答えた、「とんでも

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    2022年02月02日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

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    難しかったの一言。とりあえず意味がわからなくても文字を追いかけていこうと、どうにかこうにか読み終えて、カミュの世界観みたいなものをどことなく感じられたかな、と言うレベル。決して作品が悪いのではなく、私の読解力不足かと。でも、ドストエフスキーの作品を採り上げて論じていく章だけは、少し理解しやすかったかな。

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    2021年04月10日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

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    アルベール・カミュの本を読むのはこれが初めて。

    事前知識が少ないため、正直かなり難しいと感じた。
    タイトルになっている「シーシュポスの神話」部分だけは短くて分かりやすい神話となっていて理解できたが、その他の部分は
    ・不条理という概念を中心に、難しい言葉が多い
    ・他の哲学者や思想、古典作品を知っていること前提となっている
    で、まだまだ自分はリファレンス先の作品や作者のことを知らないので理解ができなかった。

    また、リベンジしたい作品。

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    2020年08月12日
  • 愛人ラマン

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    作者の自伝的小説。少女の愛と死、情念と苦悩の物語。作者は、作者自らの経験をもって、生きることがいかに愛と死に近く狂気に満ちているか詩情豊かに描いている。読者を作者の心酔する「美」の世界に誘う。

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    2020年08月03日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

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    哲学書を高校の倫理以降読んだことが無い私としては難解な思想がずっと続いて読むのが大変だった。
    不条理性をテーマに人間の生と幸福を考えさせられるエッセイであり、常にカミュが大事にしてきた思想が伺える作品でもあると思う。人間の死と、それに対する反抗的思考を冷静に思考する。飛躍した希望的思想になりがちであった宗教への評も、気づかされる事ではある。
    人間が人間自体の目的であり、それ以外の何でもないと思う事により、自決や夭逝を避ける事も可能なのではないかと思う。
    これ以上の批評は出来ないが、常に自分自身の生に置き換え人生を見つめる作品となった衝撃作だ。

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    2020年07月24日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

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    論の繰り返しが多いなーと思ったので
    全部は読んでいないが。

    がんばれ、カミュ。一緒にがんばろう、カミュ。
    人生に対して "すべていいよ"と言えるように。
    そんな気持ちになった。

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    2018年11月07日
  • 愛人ラマン

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    マルグリットが少女だったころ
    さまざまな事情からデュラス家は貧乏だった
    早くに夫をなくした母は、実らない耕作地を知らずに買ってしまった
    フランス領インドシナにあるその土地で
    白人の最下層に立った母は、誰にも見下されまいと身をこわばらせ
    それがよくなかったのか
    子供たちの教育に失敗したあげく、精神を病んだ

    マルグリットはのちに、そのころを小説に書いて名声を得るのだが
    必ずしもそのことに満足したわけではなかった
    なぜならそこでは不道徳な真実が省かれていたからだ
    母の不安はマルグリットの不安だった
    精神的に、経済的に
    それを癒すため、彼女はみずから男を求めたのだった

    母が死に、兄たちも死に、年老

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    2017年06月16日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

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    ネタバレ

    通勤の地下鉄でこの本を読んでいると、荒涼とした世界の無機質さや奇怪さが迫ってきて気持ち悪くなってくる。哲学が辿り着いた理性の限界という結論には同意しつつ、だから神を信じるというのは「飛躍」だとして、キルケゴールに代表される実存哲学を退けるカミュ。クリスチャンとしてはカミュの示す生き方を受け入れるのは難しいが、悲惨な戦争を経て生み出されたカミュの思想をクリスチャンも無視はできない(教会がその戦争を止められず、加担すらしたことも考えると尚更)。「飛躍」がないからなのか、より近い時代だからなのか、訳文のためなのか分からないが、キルケゴールよりは難解でない気がする(それでもかなり難解だが)。

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    2017年03月19日
  • 愛人ラマン

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    サイゴンが舞台ですが、フランス領で教師として働く母とその子どもたち、植民地の不動産を扱う華僑一家と中国人が住むショロン地区…ベトナム人が登場しないお話でした。

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    2016年09月25日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

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    ネタバレ

    自分なりにカミュの「不条理の哲学」を要約すると以下のようになる.人間はその理性から,世界の全て,万物の理を知ることを欲する.しかし,世界は自ら何も語らず,そこに存在する.人間の理性では,世界を理解することは到底敵わない.つまり,人間は世界に産み落とされた段階で,わかるはずのないものを知ろうとするという絶望を体験することになる.この二つに引き裂かれた状態を「不条理」と呼ぶ.この不条理な状態に対しては二種類の対応の仕方が思い浮かぶ.一つは,不条理を生きることであり,もう一つは,不条理な世の中から逃避する,即ち,自死である.究極の選択である自死に対して,生きることを選択するということはどういうことか

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    2016年09月05日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

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    肌感覚で分かるというのは難しい。
    文化や歴史の違いなのか、原語で読めれば違うのかもしれないけれど。

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    2014年09月21日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

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    小説かと思いきや完全な哲学論考でかなり難解。
    途中でいきなり挿入されてるドストエフスキー論が面白い。
    カフカ好きな人には終章のカフカ論も。
    『異邦人』読んでカミュの言う「不条理」についてもっと深く知りたいと強く思った人向け。

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    2012年10月12日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

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    小説だと踏んで買ったら、論説文とか哲学エッセイの類いでした。「不条理」についての論考を諸哲学者・文豪を引きつつ展開しています。
    最後に付録として「フランツ・カフカの作品における希望と不条理」という項が加えられていました。カフカファンとしては嬉しい。得した気分。
    またドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」についての言及がありました。未読の本についてしゃべられるとそれを読んでみたくなりますな。

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    2012年08月11日
  • 愛人ラマン

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    ネタバレ

    確か島本理生さんが文体に魅せられたと紹介していたので読んでみた。
    自伝的小説なのにほとんど現在形で語られ、一人称と三人称が混在しているのが斬新だった。が、翻訳によるところが多いので、たとえば村上春樹が訳したら1Q84みたいな普通の語りになるのではないか。
    この訳はかなり原文に忠実なようで、翻訳小説らしくセンテンスが長く、挿入句、修飾句が多く入り、日本人にはかなり読みにくいと思う。
    内容的には、長男にだけ異常な愛情を注いで家を破滅させた母親のせいで、15歳の若さで愛人を持ったヒロインに深く同調した。顧みられずに死んでいった下の息子も哀れであった。
    表紙の写真は著者が18歳のときのものだそうな。な

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    2012年07月05日
  • 愛人ラマン

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    ネタバレ

    最後まで読み終わってから全体を振り返ると、素敵なキレイな恋愛小説であった。かと思いきや、自伝であったようだ。
    中国人青年の思いは一方通行で報われないのかと思ったが、実は報われていてホッ。
    しかし、このあっちいったりこっちいったりの文章はなかなか読むのが辛かった。私には合わないのか、フランス文学を読みなれてないためか

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    2012年02月29日