清水徹のレビュー一覧

  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    シューシポスとはギリシア伝承で言うところのシジフォスである。石を山の上に運び上げる重篤で虚無的な刑罰に処せられた悲劇の男である。そんな虚しさ空しさに就いてを徹底的に語り尽くしたアルベール・カミュの代表的な評論。シューシポスの神話を読んだらぜひとも旧約聖書の伝道の書またはコヘレトの言葉を読んでみよう。此の世の空しさが痛いほどに理解できることだろう。

    0
    2023年08月30日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    何をグダグダ書いてるのだ?と最初は思ったが、読めば読むほど染みる。人間は皆、死という運命から逃れられない。平和に暮らしていると忘れがちだが、80歳90歳まで生きられる保証もない。では何のために生きるのか?

    本書は、異邦人の著者として有名なカミュによる、哲学、小説評論のエッセイである。短いのだが、他の哲学、小説の知識が前提なところもあって全ての文意を理解するのは難しいが、全体として言いたいことは一貫しているので、分かったような気になれる。人生への態度として共感できたので、手元で時々読み返したい。

    0
    2023年03月17日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    「自分の生命・存在以上に重要な事実なんて存在しない。事実、ガリレイは地動説の正しさの主張より、自分の命を優先した」なんて素晴らしい文章だ。

    0
    2022年07月22日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    高校生の時に読んで以来、およそ50年ぶりに読んだ。相変わらず難し過ぎてさっぱり分からなかった。実存主義の言わんとするところは、神が死んだ現代に於いて、それでも現実に存在する我々人間は孤独に耐え不条理と向き合って力強く生きていかねばならないということだと勝手に理解しているが、最後のシーシュポスの神話の挿話はその事を言っているのだと思う。難解な部分はあえて分かろうとせず、ラップミュージックを聴くように気楽に読み流せば良い。そうすると、時々心に響くフレーズに出会える。

    0
    2022年01月05日
  • 愛人ラマン

    Posted by ブクログ

    映画を2〜3回観てから読んでみた。本の方が間に今現在の描写が何度も出てくるので、回想感が強い分ちょっとあっちこっち気が飛んでしまうかも。
    読んでも観てもお話のような運命の出会いだよなぁと思う。男はロリコンでもなさそうだし、むしろ15歳という歳に似合わず大人びている彼女に一目惚れしたんだろう。その男が大金持ちで彼女は家が貧乏で苦労している…なんて。なんてドラマみたいなの!交際?している間は淡々と付き合って深入りはしないようにしていたけれど、最後の客船での涙は愛していたから流れたのよねぇ。それでもあの当時もう2度と会えないかもしれない距離に帰ってしまったことは、彼女にとっては忘れられる、思い出にで

    0
    2020年08月20日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    少しずつ読み進めてますが、若いときの読書体験の影響力とは凄まじいもの

    僕が普段、何気なく心の芯においてる在り方みたいなものの多くはここに書いてあったことなのだなーと発見をしている

    「人間の尺度を超えている、だから超人間的なものでなければならぬ、という。しかし、この、「だから」は余計だ。ここには論理的確実性などいささかもない。経験的蓋然性もいささかもない。僕の言い得るのは、なるほどこれは僕の尺度を超えている、これだけだ。そこから僕は否定を抽き出しはしない。いや、少なくとも僕は、理解不可能なものの上にはなにひとつ築きたくない。自分ははたして、自分の知っているものとともに、ただそれだけとともに生

    0
    2018年11月23日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    無限の神に有限の身体。その間に挟まれてしまった"ぼく"
    届かないからそっぽを向いた。
    「死ぬべきものとしてとことん生き抜いてやろうじゃないの」

    不屈の反抗児カミュ。
    このひとのことばは緻密さにあるのではなく、反抗という飛躍によって突き動かされている。
    だから、どうしたってどうしようもなくへそまがりで頑固。前を見ながら後ろを見るということを平気でやってのける。それは有限と無限の合わせ鏡によってなされる。キルケゴールとヤスパースの比較がそれだ。
    永遠という神にはどうしたってこの有限の者はなりえない。だったら永遠なんて幻からは背を向けてもう一度有限の身体に戻ろうではないか。目覚

    0
    2015年02月17日
  • 愛人ラマン

    Posted by ブクログ

    映画よりも、小説のほうが中国人の愛人のことより、母親のことが書かれていると思った。母親の関心をひきたいから、愛人を作ったようにも見える。母親の愛は上の兄に注がれるだけ、主人公と下の兄は母を愛していたが、愛に飢えていた。母親は娘のことを殴ったりするけど、外を向いては子供たちを絶対に否定しない。そこには強い女、母親が見てとれる。一人で3人の子供たちを育てた強い母親。お金が必要だから、娘が金持ちの中国人の愛人になっても、見えないふりを続けた。否定も肯定もない分からない行動。娘自身も愛というものがどんなものなのか、体の関係と割りきっていたはずなのに、本国に還る船の中で、突然彼を愛していたのかもしれない

    0
    2014年11月19日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    世界は人間の理性では把握しきれない、しかしながら人間にはこの世界をすべて理解したいという救いがたい欲求がある、そしてその世界と理性との間の関係こそが「不条理」である。

    であるから人間の救いがたい欲求を捨てようという努力や、不条理を肯定し受け入れるような方法は本来の不条理の姿を変えてしまう。
    カミュは明徹な視点でこの不条理を見つめ直そうとする。

    ……実を言えば今回の読書で僕がこの本の全部とより深いところをはっきり理解したとは言い難い。
    特にp.90の質から量への価値の転換がいまいちつかみきれない。
    けれどもここのところ読む本はどれも、この「質から量へ」を示唆しているような気がする。

    わから

    0
    2012年11月19日
  • 愛人ラマン

    Posted by ブクログ

    母によって粗末に扱われたデュラスが、中国人男性とのマゾキスティックな性愛関係にアディクトすることで、必死にうちなる悲しみをのりこえようとする様が痛々しい。またそこに、植民地における支配-被支配の脈絡が、性愛化されて現れていく。この関係性の輻輳を破綻なくまとめあげるデュラスの力量が堪能できる一冊。

    0
    2012年05月31日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    む、難しい。

    けれども、
    彼の「不条理」「反抗」という姿勢は、
    絶えず変化する、という信念は変化しない、
    というわたしの考えに近くて、
    なるほどと得心する部分が多々ある。

    理性に依るのでもなく、
    神性に依るのでもなく、
    両者を相対峙させたままの状態(不条理)に置いておくこと。

    ガリアニ神父がデピネ夫人に言った
    「重要なのは病から癒えることではなく、病みつつ生きることだ」
    という言葉を引いているが、
    おそらくそれが「反抗」なのだろう。

    「確実なものはなにもない」という確実性。
    その中に身を置くこと。

    なんともしんどい生き方であるが、
    わたしはこういう生き方を望んで

    0
    2012年05月03日
  • 愛人ラマン

    Posted by ブクログ

    はじめてデュラスを読む。
    映画の中のインドシナの退廃的な雰囲気が忘れられず原作をと。

    映画では2人の逢瀬に多くの時間が割かれていた記憶があるのだが原作での描写は家族と私,彼と私,自分の周りの女性と私,という3つ程度にカテゴライズされる印象を受けた。

    そのため最初は暴力的な家庭と悦楽の記憶が交互に立ち現れ,独白の羅列かのように見えるのだけれど,なぜか暴力ゆえにあれがさらに輝きを増していき,混濁が次第にエロスとタナトスの濁流を作り始める。私はその濁流にうっかり飲み込まれる(そうなることを望んでいたのだが)。メコンの流れを思い出す。あの土褐色の大河。

    原作に忠実に映画化したら相当前衛的だっただ

    0
    2011年11月15日
  • 愛人ラマン

    Posted by ブクログ

    大好きな小説です。フランス語分からないので原文がどうなってるのか分からないんだけど、とにかくアーティスティックな文体が大好きです。文がどんどん「、」でつながって行って最初は分かり辛いけどすごいパワーを感じる。翻訳本ってどうしても原文が透けて見えるようなものが多く、言葉としては元から日本の作家によって書かれたものには遠く及ばないものがほとんどだと思ってましたが、この本だけは凄いなー原文どうなってるんだろう?ってすごい好奇心を刺激されました。

    0
    2012年09月28日
  • 愛人ラマン

    Posted by ブクログ

    その頃のインドシナの情景も目に浮かぶようです。
    「シロップを焦がした匂いが部屋の中に漂ってくる、それから南京豆を炒る匂い、中国風スープの、焼き肉の、いろいろな薬草の、ジャスミン茶の、埃の、香料の、木炭の火の匂い、」と続いて行く匂いを描写したところなんて、まるで自分がそこに居るような奇聞になった。

    0
    2011年01月28日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

    匿名

    購入済み

    非常に難しかったので、整理しながらもう一度読みたい。ただ、人の生は不条理であることについては、ぼんやりとだが理解することができた。

    0
    2025年09月22日
  • 愛人ラマン

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    大好きな友達と、自分の人生で好きな本10冊あげようという会話をしている中であげていたので。
    あっという間に読んでしまいました。

    あの映像(イマージュ)…

    海、かたちのない、単純に比類のない海。

    男は女に言った、以前と同じように、自分はまだあなたを愛している、あなたを愛することをやめるなんて、けっして自分にはできないだろう、死ぬまであなたを愛するだろう。

    0
    2024年04月28日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    最近良くある自殺の話題に、参考というかある意味ひとつの見方だな。と思うことが書いてあった。不条理なことについて特に、入念に書かれていて、『生きることへの絶望なしに、生きることへの愛はない』のようなことが印象に残った。また、ドフトエフスキーやカフカについても触れており、参考になった。

    0
    2023年05月30日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    不条理について

    メモ
    ・人生に意味などなければ、人生はずっと生きやすくなるだろう
    ・人生は無意味だし、不条理なものであるが、それを受け入れることでわれわれは自由に生きることができる
    ・重要なのはもっともよく生きることではなく、もっとも多くを生きることだ(※意識的に生きるということ)
    ・人間の心には、自分を圧しつぶすものだけを運命と呼ぼうとする困った傾向がある。だが、幸福もまた、人間にとっては自分のほうで避けるというわけにはいかないものである以上は、これはやはり理性の手に負えぬものなのだ。ところが、現代人は、いつでも幸福を勝ち得たのは自分の手柄なのだと考えるくせに、じつは自分の幸福に気づいては

    0
    2023年02月26日
  • 愛人ラマン

    Posted by ブクログ

    「十八歳で私は年老いた。」この一言が強烈に印象に残る。タイトルで手を出しにくい作品かもしれないが、是非一読を。

    0
    2022年11月26日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    表題作はあくまで論の中の一つで、「不条理な論証」、「不条理な人間」、「不条理な創造」、「シーシュポスの神話」、「付録フランツ・カフカの作品における希望と不条理」から本作はなっている。
    これはベースとしてシェイクスピア、ドストエフスキー、カフカの作品をある程度知らないと勿体ないので、私の知識最弱なドストエフスキーを読んだ上で、読み直さないと行けないなと思いました...カフカはこのあと再読しよう...

    好きだったところ、印象的だったところをいくつか。
    ・この世界はそれ自体としては人間の理性を超えている、--この世界について言えるのはこれだけだ。不条理という言葉のあてはまるのは、この世界が理性では

    0
    2022年08月25日