清水徹のレビュー一覧

  • 愛人ラマン

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    文章が独特で、一人称から三人称になったり実験的な小説だったように思う。それでもデュラスの言葉は芳しく広がり、とても自由奔放のそのものだ。
    ストーリーを堪能するまえに、まずはデュラスの背景を知らなければならないように思う。自伝的小説による宿命だ。

    「十八歳でわたしは年老いた」嵐が過ぎ去ったあとのデュラスは何を見ただろう。
    中国の男性と白人の娘による決して官能的ではない、愛の物語。



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    2022年01月19日
  • 愛人ラマン

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    「仏領インドシナを舞台に15歳のときの、
    金持ちの中国人青年との最初の性愛経験を語った自伝的作品。」(表紙裏より)

    映画は観ていないが、予告編の雰囲気に記憶があるので、
    エロティックで妖艶な恋の物語だろうと思っていた。

    ところがなんと哀しい可憐な少女の心。
    そして文章の美しさ。

    インドシナのメコン川デルタ地帯、靄と湿地とのけだるい空気。
    愛人との出会いの迫力、愛人と過ごす時間の濃密さ。
    そのひまに見え隠れする少女の家族。
    その家族の精神のあやうさ、すさまじさ。そして、貧しさの原因。

    文章が美しいと言ったが翻訳とて、言葉というより構成がいいのかもしれない。

    一人称、三人称と自在に変わり

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    2021年08月31日
  • 愛人ラマン

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    この作品は映画でセンセーショナルな反響があったと記憶していますが、こうやって原作を読むとこれは年寄り婆さんの遠い昔の思い出に耽った繰り言ですね。(笑)
    少女時代に彼ー愛人とひたすら性愛に溺れた日々の感傷に耽るみたいな感じですかね。

    ただ、マルグリット・デュラスの少女時代はかなり悲惨だったようで、当時生まれ住んでいたベトナムでは父が早くに亡くなり母が土地投資に失敗し、母や上の兄からはモラハラ紛いのことをされていたようです。
    なので家庭的な要請や自己逃避など複雑な背景があったように思いますが、金持ちのちょっと気弱な中国人男性に目をつけたのもある意味必然だったのかもしれないですね。
    15才のマルグ

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    2021年03月14日
  • 愛人ラマン

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    1984年ゴンクール賞受賞作品。
    1992年発行の文庫本が本棚に積まれてました…(;'∀')

    1929年のフランス領インドシナ。
    関係も家計も破綻した家庭の貧しいフランス人少女が
    華僑の中国人青年と愛人関係を持つようになる。
    しかし、人種差別的にはフランスが強く中国は
    弱い立場なので少女の家族を含んで非常に
    ゆがんだ関係が築かれる。

    日本では1992年に映画が公開されました。
    映画のちょっと妙な服装をした少女と
    イケメンだけどおどおどした中国の青年、
    よどんだメコン川がはっきりと思い出されます。

    友人と観に行きました。懐かしいなぁ。

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    2021年01月04日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

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    年配の方に勧めて頂きました。若い頃、中年期、老齢になって読んで、それぞれに感じいることが違うとおっしゃってました。
    読み始めた初期は、何も頭に入らなくて苦戦しましたが、段々と脳が慣れてきたのか、最後の方は抵抗少なく読めた気がします。また数年後に読んでみようかな。

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    2020年08月16日
  • 愛人ラマン

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    植民地時代の仏領インドシナ。
    貧困家庭の白人の娘と裕福な黄色人種の青年。
    そもそも始まりからして歪んでいて、
    それは愛として結実できる代物ではなく、
    熟んで倦んだ。
    昇華できない情欲の関係は
    娘の心と若さを削り取っていくしかなかった。
    とてもフランス的な自叙伝。

    私は好きだったけどね、
    こういう救いがないけど抜け出せないような
    どうしようもない話は。

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    2020年03月08日
  • 愛人ラマン

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    フランス領インドシナで生きるフランス人の主人公の、中国人青年との性愛を中心に描いた自伝的小説。
    植民地の中でフランス人としては最下層におり生活に困窮しているため、中国人青年と関係を持つのはある種生活のためであるという義務感と、どれだけ困窮しようとも自分は白人であり黄色人種の中国人青年とは違うのだという差別意識とが綯交ぜになって感情が複雑なまま、一つだけ確かなのはその青年との悦楽のみ。決して青年を愛してはいないと、自分に、彼に言い聞かせながら関係を持ち続けていた主人公が、はたと自分の本心に気づく瞬間のやるせなさにぐっときた。

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    2019年01月03日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

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    カミュ 「 シーシュポスの神話 」 不条理をテーマとした重厚エッセイ

    不条理な論証(筋の通らない論証)
    自殺を 哲学上の重要問題として、不条理ゆえに自殺するのか(不条理に基づき生きることはできるのか) 論証。「不条理な自由」は 論証に対する結論、生きる力がすごい

    不条理と自殺
    *哲学の根本問題=人生が生きるに値するか→人生が生きるに値しないから 自殺する
    *自殺に至る不純分子=人の心の内部を食い荒らす虫
    *自分を異邦人と感じる→人間と生の断絶の感覚=不条理の感覚→死に至るまで 論理的か

    不条理の壁
    不条理は 人間と世界から生まれる
    *人間と世界を結ぶ唯一の絆
    *人間的な呼びかけと世界の不

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    2025年03月21日
  • 愛人ラマン

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    p.180「そしていまようやく、彼女はその愛を見出したのだった。

    ちょうどのちに、死を横切って、下の兄の永世を見出したように。」


    散文詩とでも言うのか、あざやかな言葉と影像の塊によって描かれた小説。インドシナの地で、貧困と憎しみで結び合わされた家族と、思春期の変わった少女と、中国の青年との出会い。
    植民地・肌の白い・人種の違い・プライドとコンプレックスといった感情と歴史的背景を完全に理解することはできなかったが、溢れ出るかの地の情緒とコラージュされた映像、とても印象的な小説だった。

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    2018年06月30日
  • 愛人ラマン

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    はじめて読んだときは、『太平洋の防波堤』のあの無力感に圧倒されて、ただ、さっと流してしまった。
    改めてもう一度読んでみて、デュラスがこれを書かずにはいれなかった情熱と、一方でその情熱を持て余してやりきれないでいる彼女の姿が見えた。
    時系列や場所、人物に一貫性はない。彼女の筆が進むまま、記憶の連想が進むままにただただ綴られていく。まるで思い出の活劇を眺めているみたい。その中で一本とおっている筋は、「わたし」という何者かがたしかに生きて考えているということ。時にその言動さえも揺らいでいるようにも見える。シナ人の愛人を持ったのはなにゆえか。金か愛か。そんなものでは決してない。ただ、彼女が生きている。

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    2016年06月12日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

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    カミュ
    シーシュポスの神話

    真に重大な哲学上の問題は一つしかない。自殺。人生が生きるに値するか否かを判断する、これが哲学の根本問題に答えること。それ以外のこと、つまりこの世界は三次元よりなるとか、精神には9つの範疇があるとかはそれ以降の問題。
    ニーチェの望んでいること-哲学者たるもの身を以て範をたれてこそはじめて尊敬に値するというのが真実ならこの根本命題に答えるのがどれほど重要かわかる。(これによって自殺を左右する)

    ある問題の方が別のある問題より差し迫っているということを一体何で判断する? -その問題が引き起こす行動を手掛かりにして(カミュの意見)
    ガリレオの自殺は根本的でない。取るに

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    2016年01月07日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

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    カミュは本当に頭がいいなぁ。
    正直難しかった(笑)
    こんなにも不条理についてこと細かく書けるというか思考できるというのがすごい。
    ドストエフスキー論とカフカ論は大好きな作家なので、なかなかおもしろく読めました。
    偉大な作家とは哲学者的小説家である。バルザック、サド、メルヴィル、スタンダール、ドストエフスキー、プルースト、マルロー、カフカっておれが好きな作家多し(笑)
    やっぱカフカやドストエフスキーってすごいよな~って思ったし、カラマーゾフの兄弟がよりいっそう楽しみになった。

    いっさいは許されているとは、なにひとつ禁じられていないという意味ではない。不条理は、ただ、これらのどの行為の結果も等価

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    2015年02月14日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

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    「真に重要な哲学上の問題はひとつしかない。自殺ということだ。」ああ、全くもってその通りだ。兄に自殺された身にとって、その言葉はより実感を伴って響いてくる。世界はいつも割り切れず、生はいつだって不条理だ。カミュの哲学は難解だが、それは安易な跳躍を良しとせず、不条理という困難さから決して目を逸らさないが故の必然的産物である。「すべてよし!」と未だ断定に辿り着けない生、だが大事なのは到達することではない。カミュは不条理に引き裂かれながらも、それでも「すべてよいものか?」と絶えず問い続ける敗北の人生を肯定する。

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    2013年02月04日
  • 愛人ラマン

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     フランス人がベトナム人を見る、あるいは中国人を見るという視点がわかる本である。現在ならば差別小説になってしまうであろう。

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    2012年11月25日
  • 愛人ラマン

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    再々々…読。私が生涯付き合うことになるであろう1冊。とはいえ筆者の脳内のフラッシュバックのように、時代も場面も異なる描写がランダムに出てきて読みづらい。それでも冒頭の「18歳で私は年老いた」からの印象的な数行と、少女がフランスに帰国するために乗った船を桟橋のリムジンが見送る場面からラストの数ページを読みたいがために、それ以外の難解というか面倒な言い回しに耐えている感じ。特に最後の数行のパラグラフが最高に好きで、それを再び読むために何度も読み返す。私にとってはこのラストを読むためだけにある1冊とも言えそう。

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    2012年11月09日
  • 愛人ラマン

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    映像(イマージュ)という言葉が何度も出てくる通り、とても映像的な作品でした。正直、1度読んだだけで理解したとは思えないけれど、行った事もないサイゴンの街並みと、小説世界のけだるく倦んだ空気を感じたような気がします。

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    2012年07月19日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

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    生きることそのものが不条理。でも、それを認めて、いつか来る死と現実に相対峙しながら生きるしかない。しかも、長く、多く。

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    2012年06月20日
  • シーシュポスの神話(新潮文庫)

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    読んだのは1年も前だけど感想書いてなかった。まとめないと忘れる。

    不条理と自殺との関係についての本。
    曰く、「不条理」とは”この世界が理性では割り切れず、しかも人間の奥底には明晰を求める死に物狂いの願望が激しく鳴りひびいていて、この両者がともに相対峙したままである状態”、或いは“欲望する精神とそれを裏切る世界とのあいだのあの背反状態”、或いは”人間と世界とを結ぶ唯一の絆”。
    実存哲学者達は人の理解を超えたものを神と呼び、不条理を生きる苦しみから逃れようとする。世界の不思議を全て神様の仕業にして受け入れてしまう。が、カミュは「不条理=神」とするのは飛躍だ、逃避だと批判する。
    “シェストフにとっ

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    2013年07月20日
  • 愛人ラマン

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    とにかく文章が魅力的。
    作中には「川」がよく登場し、デュラスもそれは意図的なものだったようだが、この文体にも私は「川」を感じた。
    流れるような、ときに歌うような、ときに小石にけつまづいて滞るも、すぐに走り出すような、奔放で流麗な言葉に魅せられた。
    イマージュのさざめき。

    きっと読むたびに豊潤な味わいを感じさせてくれるであろう、深みのある作品。

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    2014年01月07日
  • 愛人ラマン

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     植民地時代の東南アジアが舞台の、エキゾチックな感じの恋愛小説だった。なかなか背徳的な感じもして面白いんだけど、場面の切り替えが多いし、外国文学特有の分かりにくい表現も多くてちょっと難しかった。
     主人公はフランス人の少女だけど、父親を亡くしており、家は貧しい。周囲とも上手くいっていない感じ。そんな環境だから、恋愛に没入していったのかなあ。すげえ浅い読みだな。

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    2011年12月31日