鳥山まことのレビュー一覧
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今は亡き妻への思いを具現化するような家を建てた藪さん。彼のあとにこの家に住むことになった3人の視点から描かれる彼らの日常は、移ろいゆく季節や時の流れ、ままならない人生の哀しみを映し出す。彼らは一様に繊細な感覚と観察眼を持ち、生活するなかで藪さんの思いを汲み取っていく。たとえ薮さんを知らなくても、この家に住んでいるうちに、藪さんの妻にあてたラブレターを感じ取っていくのだ。数十年の時間差を一続きのように描いているので、読み手も常に細部にまで意識を集中して頭の中で整理しながら読まなければならず、難儀しながら読んだ。昭和の小説を読んでいるような古風なスタイルと相まって、the 純文学のノスタルジーを呼
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ネタバレ時の家
著者:鳥山まこと
初出:群像2026年8月号
第174回(2025年下半期)芥川賞受賞作品
随分と退屈な小説だった。なぜそう感じたのか?それは描写が繊細だからだと思う。いまどき異様なほどの繊細さがあるのである。若い頃読んだ小説は、それが普通のことだった。しかし、最近の小説はそれがない。この作品を読んで気づいた。
著者は建築士である。現役の建築士として働いている。この作品も、ある一軒の家について書いている。舞台はそこオンリー。この家を建てる時のこと、二代目の住人が暮らしたり塾を開いていたりした時のこと、三代目の住人が暮らしていた時のこと、そして、取り壊しの前に35歳の青年が詳細にス -
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「いかんせん小説としての立ち上がりが遅い。暖房器具だったら風邪を引く」との吉田修一の評には膝を打った。家自体が主人公でもあるので、「人が出てくるまでに何ページ読ませるのか」とのクレームは当たらないのかもしれないが、シナ合板や断熱材の描写が延々と続き乾燥による破裂音に至る導入部は謎に長い。
建築家の自邸を住み継ぐ人々と、幼い頃に隣に住んだ青年、そして妻を失った建築家自身の、時の流れや失われ戻ってこないもの、死や離別といった人生の点景を、淡々とした家のディテールの描写に重ねていく。
青年が幼い頃に建築家に教わった「スケッチ」が家自体を描く小説の筆となっていく構成に妙味がある。端正な、端正過ぎる小説 -
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ネタバレ毎年同じ日に弁天島駅の入場券を購入している恋人が突然いなくなり、その日に弁天島駅へ向かう一話目。
私は自分を高く見せるような嘘を吐く人はものすごい勢いで冷めてしまうだろうな。
東京駅が戦闘ロボットになる突然のSFには危うく振り落とされそうになったけど、段々二人を応援する気持ちがうまれた。私は結構好き。
北海道にある夫の実家へ、義姉妹で乗り込む話も良かった。一緒に過ごすのに心地よい自分になれたらいいなあ。
額賀さんの明洞の話も良かった。おさまるべきところへおさまった。
最後の話でポルトガル行きたくなった。なんだろう、読んでいてイメージするポルトガルの雰囲気がすごく良かったな。 -
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タイトルの通り、駅と旅をテーマにした6人の作家によるアンソロジー。
と言いつつもテーマの縛りは緩めで、アンソロジーとしての統一感は中途半端な印象。
始めの2編、『きみは湖』と『そこに、私はいなかった。』は、いずれも若い女性を主人公にした青春小説。他愛もないと言ってしまえばそれまでだが、どことなく尖った感性が仄かに感じられて悪くない。
次の『雪花の下』は、自意識過剰で家族との関係を壊しかけている中年女性が正気を取り戻していくお話。よくある話ではあるが、旅に同行する義妹の造形が絶妙でなかなか面白い。
ここまでは連作の雰囲気が保たれていたのだが、次の『東京駅、残すべし』で一変。ぶっ飛んだ世界観と作