鳥山まことのレビュー一覧
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家はそこで過ごした人々の記憶が積み重なってそこにあるということを、丁寧な描写で伝えてくれる一冊。シームレスに人物が入れ替わる展開も、記憶の積み重なりを感じて心地よく、いつまでも読んでいたいと思える素敵な読書体験でした。
この家のサイズは四間四方とあり、検索すると、縦横の長さが約7.27メートルの正方形で面積に換算すると約16坪(約52.9平方メートル)、32畳分の広さに相当とのこと。圭さん夫婦がこの家を広く感じるか、狭く感じるかで行き違う場面がありますが、このコンパクトさでどのような空間が生まれていたのか、藪さんの設計を(特に大黒柱のあるLDKを)想像しながら読むのも楽しめました。 -
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籐巻の大黒柱や漆喰壁などおもてに見えるものから梁や躯体など直接は目に触れないところ。さらにそれらの経年による味わいだったり、細かについた無数の傷だったり。青年の描く写実的なスケッチを通して、そこにある温度や湿気、匂いまでもが丁寧に描写されていて、まるでその場に自分もいるかのような没入感があった。
この家に住んでいた三代の住人たち。亡き妻を想いながら設計し自身の住処とした薮さん。震災で最愛の友人を亡くしても、実感が湧かないまま17年を過ごし、現在はひとりで塾を営む緑さん。両親の熟年離婚に照らして、夫との気持ちのすれ違いと2人のこれからが不安になる圭さん。家は時の幹。そこから伸びる枝葉は彼らの毎 -
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そうだよな、芥川賞ってこういう感じのやつだった。自分は最近ポップなものばかり読んでいたかも…と思ってしまった。
例えば家についての造形を伝える時、動画や画像の方が隅々まで詳細を手っ取り早く伝えられるのに、それを長々と文字で情景描写するなんて…と序盤は読んでいて思った。ただそれだとやっぱりこぼれ落ちてしまうものがあって、場面をとめて文字で語らないと家にまつわる人々のあれこれは伝えられないかもしれない、とも思った。
大きく何かが起こるわけではないけれど、登場する人達はみな深い優しさみたいなものをたたえているような気がして、そんな雰囲気が最初から最後まで流れていて、本当になぜだか分からないけど涙腺に -
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第174回芥川賞受賞、そして第47回野間文芸新人賞受賞作品
「売物件」の看板が掲げられた一軒の平屋。その家の壁や傷や柱を前に青年と三代の人たちが何を思っていたのか。それぞれの人が交わることはないのだけれど、それぞれの思いをしっかりと受け止めたような気がしました。
まるで家自体が生きているかのように感じた小説でした。家自体の木も石も漆喰も金属も温度や湿度で変化していくことを初めて実感できました。それと同時に、かつてそこに住んでいた三代の人たちのことが書かれていました。なかでも、その家を建てた最初の住人の藪さんの並々ならぬ思いを感じることができました。
家を建てようと思い、逡巡し、形になって -
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芥川賞&野間文芸新人賞のダブル受賞作。
芥川賞は何が良いのかよくわからない、と感じることが多く、村上龍「限りなく透明に近いブルー」、高瀬隼子「おいしいごはんが食べられますように」くらいだったが、これは素晴らしかった。
筆者が建築士ということもあり、冒頭の建物が日に当たる描写からすでに美しすぎる。
いつまでも売れない古い戸建てに侵入し、絵を描く青年。その家が建てられてから住んでいった3人とその家族や関わった人々の想いが、青年が目にし、触れ、嗅ぎ、感じるものとともに蘇っていく。
会話が極端に少なく(ほとんどなく)、地の文がひたすら続く。純文学は文章自体を楽しむというのはこういうことか -
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いまは空き家や雑木林が点在する住宅街。
青年は売り物件の家に入り込み
室内を細かくスケッチしていく。
その家は藪さんが自ら設計し建てた家だった。
藪さん亡き後、家の住人になり塾を開いたのは緑。
緑の後は若い夫婦。
家は受け継がれるも、住人それぞれの接点は建物だけ。
家が語る思い出に読者の私も浸る。
(本作の主人公は家ですから)
藪さんのあとの住人、緑のエピソードが好き。
塾を経営し生徒との時間を静かに過ごす。
深く関らず適切な距離で子供たちを見守る。
大きな事件やハッと驚くような展開があるわけでもない。
それでも心に残る作品になっている。
彼らが住んだ家と一緒に
住人たちの歴史を共有したよ