鳥山まことのレビュー一覧
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ネタバレ住まい手がなく取り壊しを待つ家。
その家もかつては住まい手があった。
薮さん、圭さん、緑の歴代3人の住まい手たちの日常を見てきた家。それぞれの思いが詰まった家。
薮さんは「意匠」を大事にし、自分の心に向き合うつもりで、細部にまで思い入れを持ち、この家を建てた。薮さん亡き後も、薮さんと懇意だった不動産屋が住まい手を選ぶほど、思い入れの強い家だった。
緑は夫と距離を感じている専業主婦。この家で塾を開き、第二の人生を始める。圭さんは、夫とすれ違いを感じながらも、別れないための理由を探していたがいつしかしこりもなくなり、夫の転勤のため引っ越すことになる。
最期は住まい手がなくなり、取り壊しになる家。 -
Posted by ブクログ
P31
人生の全体像を真面目に想像したことなどなかったが 1/3以上の時間を表示した時点でこんなに 無彩色で だらりとしたものになるとは思っていなかった。結婚でもしていれば子供でもできていれば違った色の時間を過ごしていたのだろうか。 一昔前なら誰かに急かされて誰かと結婚して家族を持ったりしていたのだろうか。 恋人を作らなくても子供を作らなくてもある程度 理解ある人に囲まれてしまった 今の自分は誰に咎められるでもなく 肯定をされるでもないが否定もされずに多様性社会に散らばっている 余白の穴にすっぽりとはまってしまったようだった。 はまってしまったことも否定されずにはしごのない 余白の穴の中で自分 -
Posted by ブクログ
本を読んでいる最中の感覚としてこの上ないものをもたらしてくれる小説だった
冒頭一文目から情景に惹き付けられ、その後は文体や、回想から現実(?)への滑らかな繋ぎなどに堪らない心地良さを覚えながら読むことができた
記憶は不確かではあれど、不正確なものではない
取り壊しが目前に迫っている家を見て、青年は家を描き残しておこうと思い立つ
籐の巻かれた柱や白い漆喰の壁を写していくうちに、家に残る熱や湿気から「思い出される」過去の住人の記憶
震災で亡くした友人、塾の教え子、離婚した両親に思いを馳せた先には何があるのか
「家っていうのは時の幹やから」
非常に感動した
目が覚めるようなオチの強さを期待するの -
Posted by ブクログ
改行が、あって2回程度のページが延々と続く、現代の読み物ではあまり見かけない余白の少なさに面食らう。こんなにも美しい景色を、このぎちぎち文字配置でみせるなんて勿体無いと感じる。
視覚的描写のきめ細やかさに対し、人物は簡素で温度を感じられないほど。その熱量の違い、ちぐはぐ感は、第一印象として興味深かった。
薮さん、緑、圭さん、青年。彼らを見つめ「こちら」と言うおぬしはだれだ感と、文字びっしりの中で時間軸がころころ変わる流れに、序盤はだいぶ困惑した。圭さんと脩さんが登場したあたりからだんだんと読みやすくなるものの、どこから目線なのか、なぜこんなにも淡々としているのか、それに気づくのはまだ先。情報 -
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これは!建築の世界とその「建築物としての家」の中に住んだ人々の物語が、作家鳥山まことさんの建築の知識と巧みな文章によって綺麗に交互に編み込まれたような作品!
それを読者の私が「浴びる」体験でした!
この本の直後に直木賞受賞作を読んだのですが、やはりとても良い意味で「人を楽しませよう」とエンタメ要素が強い文学作品の直木賞とは違って、芥川賞は作家の表現したいものを「浴びる」ものだと改めて感じました!
歴史的な建築物を学ばないといけない時期が学生時代にあったのですが、その時から建築について考えたり、理解したりするのが苦手だったので、今回の本でも細かい家の作りとかの描写は正直完全に理解していな -
Posted by ブクログ
その家にはかつてその家を建てた設計士が、次に数学を自宅で教えていた女性が、最後に子どものいない夫婦が住んでいた。
やがて、売物件となり取り壊されることとなった家にかつて設計士を知っていた青年が忍び込み家の中を細部まで丹念にスケッチをしていく。。
スケッチする度に立ち上がるはかつて人がそこに居た情景。。
容赦ない時の流れの中、消えゆく運命の家は人の一生にも似ていて、シームレスに行き来するそこに住んでいた人々の記憶の断片は家が記憶を辿ってるようでもあった。
芥川賞受賞作品。選ばれたからと言うこともないけどその発表記者会見での著者のお話を聞いて是非読んでみたいと思った。
著者もその奥さまも建築 -
Posted by ブクログ
第174回芥川賞受賞、第47回野間文芸新人賞受賞作、ということで早速、手に取る。
著者は建築士だそうだ。
読み進め、読み終えると「時の家」というタイトルが腑に落ちるようだった。
家が建つところから解体されるまで、その家に住んでいた、訪れた四人の人間の記憶、意識が、まるでその家が語り手であるかのように描かれている。
木造の平屋の家。漆喰の壁や籐を巻いた柱。今はもうこのような家は珍しいのではあるまいか。
思わず祖父母の家や、自分の実家を思い出して懐かしい思いがした。
密度の高い詰まった文体と、四人の人間の記憶がスムーズに入れ替わって行く手法は、時間感覚を上手く忘れさせ、思い出させる。
専門的な -
Posted by ブクログ
一軒家に住まう三代の人びとの人生が、当時の時間を遡るように、静かに語られていく。
家を設計した藪さんと、その建築に関わった人々。海外赴任から一人帰国し、家で数学塾を開く女性。両親の離婚を経験し、自身もまた夫との微妙な距離を抱えながら暮らす女性。
それぞれの時間は断片として現れ、家という空間を媒介に、幾層にも重ね合わされていく。
藪さんの「家っていうのは時の幹」という言葉のとおり、家のさまざまな場所に刻まれた記憶は、時を経て三代分が交差する瞬間を生み出す。過去は遠ざかるものではなく、静かに積層していくものなのだと感じさせられ、読み進めるうちにノスタルジックな感情が胸に残った。
すでに実家を出