ホーリー・アップル三冊目。
前に読んだのいつだったかなぁと思って検索したら、ほぼ一年前だったという。
今回はドイルがどんな幼少時代を過ごしてきたのかが書かれていて、語っているドイルの口調が淡々としている分、読んでいる方は胸が痛かった。
ドイルの弱い…というか、無意識に自己暗示をかけているのかもしれ
...続きを読むないと気付くハリー。
その後のハリーが恋人の言葉を思い出す辺りと、二人のやりとりにじわりと甘い熱が。
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ハリーの頬を両手で挟んだまま、ドイルが言葉を続けた。「愛してる」
その刹那──ハリーの心が空っぽになった。耳に木霊する「love」の響きだけが急速に心を満たす。
「ハリー?」
琥珀色の眼が、驚いたように大きく開いた。頬を挟んでいた右手をそっと動かし、指先でハリーの眼の下を撫でる。指先についているのは──透明な液体だ。
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通じる相手が腕の中にいる、そんな幸福に満たされたハリーと、それを満たしてくれたドイルの関係がこれからどう深くなってくるのか、すごく気になる所です。
推理の中に絡まってくる人間模様に、やりきれないなぁと感じつつ、それもその時代にあった事なんだろうと。
偏見や差別、そして親子関係に、恋人関係。
それが過ごしていく中で、どうしても存在するものなんだな、と。
他にも、前の事件で出てきた人物や、警察の同僚との掛け合いも面白かったり、微笑ましかったり。
ここを読みながら甘い痛みを感じ、なんか悶える…と一人でにまにましてました(笑)。
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「……ごめん。ちょっと……数分待って」
ハリーはハンドルから右手を離し、うつむいて胸を押さえた。そうしなければ涙がこぼれそうなほど胸が熱かったのだ。どこかへ旅行しようといった休暇の計画を立てるのも久しぶりだ。「……感激して……。きっと久しぶりすぎて、免疫がなくなってるんだよ。ごめん。勤務中なのに」
「いや……今のは俺が悪い。勤務中は意識して切り替えると約束したのは俺だ。うかつに話題にすべきじゃなかった」
ドイルも珍しくうろたえたようだ。「だが、嬉しいよ」
「……僕も嬉しい。あ、でも、これと刑事昇格の件は」
「別なんだろう」
打てば響くように後を続けながら、ドイルが笑った。
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ドイルの口調や声のトーンが想像できて、ちょっと笑ったシーンでもあります^^
ラストを読んだ時はハリーの返答に、彼らしい答えだな、と。
あと、読んでいる途中に。
「それだけしか経ってないのかっ」
と呟かずにはいられなかった。
まだ三冊目なので、これからの展開に期待&見守る気持ちが。
じっくりと想いを育んでくれたらいいな。
他は、文章の書き方にちょっと注目も。
柏枝さんの作品は、色々勉強になります。
そして、毎回槇えびしさんのイラストにも素敵でv
お気に入りのカットは、ついつい何度も見ております^^
今回の、「額をつけて微笑む二人」が、本当に作品自体を物語っていると感じました。