水野太貴のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ話者が交替するまでの発話を「ターン」、話者の交替を「ターンテイキング」として、ターンテイキングにかかる平均200ミリ秒の間にどんな処理が行われているのかを、言語学的な観点で調べていく。面白かった。
「相手にうまく意図が伝わらないのはしょうがない」と言っていて、安心というか、諦めというか、「そうだよな」という気持ちになった。文法やことばの意味など、伝える側の言語化も、理解する側の解釈も、かなり不安定なのだ。
言語以外の情報もある。ジェスチャー、間、声音、フィラーについて書かれている。
特にフィラーについて、「えーと」「あのー」「うーん」の違いの解説が面白かった。「えーと」は「そもそも伝える内容を処理している段階」、「あのー」は「その伝え方を考えている段階」、「うーん」は「えーと」と代替可能な場面もあるが、「話者がその課題を必ずしも解決できるとは限らないと思っているときに出る」らしい。これを息子(小5)に話したら面白がっていた。
「ことばとジェスチャーの相互配慮」、終章の「自閉スペクトラム症の子どもは方言を話さない」という部分も好き。目から鱗である。
コミュニケーションの「普通」を疑い、「言語化に対する過剰な信頼を相対化できる学問」が言語学であると持っていく。「自分と出会い直す」という言葉にはピンと来なかったけど、人文学を自然科学と比較して「ヒトを中心的な対象」とした学問で、「自分とは異なる人への理解を深められる」「自分がまったく意識していなかった常識に気づける」学問だというのに首を縦にブンブン振った。
あとがきに「この本は問いが大きすぎるのだ」とあるけど、その通りだと思う。でもだからこそターンテイキングを中心に俯瞰的に見られたのであって、興味を持った部分はそれぞれで好きに参考文献などで深めればいい。個人的には言語学の入り口として、いい本だなと思う。 -
Posted by ブクログ
会話って、思っていた以上に精密にできているんだなと驚いた。
人は会話のターンをわずか0.2秒ほどで交代しているという。1秒の沈黙でも違和感が生じるという話には「たった1秒で?」と思った。だけど、考えてみれば「えーと」「うーん」と言いながら話すのも、違和感を生じさせず、ターンを保持するための発話なのかもしれない。
「ネコ」の意味を説明できないという話も面白かった。経験から頭の中に作られた「ネコ」の集合体は人によって少しずつ違う。それでも私たちは、相手も似たものを思い描いていると見込んで話している。現実には存在しないものまで言葉で共有できて、言語ってすごい。
難しくて理解しきれないところもあったけれど、いつもの何気ない会話が興味深くなった。 -
Posted by ブクログ
乳幼児期の子供の言い間違いをイラストと共に解説している。
期待していたより解説の量が少なく、あくまで言い間違いの事例集であることに留意したい。
しかし、人間がどう言語を習得していくのか、その過程が垣間見ることができた。
特にあとがきで触れられている「言語の経済性」についてはなるほどと思わずにはいられなかった。
なぜ同じ言葉に複数の意味があるのか。それぞれの事象を表すのに新しい単語を作っていては単語を覚える量が無限に増えてしまう。そこで多義語にすることで脳への負担を減らし、経済性を高めているのである。
子供の言い間違いは時に大人の発想を超えるものがある。言い間違いを正すのではなく、ときに子供の柔軟な発想を伸ばす方向へ正しても良いのではないかと思える本でした。