立花幸司のレビュー一覧
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哲学史入門シリーズの最新刊。
各シリーズ同様、倫理学の主要な理論の第一人者へのインタビューによるライブ感のある哲学史入門講座となっている。同時に、倫理学を学ぶことの意義を探究する構成だ。今回は倫理学がテーマであり、隣接する分野も含め功利主義、正義論、徳倫理学、ケアの倫理を扱う。
特に徳倫理学が興味深かった。
正直倫理学の中でも馴染みのない分野で、実際に比較的新しい学問分野であるという。
要するに、功利主義や義務論などのように最大多数の最大幸福や規範への遵守という倫理の評価を外部へ依拠するのではなく、「徳」を備えた人格そのものに照準を当てる理論である。理想を追求する姿勢を感じられ、さわやかな印象を受ける。
しかしながら、この理論を達成することの困難さは日々私たちは痛感している。
立法国家で暮らす日本国民としては、大前提として規範がありその下で個人的な暮らしを営んでいるという感覚がある。「徳」が個人の行動原理として影響を及ぼせる範囲には、一定の限界があるのではないか。そもそも「徳ある人」とはどのような人物を指すのだろうか。
本書には「徳」に基準を設ける方針も紹介されており、例として日本における道徳教育の内容項目が紹介されている。そこに挙がっている項目に「公正」や「国にへの愛する態度」が含まれていることに、違和感を感じる。
朱 喜哲「〈公正(フェアネス)〉を乗りこなす」で指摘していたように「公正」という資質を個人に過剰に依拠する姿勢は問題含みである。この観点から見ると、日本教育における「徳」項目には、個人の内面的資質として育まれるもの(これが本書の定義における「徳」)と、本来は社会的規範として共有されるべきものが混在しているように思われる。これは、誤った個人非難に繋がりかねないと危惧する。
その他理論についても、各研究者の視点と理論における問題点を詳らかに説明してくれている。決して自分の研究分野を単に称揚するのでなく、批判的な指摘も含まれていることに本書の信頼性の高さを感じた。
過去シリーズとあわせて、最前線の研究動向に触れたい人や、用語の暗記中心の学習に物足りなさを感じている哲学初学者におすすめである。 -
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共通する章を持ちながら、その結末から『政治学』の方へ誘導する『ニコマコス倫理学』とは異なり、人生の幸福を説いて終わる『エウデモス倫理学』は、その成立時期が争われているそうです。
先に『エウデモス倫理学』をものしたアリストテレスが『政治学』へ導く必要性を感じて『ニコマコス倫理学』を顕わしたのか、『政治学』への発展を不要とする別パターンとして『ニコマコス倫理学』の後に『エウデモス倫理学』を顕わしたのか。
『エウデモス倫理学』がアリストテレスの自作であることが明確になった今、先後が問われることとなったとのことです。
いずれにせよ両者の顕わす価値はそれぞれにあるので、どちらも学べるのであれば、学んでおくのが良いと思います。
古今、何人がこの本を読んできたことでしょう?
その末端に繋がることができた喜びに心が震えます。
わたしの推しはアリストテレス。
在りし日のテレスの姿をいろいろ見てみたい♡
〔作品紹介〕
下巻では、快楽について、「すぐれた友とは『もう一人のその人』である」とする友と愛について、また幸運と幸福について、そして「善美の徳」について考察する。いずれも善く生きるための倫理学書でありながら、『ニコマコス倫理学』とは異なる結論が導かれる本書の解釈そのものについて、また『ニコマコス倫理学』に対する位置づけなど、世界的な論争も踏まえた詳細な解説が付く。 -
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2300年前の人に教えを乞うことができる喜び。
万学の祖のアリストテレスは万人の師でもありました。まさにアリ師トテレス。
幸せな人生とするために何を大切にし、どう生きれば良いかを教えてくれます。
プラトン(ソクラテス)の対話編とはことなる緻密な論理構成は、近代哲学の素地となっています。
シンプルで現実的。神に祈るのではなく自身の行動で人生を切り拓いて行く。これぞ哲学。
素直に感動しました。迷った時に立ち戻りたい基地をもらったような安心感を得ました。
わたしの推しは、アリストテレス♡
アリストみのりと名乗りたいほど♡
〔作品紹介〕
アリストテレスの真作であることが確立され、近年、その評価、価値が高まっている『エウデモス倫理学』は、『ニコマコス倫理学』と並ぶアリストテレス倫理学の主著である。幸福について、また幸福のための徳について考察が進められ、その幸福を実現するうえで重要な「善美の徳」という「完全な徳」をどう身につけるかが議論される。『ニコマコス倫理学』とも重なる共通の部分とその相違、独自性について詳細な解説を付ける。 -
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上巻では人柄に関す徳の話が続いたが、
下巻では下記の内容でバラエティに富んでいる。
6章「知的な徳」7章「欲望の問題」
8~9章「愛について」10章「幸福論の結論」
6章では魂自身の性向として
「技術」「学問的知識」「思慮深さ」「知恵」「知性」
の五つの性向に分けてそれぞれ解説している。
正しい行動のためには「思慮深さ」が必要だが、
「思慮深さ」は全てを支配下に置くわけではなく、
各々の性向は別物であるという結論を出している。
7章では抑制のなさと快楽を追及して、
抑制の無い人の快楽には苦痛が伴うが、
美しいものを愛したり、立派な行動をしたり、
という快楽には苦痛が伴わないと結論を出している。
8~9章はちょっと毛色が変わり愛について説き、
人が人を愛する理由を「有用さ」「快楽」「人柄」
の3つに分けて、「人柄」が最も優れたものとし、
善き人々の間でお互いに善を願い合うのが、
愛として完全なものだという結論を出している。
10章はまとめとして幸福は「徳に基づく生活」
であるという最初の結論に立ち返り、
そのままそれを実現するための政治の話が展開され、
アリストテレスの別の著作である「政治学」に続く。
現代でも人間そのものの本質は変わっていないので、
どう生きるか考えるのに大いに参考になる講義だろう。
特に8~9章は内容もそれほど難しくないため、
色々な人に読んで欲しい内容である。 -
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アリストテレス先生「幸せって何だっけ」の巻
「幸せとは何か?」というテーマの講義だが、
早々に「徳に基づいた魂の活動」と結論を出している。
徳とはある性向における中間性のことであるとし、
例えば「勇気」なら超過すると「向こう見ず」になり、
不足すると「臆病」中間が「勇気」であるとしている。
「向こう見ず」は勇気に似ているが、
必要の無い時は勇敢に振る舞い、
本当に恐ろしいものに耐えられない。
「勇気」は普段は穏やかだが、
必要な時は恐れるべきものにも立ち向かう。
「臆病」は恐れる必要の無いものでも恐れる。
このように様々な性向に関して検証していっている。 -
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大学受験、落ちた第一志望の英語論文のお題はこうだった。
「宇宙開発に賛成か、反対か、理由を述べて説明しなさい」
日本語でどちらの立場の理由も思いつかなかった。宇宙開発って反対する人いるの?!そっか、いるかあ、お金かかるもんねえ。など試験中に初めて考えをめぐらせた。
英語の問題ではなく、自分の教養の浅さで落ちたのだと突きつけられた気がした。
なんとなく、人生における一つの汚点だから
そのお題自体について考えてこなかった。
だからタイトルを読んだとき、買うことを即決したのだと思う。
就職活動のときに、手に職の理系が羨ましいと思った。文系はなんのためにいるの?と、文系の自分に思っていた。
でも大学教授が言うことには、理系が開発した技術を、どう社会に反映させるのかは、文系が決めるのだ。だから文系は幅広く一般教養を身につけて、社会としての判断を誤らないようにしないとダメだと。
本を読んで、AIにしても宇宙開発にしても同じ構造なのだと分かった。
技術をどう使って、世界平和を実現するか?人類繁栄を実現するか?
だから、宇宙開発の哲学=何のために?そしてその平和利用の平和って?は関心を持って動向を注意されるべしものなのだと分かった。
読んで良かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜メモ〜〜〜
地上への応用
・宇宙隔離空間における精神ストレスへの対処方法の宇宙医学、心理学の知見は、例えば感染症の隔離やチリの採掘現場崩落事故などに生かされている
・避難所や老老介護など、似たような環境は身近にある
日本の宇宙基本法における宇宙開発の目的
・宇宙の平和的利用
・国民生活の向上
・産業振興
・人類社会の発展
・国際協力
宇宙の平和利用
・宇宙開発は人類のロマンや科学的な真理探究で、エンジニアにとってはそれ自体に心掴まれるものだ
・一方で政治家にとっては、国家安全保障のためのツールの一つ
・呉越同舟で発展してきた歴史
・宇宙関連技術はドゥアルユース。GPS、気象の衛星は情報収集にも使える。
・だから、どれが平和利用なのか定義は難しい
・宇宙開発に関して、倫理観が大切になってくる
宇宙植民地化
・傲慢で、また手付かずの惑星の素晴らしさを汚す(美への鈍感さ)の点で批判する意見
・では地球を脱しないと人類が滅亡する場合は?人類が滅亡した方が美しいとするのか?
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哲学史入門シリーズの4巻目で、「倫理学」を取り上げた巻。「功利主義」「正義論」「徳倫理学」「ケアの倫理」を解説している。これまでの各巻同様、各章で編者の斎藤哲也氏が基礎知識と読みどころを紹介して、指南役の研究者にインタビューするという形式。個人的に興味を持って読んだのは、「功利主義」」と「正義論」。近年テック長者」などが語る「効果的功利主義」への流れも理解しやすい。また「ケアの倫理」は耳慣れない言葉だったが、倫理学を実践に移すにはこういう考え方のほうが有効かもしれないと思わせられた。入門書として、わかりやすく、全体像が把握できる。
【目次】
序章 倫理学に入門するとは何をすることなのか(古田徹也)
第1章 現代に生きる功利主義―誰もが幸福な社会を目指して(児玉聡)
第2章 義務論から正義論へ―カントからロールズ、ヌスバウムまで(神島裕子)
第3章 徳倫理学の復興―善い生き方をいかに実現するか(立花幸司)
第4章 なぜケアの倫理が必要なのか―「土台」を問い直すダイナミックな思想(岡野八代)
特別章 「地べた」から倫理を考える(ブレイディみかこ) -
Posted by ブクログ
『哲学史入門4』を読みました。
今回は哲学史の中でも、倫理学史や心理学に近い内容が多く扱われているのが印象的でした。確かに哲学科は女性が少ないイメージがありますが、心理学科には女性が多い印象があり、その点とも重なる話だと感じました。
ケアの倫理の説明で出てきた「ハインツのジレンマ」は特に興味深く印象に残りました。また特別章では、2024年のイギリスの「今年の言葉」に「脳腐れ」が選ばれたことや、ユーザーのプロファイリングによってSNSが質の低い内容に偏っていく問題などにも触れられており、やや強い表現を使いながら現代社会への批評も展開されている点が印象的でした。 -
Posted by ブクログ
4冊目もとても読みやすく重要なポイントがまとまっているので、現代の西洋での倫理学を理解したい方には良い内容である。
個人的には徳倫理学の章が興味深かった。カントなどの義務論は、行為の是非を問うが、徳倫理学は人格を問う。それはそうだと思うのだが、人格を重視するのであれば、例えば、西洋ではゲーテやシラーなど、教養を高める教育思想があるし、日本の報徳思想や心学など、人間性を高める伝統的教育がある。それらを学ぶことの方が有意義だと思えてきた。
また、徳を重視し過ぎると軍国主義になるや、慰安婦の国家賠償の問題からケアを考えるなど、事実を無視した左翼思想が出てくるところは残念である。 -
Posted by ブクログ
面白かった。
哲学の本を読んでると「そんなこと延々と考えてどないすんねん」と思うことが多いけど、まあ倫理学は考える価値があると思う。万が一、皆が納得できる形で正しさをルール化できたら、立法やらなんやらがすごくスムーズになると思うので。そんな夢を追って思考を深めているならカッコイイと思う。
◇
とはいえ、やっぱり倫理は何かしらの理屈で説明できるものではないのでは、というのが読み終わっての感想かもしれない。
徳のある人物を目指す徳倫理学や、現場レベルの判断を問うケアの倫理は、結局「皆が心に手を当ててやっていくしかない」的な発想やと思うし、まあ実際そうよな、という気持ちもある。 -
Posted by ブクログ
アリストテレスの説明の仕方は、当時の文化、価値観に即したものであるが、読んでいくと、「現代と一緒じゃん」となる価値観がほとんどだ。「人は愛するよりも愛されることの方が嬉しいと思っている」とか「友人こそ最も重要である」とか。
「もっとも」と言う単語を多用しすぎている気がしていて、何が最も(1番)大切なのかが明確になっていない。加えて、少し説明が細かすぎて冗長でもある。本書は哲学本と言うよりは自己啓発本に近いのかなと感じており、もし哲学本だとするならば、相当読みやすいなと感じた。
「アリストテレスもそう言ってた」という引用の仕方で、自分の主張の正しさを補強するのもありなのかもしれない。