楊逸のレビュー一覧
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まず、中国の大学生活の様子や日常生活の描写に引き込まれた。ムンファンやシャンフェイも農村出身で大学を卒業したこともあって、なんとなく二人を連想して読んでいた。特に英露の小柄でかつしゃんとしていて、逞しさをもつ姿にはシャンフェイが重なって見えた。
中国の民主化を目指す学生運動、政治運動が物語の核にあったけれど、国を愛する、国を動かすという前に自分の目の前の生活や家族、友人を大切にすること、目を向けること、愛すること、守ることが大切さではないかという投げかけが発せられているように感じた。理想と現実があって、理想ばかりを追い求めるのは孤高の狼。人が生きるということは、理想の前に現実、目の前の生活があ -
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著者は中国人女性で、23歳まで日本語は全く話せなかったという。
だが、この本で文学界新人賞を受賞、次の本で芥川賞を取るのだ。
「ワンちゃん」という女主人公は中国名が「王」なのでそう呼ばれているが、日本人と結婚したので木村さんでもある。四国の農村の男性と、中国人女性とのお見合いを斡旋している。
人物や背景の描かれ方は、両方の国を知っている彼女でないと描けない。
歴史や時代の流れも読めて面白い。
「人民服を脱ぎ捨てて」人々がカラフルな服を着始める様子なども、その時住んでいたからこそ、描写できるのであろう。
日本人と結婚した中国人の様子も、中国人の立場から見ることができる。 -
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『ピラミッドの憂鬱』は、中国の若者事情(一人っ子政策)がリアルに伝わって来ました。
それぞれの親の状況を知らされても、お金を使い続ける石南羽(せきなんう)、
逆に、決意を固め帰国する鄭楓果(ていふうか)。
親のことを一人で引き受けなくはならない今後、それぞれがどう変化して
行くのかな~?どちらかといえば、鄭楓果に期待をしたいです。
表題作の『陽だまり幻想曲』、主人公の国籍は明記されていないので、
そこがまた想像を広げてくれました。
マトリョーシカのように、並んで登場してくる隣家の子供たちも、
可愛らしい姿で飛び回っているのが、目に浮かびます。
子を思う親の気持ちは、切実だと感じました。
で -
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芥川賞受賞作の前に書かれたデビュー作でしょうか。
日本語の表現が面白い箇所があるのは、学習された言葉だからなのですね。《すき・やき》では、日本語が上手になっていて分らなかった初期の文章が興味深いです。
働き者のワンちゃん、中国でも日本にきてからも苦労の多い生活。
前夫とその間に出来た息子に働いたお金をどんどん吸い取られていくのが可哀相です。現在の日本
文庫では併せて《老処女》というダイレクトなタイトルの作品も読みました。こちらは、作家の意図は分りませんが、45歳の高学歴中国女性が日本の大学で博士号と女の幸せを求めて葛藤する様子がコミカルに感じられて面白かったです。 -
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楊逸といえば一時話題になっていたので読んでみた。
しかし、序盤からあまり惹かれる点がないまま、さらっと読み終えてしまった。
「カレチ」という言葉に私が拒絶したくなったのも惹かれなかった要因のひとつだけど、気になったのは
人物描写の掘り下げの甘さ。
パート主婦をしている地味な主人公と奔放に生きる派手な友人という組み合わせがありきたりにしか思えなかったのだ。
こうした組み合わせはこれまであらゆるフィクションでごまんと描かれてきた。
だからこそ、ちょっとした行動や心理描写で「地味」や「派手」といった大雑把な言葉では捉えきれない登場人物の内面を読んでみたかった。