楊逸のレビュー一覧

  • 時が滲む朝

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    まず、中国の大学生活の様子や日常生活の描写に引き込まれた。ムンファンやシャンフェイも農村出身で大学を卒業したこともあって、なんとなく二人を連想して読んでいた。特に英露の小柄でかつしゃんとしていて、逞しさをもつ姿にはシャンフェイが重なって見えた。
    中国の民主化を目指す学生運動、政治運動が物語の核にあったけれど、国を愛する、国を動かすという前に自分の目の前の生活や家族、友人を大切にすること、目を向けること、愛すること、守ることが大切さではないかという投げかけが発せられているように感じた。理想と現実があって、理想ばかりを追い求めるのは孤高の狼。人が生きるということは、理想の前に現実、目の前の生活があ

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    2020年01月09日
  • ワンちゃん

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    日本語を母国語としない人が書いた、芥川賞を取った、その2つの知識だけで読み始めた。読み終わって感じるのは、現代の流れの中で「幸せ」を求めて生きる女性の、強さと弱さ。日本に生きる中国人の女性の目線というのは新鮮だった。
    中国と日本のギャップより、そんなものは些細な話で、もつと女性と男性、世代間の違い、働く人と働かない人、自分と他人、そういうところの差が浮き彫りになる小説だった。
    「老処女」の方は、読後感が暗いな…

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    2018年01月03日
  • エーゲ海に強がりな月が

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    エーゲ海のきれいな島で仲良くしているカップルがうらやましいと、思っていたけど。
    そりゃあ、いろんな背景があるよね、言われてみればだけど。

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    2017年08月18日
  • エーゲ海に強がりな月が

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    夫は出張が多く1人でいることの多い「私」の友人・桂子は大変な美人。その桂子が恋をした相手は父親ほどの年の離れた人で、彼氏のようであり父親のようでもあることから「カレチ」と呼んでいる。桂子は度々カレチについて語るがそのカレチからは常に肉体関係を拒まれている。そんな2人はギリシャ旅行に出かけ、桂子にはフィルという新たな男性の影が。桂子の恋の行方も気になるが、実は彼女に影響され、耐えるばかりの「私」の夫婦関係にも影響を与えていた面白さがある。最後のカレチの告白もジワジワくる。これだから大人の恋愛はおもしろい。

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    2017年08月12日
  • エーゲ海に強がりな月が

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    楽しくなっちゃった。ハッピーエンド、気楽に読める恋愛小説っていうのもいいな。止まない雨はない。下がったら上がる、上がったら下がる。いい時も悪い時も満喫することができる人とできない人がいるのよね~。どっちが幸せということではなく、そういうものだということ。

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    2017年06月29日
  • ワンちゃん

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    姜尚中さんの「姜流」に楊逸さんの記事が載っていて
    はじめてこの作家を知り、興味をもったので読みやすそう
    なところからと思い、本書を選んだ。
    スルスルと惹きこまれてしまい、感情移入もめいっぱいして
    「ワンちゃん」ではワンちゃんと土村さんが一緒になれたら
    いいのに…と思い、「老処女」では時嬉(シューシー)が中村先生
    とくっつかなくてガッカリした。楊逸さん上手いな。
    中国と日本で文化も違うのにどちらの主人公にも共感した。

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    2013年08月12日
  • ワンちゃん

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    著者は中国人女性で、23歳まで日本語は全く話せなかったという。
    だが、この本で文学界新人賞を受賞、次の本で芥川賞を取るのだ。

    「ワンちゃん」という女主人公は中国名が「王」なのでそう呼ばれているが、日本人と結婚したので木村さんでもある。四国の農村の男性と、中国人女性とのお見合いを斡旋している。
    人物や背景の描かれ方は、両方の国を知っている彼女でないと描けない。
    歴史や時代の流れも読めて面白い。
    「人民服を脱ぎ捨てて」人々がカラフルな服を着始める様子なども、その時住んでいたからこそ、描写できるのであろう。
    日本人と結婚した中国人の様子も、中国人の立場から見ることができる。

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    2013年05月16日
  • 時が滲む朝

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    ネタバレ

    天安門事件については、かつて中国語を教えてくれていた先生からチラッと聞いていましたが、こんな感じで動き始めたんですね。
    たまたま先日のTVタックルで中国のことを取り上げていましたが、民主化の道は遠いのかなあ。
    人口が多いから共産党って、なんかヘン。

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    2013年04月03日
  • 時が滲む朝

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    美しい日本語で描写したいのだろなあという意図はとてもよく伝わって来た。これを書いた人が日本人だったらきっと受賞できないだろう。でも日本人だったらきっとこれは書けないだろうから、それでいいのかなとも思う。

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    2012年10月01日
  • 陽だまり幻想曲

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    ネタバレ

    外観は古いが中はきちんとリフォームされた一軒家に引っ越し

    無口で寡黙な夫と、もうすぐ三歳になる息子との生活で

    一人息子に兄弟を作りたいと意気込むなか、

    子供が6人もいる隣人から聞こえてくる、賑やかな団欒と戦場のような喧騒に
    心をはずませ時に驚いていた矢先に起きたこと。

    ラストこわい(^o^;

    他短篇
    留学生の男子、自分の力で日本で就職し働く楓果と
    彼女を作り親の金で道楽する南羽

    どちらが幸せなのか、
    ほしいけど届かない願望を、他人はいともたやすく手にすることができる
    虚しさと苛立ち

    どっちもおもしろーい)^o^(

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    2012年08月19日
  • ワンちゃん

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    「ワンちゃん」も「老処女」も、中年女性の恋心がやりきれなくてつらい話だった。
    芥川賞の受賞作も読んでみたい。

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    2012年07月25日
  • ワンちゃん

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    旦那と姑に仕えながら、農村の男たちを中国に連れて行き、集団見合いをさせる中国人女性ワンちゃんを描く表題作と一生独身で行くことを決心したものの大学助教授と出会いにときめきを覚えてしまう中国語講師を描く「老処女」の2編の短編集。2編に共通しているのは、主人公が文革の中国に生まれ、日本には住むものの故郷へのしがらみを捨てきれないということ。中途半端な人生を生きている主人公を描いているせいか、結末や読後感もなんとなく中途半端になってしまっている。ただ、小説としての完成度は高いと思う。設定も面白い。

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    2011年09月19日
  • 時が滲む朝

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    同世代の中国人が、意のままにならない挫折に翻弄されつつ、日本と中国の間に心を漂わせながら暮らしていく日常。
    視点の不安定さが少し気になるが、昨今の日本人の芥川賞候補者には決して書けないような、写し出される風景の大きさが選考委員の感性に訴え、受賞したものであろう。

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    2018年10月14日
  • 時が滲む朝

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    中国人が芥川賞を受賞したというので興味があり読んでみた。思っていた以上によかった。89年の天安門かぁ。90年に大学に入ったのだが、その時まだ中国への留学禁止の貼り紙がついこの前のようだ。

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    2011年03月05日
  • 陽だまり幻想曲

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    『ピラミッドの憂鬱』は、中国の若者事情(一人っ子政策)がリアルに伝わって来ました。
    それぞれの親の状況を知らされても、お金を使い続ける石南羽(せきなんう)、
    逆に、決意を固め帰国する鄭楓果(ていふうか)。
    親のことを一人で引き受けなくはならない今後、それぞれがどう変化して
    行くのかな~?どちらかといえば、鄭楓果に期待をしたいです。

    表題作の『陽だまり幻想曲』、主人公の国籍は明記されていないので、
    そこがまた想像を広げてくれました。

    マトリョーシカのように、並んで登場してくる隣家の子供たちも、
    可愛らしい姿で飛び回っているのが、目に浮かびます。
    子を思う親の気持ちは、切実だと感じました。

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    2011年02月21日
  • ワンちゃん

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    日本語を母語としない初の芥川賞作家・楊逸のデビュー作である「ワンちゃん」と「老処女」の2編が入っている。どちらも頑張りやの壮年中国女性。ちょっと泥臭さがあるけれど、それがまた真実味があっていい味を感じる。どちらかというと2編のうちでは表題作でない「老処女」のほうがよかった。

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    2011年02月16日
  • ワンちゃん

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    芥川賞受賞作の前に書かれたデビュー作でしょうか。
    日本語の表現が面白い箇所があるのは、学習された言葉だからなのですね。《すき・やき》では、日本語が上手になっていて分らなかった初期の文章が興味深いです。

    働き者のワンちゃん、中国でも日本にきてからも苦労の多い生活。
    前夫とその間に出来た息子に働いたお金をどんどん吸い取られていくのが可哀相です。現在の日本
    文庫では併せて《老処女》というダイレクトなタイトルの作品も読みました。こちらは、作家の意図は分りませんが、45歳の高学歴中国女性が日本の大学で博士号と女の幸せを求めて葛藤する様子がコミカルに感じられて面白かったです。

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    2010年08月17日
  • 中国仰天事件簿 欲望止まず やがて哀しき人々

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    ご当地で起こった事件を同じ中国人である作者が解説する形式。就職難民に対する詐欺や兄の愛人を妻にさせられた人とか結構酷い事件が多い。被害者、加害者共に生き抜こうとする力は善悪抜きにして感じられる。

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    2024年05月09日
  • 時が滲む朝

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    中国の近代をさっと小説内で学べる。
    民主化がなにか分かっていないのに民主化運動にのめり込んでいた、というあたりは学生運動あるあるなんだろうなぁ、、、。

    足を踏み外したのが学生運動そのものではなく、飲み屋でのケンカってあたりもリアル。

    面白かったけど、歴代の芥川賞に比べるととてもシンプル。この題材を等身大で書ける希少さに賞が出た感じかしら。

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    2024年02月06日
  • エーゲ海に強がりな月が

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    楊逸といえば一時話題になっていたので読んでみた。
    しかし、序盤からあまり惹かれる点がないまま、さらっと読み終えてしまった。
    「カレチ」という言葉に私が拒絶したくなったのも惹かれなかった要因のひとつだけど、気になったのは
    人物描写の掘り下げの甘さ。
    パート主婦をしている地味な主人公と奔放に生きる派手な友人という組み合わせがありきたりにしか思えなかったのだ。
    こうした組み合わせはこれまであらゆるフィクションでごまんと描かれてきた。
    だからこそ、ちょっとした行動や心理描写で「地味」や「派手」といった大雑把な言葉では捉えきれない登場人物の内面を読んでみたかった。

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    2022年12月11日