楊逸のレビュー一覧
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外から見る中国、ニュースで知る中国、観光で来日している中国人の方、そういった面からしか知らなかったけど、この本を読んで、中国内部で一般の中国人たちがどんなことを考えどのように行動していたのか初めて知りました。
そして、遠い存在だった中国が、近く親しみを感じる存在になりました。
東欧諸国のようにうまくいけば良かったのに、中国での民主化はいくら頑張っても果たせぬ夢だったのですね。さぞ無念だったでしょうね、、
しかし、甘先生に届いた息子さんからの手紙に表れているように、家族を二の次にしてまで取り組むことではない、、主人公、浩遠はそこまでしなくて良かった。
「あとがき」に記された著者の思いに触れ、さらに感動が深まりました。 -
Posted by ブクログ
読書開始日:2021年10月5日
読書終了日:2021年10月7日
所感
読みやすく、かつ面白く、好きな作品。
大学生活とその後の生活で大きく2つに分かれる。
学生運動や中国の政治について無知な自分にとって、勉強になることばかりであった。
学生時代を思い返すと、「血より濃いもので、まるで火を噴く油」のような想いが湧き上がる経験はなんどかしたことがある。
危うい野生の感情。
そこに大義が交わることで、自分の思想を過信し大きな事件を引き起こした。
自分も熱中したことが収まる範疇だっただけで、主人公と同じ大義をもったらおなじ行動をしていたかもしれない。
主人公が日本に移ってからも面白い。
主人公も、主人公のまわりにもずっとつきまとうのはいつだって、国への愛か、手に届く範囲への愛か、その是非。
このバランスをうまく取れる人はおよそいないと思う。
ラストシーンに、主人公のこれまでことへの折り合いがこれでもかと詰め込まれている。
かなり好きな作品。
たまの表現がかなりかっこいい。
好きな文をひとつ。
この拝観社会に生きる人間には理解できない狼の孤独
根拠地
苦労によって刻まれた目尻の皺一本一本に、洗い落とせないほど黒ずんで溜まった時の色
怒髪天を衝く
有人が増えるとまた新しい世界もひとつ増えていく
労働改造
愛やら何やらの、腐敗した資本主義の情調に危うく腐食される
胸に沸いているのが、血より濃いもので、まるで火を噴く油
でも好きになる権利くらいあるよ
目には野生が光った
秒を数え、狭い窓から漏れる光で時間を憶測してすごす日々である。
刃物の様な隙間風をつまみに
苦渋ばかり舐めてきた浩遠は、初めて心の底からほんのりとした甘みを味わうことができた
梅はなんにも言わずにっこりとかよわそうにわらった
餃子をお腹にいれたければ、まずその不満を出さないことには爆発してしまう。
ビザ日本優遇
革命家は孤独
お腹いっぱいに食べさせるってことは大変なことだ
土地を失って支援金や寄付金などで生きる詩人には閃きも、何も生まれない
この拝観社会に生きる人間には理解できない狼の孤独
妻と息子も顧みることができない、そんな人が国を愛せるだろうか。
じゃ、たっくんのふるさとは日本だね
もう帰りましょうか。 -
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南モンゴル出身の楊海英教授、ハルビン出身で芥川賞作家の楊逸、櫻井よしこの中国の覇権主義に関する鼎談。
モンゴル、チベット、ウィグルでの残虐なジェノサイド、オーストラリアでのサイレントインヴェジョン(中国人富豪の政治家、大学への多額な資金提供による親中国派拡大策)
中国政府は大学関係者を、自由で解放的な学問研究と戦う戦争従軍者と認識しているとの指摘もある。
日本でも2500人の中国人留学生が在籍する早大では中国政府にそぐわない発言をした教授を反動教授と弾劾した例も語られる。読み進む内に中国の地球規模での侵略はコロナ同様に既に各国の肺に浸潤しているのではと不安に襲われる。 -
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第139回芥川賞受賞作品(2008年)。
1988年の中国民主化運動に参加した主人公・浩遠と相棒の志強が辿った高揚と挫折と再生の物語。
学生として参加した民主化運動と結果としての天安門事件。そして、全てが無に帰してもなおこだわり続ける民主化への想いに反して、経済大国化への道へ舵を切った中国。見切りをつけて生活に商売にいそしむ人々が増える中、家族と生活を維持していかなければならなくなった主人公・浩遠の葛藤もここにはじまる。
表現の技巧には多少のぎこちなさを感じるが、広大な大地と清々しい朝の景色の描写は読者にリアルな自然美を感じさせてくれる。
主人公たちの転機となった場面にはもう少し膨らみが欲しいところだが、逆に中編ならではの物語進行のテンポの良さがあって、時が経つにつれての主人公・浩遠の言いようのない桎梏がストレートに伝わってくる感覚はなかなか良かった。
また、「音」の感覚が十二分に取り入れられていて、早朝に湖へ向けての叫びや、宿舎でこっそり聴いたテレサ・テンの歌など、学生ならではの雰囲気を思い出させてくれるような感覚にも魅せられた。それに、効果的に挿入される中国詩などもぐっと心に迫ってくるが、なによりも中盤以降に繰り返されるBGMであり、主人公再生のキーワードでもあった尾崎豊の「I LOVE YOU」は作品全体のテーマ曲としてとても似合っていたのではないか。
ともすればベタな青春物語になりがちなのを、中国の「あの時代」に生き、そして挫折していった「一般の人」をテーマにしたことで、とっくに現代日本人が忘れ去った(物語中の日本人課長のスタンスでもある)政治の理想と現実生活の狭間でもがき苦しむ有り様を、逆に新鮮な空気感で届けてくれたといえるだろう。
折しも香港では民主的選挙制度導入を要求した学生デモが続いているが、中国政府の力の発動が繰り返されないよう祈るばかりである。 -
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ネタバレなんとも言えない甘酸っぱい読後感の作品でした。
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当初、ライバルであり幼馴染である貧農の子どもたち二人が、苦学の末狭き門をくぐりなんとか憧れの大学生となるシーンで始まった本書、おおこれは立身出世物語かも、とワクワクして読んでおりました。
ところが、喜びも束の間、学生運動にかかわってしまい、せっかく入学できた大学から二人とも放校処分となり、エリート候補生が日雇いに身を落とすことに。
理想(国の民主化!)は高いが、現実の食い扶持を得るためにはとにかく働かねばならない。そのギャップが若い二人につきつけられます。
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とりわけ、在留日本人とみられる女性と結婚し日本へ渡った浩遠。
彼は民主化の理想を捨てきれず、日本でも同胞の民主化の集まりに顔を出すも、周囲の不真面目な態度が面白くない。会社の上司や妻も表立って反対はしないものの、次第にはれものに触るかのような態度を彼にとる。
最終的に浩遠は、民主化を先導した甘元教授と、憧れだった英露とに再会し、自分だけがクソ真面目に民主化活動していたことに気付く。ここは悲しかった。いったい何年彼は独りで夢を見ていたのか。
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理想を持つことは素敵だし大切でしょう。他方で現実に生き生活を送ることは喫緊の課題となります。
普通の人は意識的・無意識的にバランスを取り、ある意味で平凡な人生に落ち着くわけです。
理想を固持したことで浮いてしまった浩遠に一抹の悲しみを感じるのは、わたしなぞは浩遠に自分の分身を見ることができるからでしょうか。
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民主化という理想でなくても、理想(夢)は、お金持ちになる、都心に住宅を持つ、素敵な配偶者を得る、子どもを有名私立(国立)に入れる、出世して部長や役員になる等々にも置換できましょう。
私の場合は、優しくも厳しい妻との衝突を経て、自分は平凡に生きるべきだとやっと頭で理解してきました(心ではやっぱり破天荒なことをやったり成功したいという野望がまだ消えません泣)。
個人主義・多様性とは言うものの、干渉しない(で暴走?するのを許す)のを優しさと言うのか、干渉しまくって目を覚まさせるのが優しかというのか、意見は分かれましょう。
そんな人間関係の在り方をも考えさせる作品でありました。
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ということで、楊逸氏の作品は初めて読みました。
やさしく、そして熱情と冷静さの表現の切り替えが上手な作家さんだと感じました。
舞台が日本ではなく、異国情緒(というか異国ですが)が漂うテーマも好みです。
別作品も読んでみたいと思います。 -
Posted by ブクログ
いつの世も時代に振り回されるのは、名も無き一般人。権力者や著名人は名前が残っても、最大の被害者達は歴史の表舞台に立つことは無い。それでも、一人一人が時代を生きている。
学食の料理番や飲み屋の店主やタクシー運転手は日々を生きてゆかねばならない。家族を食べさせなければならない。学生達のエネルギーに熱くなる何かを感じ、運動を応援することはあっても運動が下火になれば日々の生活に戻る。
まだ何者でもない、何者にもなれる可能性を秘める学生達は、学生であること自体をエネルギーの源として運動に参加する。しかし、正しいと思う"何か"や理想的な"何か"は流動的で現実味が無い。掲げる"何か"の主語が大きければ大きいほど、訳が分からなくなる。
そうした熱を持った学生だった主人公が、家族を持って祖国を離れて生きるようになり、日々食っていけること、家族を食わしていけることが最も大事なことであると気付くことで、浮かされた熱が引いていき、"何か"とは、この今生きる自分と家族が無事に生活を営めるということにおさまり穏やかな幕引き。
尾崎豊は世代ではないが、読みながらI LOVE YOUを聞いた時、比喩ではなく涙が出た。名作や名曲は時代に関係なく人の心の"何か"を打つ。 -
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第一章冒頭の櫻井氏の「中国は世界で最も罪深い"悪逆国家"のひとつ。二十一世紀のいま、どこから見ても許されざる異民族の弾圧や虐殺を続けている。チベット人にもモンゴル人にもおぞましい弾圧を加えてきた。いま、とりわけ国際社会の避難が集中しているのがウィグル人への弾圧だ」との発言で始まる本書は「悪逆国家」たる中国の姿とそれに立ち向かうべき心構えを伝えている。
本書に記された他民族に対する民族浄化、虐待の実態はまさにおぞましい。
櫻井氏ら著者たちは、それが共産党支配の故ではなく、漢民族の特性によるものだと説く。
漢民族は優越感が強く、排他的、差別的で支配欲も強い。執着のあまり、事実とは関係ない壮大な虚構だとしても、中華民族、歴史はこうあるべきという姿を主張する。
習近平が誇る北京語はピジン語という満州族が人工的に作った共通語であり、マンダリン(「満大人」)という英語名はその証、
黄河文明を含む四大文明、古来中国は先進的大国、アヘン戦争以来の失われた百年等の主張に根拠はない、
協調、友好、団結、自治などの耳触りのよい言葉の真の意味は漢民族への服従、
などは目から鱗の指摘。
昨今の稚拙な戦狼外交で馬脚を露わしつつあるが、まだ政財界の中国贔屓や大学や企業への中国人の浸透、不動産の購入、中国製パネルを敷き詰めた太陽光発電所の増設など、我が国への「サイレントインベージョン」は進む。
寝ぼけ頭の日本人を覚醒させるには恰好の良書。 -
Posted by ブクログ
日本に亡命、在住し芥川賞を獲得した中国生まれの著者による1989年の天安門事件を背景とした青春物語。地方都市の大学1年で主人公の梁浩遠と親友・謝志強は若手のキラキラ輝く甘凌洲教授の指導のもと、愛国心に燃えて民主化運動に参加した。白英露という積極的な女子学生にも出会う。しかし、民主化の期待は裏切られ、予想外に弾圧され、失意のうちに大学を去る。そして主人公は日本へ。中国に残る家族や友人志強と離れ、甘教授や英露は消息不明に。しかし海外亡命した人たちの行き先が分かるというネットワークの凄さに驚き。亡命先のフランスから日本を訪れる甘教授や英露との再会、そして中国へ向かう飛行機を見送るラストは爽やか!テレサテンや尾崎豊の音楽に衝撃的に出会う浩遠と志強たちは当時の中国の若者たちの姿そのものだと思った。