奥野修司のレビュー一覧
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40年前の沖縄での嬰児取り違え事件をその後25年に渡って追いかけたノンフィクション。自分は親でもあるのでこの本を取り違えられた親子両方の視点で読んだ。血の濃さはは情を超えるけども、情の濃さは血の繋がりすらも凌駕する。一見パラドックスのようだけども、結局どこまで親が愛情を注いだかの一点に尽きるのだなというのが大まかな感想。両家の両親の姿があまりにも対称的なために、どちらの子も片方の母親を慕うといったくっきりとした実験結果のような結論になったのが皮肉だなと思う。実際自分の子が取り違えられていたら、と想像するとその葛藤は想像するに余る。久々に素晴らしいノンフィクションを読んだ。取材者の姿勢に脱帽。
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これは実際に沖縄県で起きた赤ちゃん取り違え事件の家族の話。
赤ちゃんが取り違えていたことが発覚して、その赤ちゃんたちが成人するまでを見守り続けた著者の記録でもある。
この事件は、子どもが6歳になるまで発覚しなかった上、その後子どもたちを交換してからも、様々な出来事が子どもや両親たちに巻き起こる。
事件が発覚してからそれぞれの両親は交換するべきか迷い、その後交換してからも自問自答を繰り返す日々。事実だからこそ、この家族の葛藤、苦悩、そして、嘆き苦しむ姿に、胸がつまりそうになる。
血のつながりのない子を6年間育ててきたことは、母親にとっては、かけがえのないものであり、育ての子、産んだ子のどちらも -
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ネタバレ山怪に続き?、途中まで読んでいたこちらを読み進めた。
「霊体験」というとスピリチュアルだが、作者自身が「近代科学は、再現性があることが原則でしょう?幽霊話はどうも…」という抵抗心がある中で、それでも「人間が持つ内的自然というか、集合的無意識の力を度外視してはいかんということだよ。それが人間の宗教性になり、文化文明を広げていったんじゃないかね」という言葉に励まされ、物語を収集していく。
一つ一つがとても胸に迫るものがあって、超自然的体験の有無に関わらず「読ませる」ものだったし、読んでいるのが辛いところも多かった。最愛の人を失うという過酷な環境下の中でも、人間は回復/状態が変化していくわけで、その -
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できないと決めつけられることが怖い、嫌だって箇所すごく共感した。話さないからしんどい。話せば分かることもあるって本当にその通りなんだよね。
しらないからすれ違う。すれ違うからしんどい。話せば理解できるとは限らないけど、持っている感覚が違う。だから話さずに分かってくれは通用しないと思うし、「黙っているからしんどいんです」(平良みきさん)の言葉がとても刺さった。
差別されることは怖いけど、病気を隠して勘違いされることも怖い。これは他のマイノリティー(てんかん、吃音、チック等)にも言えること。
病院ラジオに出ていた山田真由美さんが出てきたことが嬉しかった。
ところどころに写真があるので、そちらか -
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湖永さんの「オレンジランプ」のレビューを読んだのがきっかけで手にしました。ありがとうございます。筆者の丹波智文さんは、「オレンジランプ」のモデル、39歳で若年性アルツハイマー型認知症の診断を受けられれた方です。
著者の丹野智文さんは、車のセールスマンで仕事にやりがいを感じていました。同じ職場の女性と結婚し2人の女の子にも恵まれ充実した毎日を送っていました。ここ数年で記憶力が悪くなったと自覚し、検査を受け若年性アルツハイマー型認知症の診断をされたのが39歳…子どもたちは中学1年生と小学5年生…え??すごく大変なんじゃない!!と感じました…。丹野さんも、将来が不安と眠れず泣きながら過ごした夜 -
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正直なところ、震災当時は九州に住んでおり、関東の様な余震すら感じられなかった事、さらに10年以上の月日が経過し、記憶からはだいぶ薄れてきていた。勤めていた会社は本社が東京にあったし、同僚の親族や社員自身も数名が行方不明となり、家族も関東に暮らしていたから聴き伝わってくる情報はある程度はあった。しかし自身が直接的に経験していないことが、何処か遠い世界の様にも感じられた。仙台始め東北地方を周遊したりと若い頃は何度か訪れた地が津波の映像で流されていく様は、そんな外側の人間から見ても恐怖と悲しみに渦巻いていた様に思う。当然被害に遭われた方々や家族を亡くした多くの方々にとっては、私などでは想像も出来ない
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10000円選書本
幽霊は、たぶんいるんだろうなと漠然と思っている。
私は理系で科学の子(笑)だけど、世の中に幽霊がいた方が、世界への理解が進む気がするからだ。
ただ、幽霊が「良いもん」か「悪いもん」かの判断はつけかねている。稲川淳二の世界に出てくる幽霊は、きっと「悪いもん」。人を怖がらせる幽霊なんて、「悪いもん」に決まっている。
でも、今回読んだ本に出てきた人たちは、みんな誰かの愛しい人で、「魂でもいいから、そばにいて」と願われる人・動物たちだった。
読んでいると、
「いやいや、寂しい気持ちを紛らわせるために、自分の都合のいいように生み出した幻影でしょ?」って思ってしまうシーンは多々あ