ちいさな美術館の学芸員のレビュー一覧
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現役学芸員兼大学教師が教えてくれる「日本美術」
そういえば、日本美術ってどうやって説明したらいいんだ?と、思い手に取った本。
日本では日本美術よりも西洋美術の方が人気があるというか、敷居が低いような雰囲気があります。日本美術の方が難しそう…というか(そして地味そう…、と)
そもそも「美術」という言葉自体が比較的新しいもので、明治以降に入ってきた言葉。世界的に有名な浮世絵作品が生まれている江戸時代にもまだこの概念がなかったのだそう。
でも、言葉はなくても作品はそれよりずっと前からあったので、どうも美術という言葉ではしっくりこないものも日本美術には含まれているのです(仏像と刀とか)。
この本には、みんなが日本美術と聞いてすぐに思いつくジャンル浮世絵や襖絵、掛け軸などから仏像、刀、そしてお城まで幅広く日本美術の作品の紹介とその見どころが書かれています。
ただ、筆者も書かれているように意図的に図版を載せていません。気になった作品はメモしておいて、後でじっくり調べて、できればその作品に会うにはどうしたらいいかまで検索すると楽しいのでは、と思います。 -
Posted by ブクログ
初めて見る仏像や浮世絵、刀に陶磁器に、なぜか不思議なノスタルジーを抱いてしまうことが多々あります。
数百年、ものによっては1000年以上も前に作られた作品から感じるのは、確かにそこに僕らと同じような人間が存在して、一生懸命にモノ作りをしていたという事実であり、日本という国の記憶。
こんなにも豊かな歴史と文化をもつ日本に生まれて、本当に良かったと思います。
「日本美術初心者のもう一歩手前にいる人に向けて」という本のコンセプトも、素敵。
デザイン:三木俊一(文教図案室)+高見朋子(文教図案室)
カバーイラスト:岡野賢介
本文イラスト:ちいさな美術館の学芸員
編集:前田康匡(産業編集センター) -
Posted by ブクログ
◯初心者向けだったので、あまり新しい情報がなかった。
◯以下抜書。
・「私は数十人の美術館好きの意見を聞くうちに、もう一つ共通点があることに気がつきました。それは、人生のどこかの時点、多くは十代や二十代前半の若い時期に何らかの衝撃的な鑑賞体験をしていることです。感動のあまりその作品の前から動けなくなるような、大げさではなく魂が震えるような、そんな作品との邂逅を体験しているのです。ある種の神秘的、宗教的な体験と言ってもいいかもしれません。」
・「ヨーロッパでは知的な刺激を求めて美術館に行く人が多いのに対し、日本は癒やしを求めて美術館に行く人が多数派であるという話もあります。静謐な空間で泰西名画や国宝をじっくりと眺めて満たされた気持ちで帰る、というのが大多数の人にとっての王道の楽しみ方なのです。また、ここ二十年ほどの流れを見ていると、縄文芸術や江戸時代の伊藤若冲といった新しい定番が生まれつつあるのを感じます。」
・短くてもいいので展覧会レポートを書くことを人にお勧めしています
→【効能1】文章にするために調べ物をするので理解が深まる」
→【効能2】自分でも気がつかなかった感情を認識できる -
Posted by ブクログ
書名のとおり学芸員の目から見た美術館や展覧会の裏側。
美術館同士の所蔵品の貸し借りに貸借料がかからないとか、陳列室の端に楚々として座っている人は学芸員ではなく警備かバイトの人であるとか、初めて知ることも多い。
参考になったのはおすすめの鑑賞方法。
気になった作品の印象をその場でメモに取るのはともかく、最初に展示の始めから終わりまでをざっと見て、その後気になった作品をじっくりと見て廻るというのは非常に実践的。
集中力を前半で使い果たし、後半の作品をおざなりに見てしまうというのは実感としてよくわかる。
所蔵品の維持管理と展覧会の企画・実行が業務の中心となっている学芸員だが、調査・研究業務についても知りたいところだ。
執筆当時は(ちいさな美術館の)学芸員兼大学の非常勤講師だった筆者は、現在は大学教員となっている。(本書の元となったnoteは続けている) -
Posted by ブクログ
どこかの美術館の学芸員が著書。
日本美術の解説本ではあるが、写真は多くは登場せず、文章でせめてくる。
これは著者のこだわりらしい。
なので、あまり詳しくない人は検索しながら見るとより楽しめるかも。
文章はわかりやすく、各所のエピソードも面白い。
日本画は劣化を防ぐため、限定の期間しか展示されないなど
美術館院の視点もよかった。
例えば、尾形光琳のカキツバタの絵は切手にもなった有名なものだが、青山の根津美術館にある。
カキツバタのシーズンの5月初旬を中心に数週間の展示。
お、これはいきたいと思って調べたら、残念ながら、
今年はもう終わってました。。 -
Posted by ブクログ
評判が良かったので買ってみた。
著者の人柄が見える優しい文章。美術館にあまり縁がない人を、押し付けがましくなく、さりげなく背中を押してくれるような。
私は美術館に足を運ぶタイプの人間でおそらく著者の想定読者とは少し違うのだけれど、充分楽しめたし、勉強にもなった。やはり現役学芸員かつ大学で教鞭を取っている方は基本的な知識が違う。土台がしっかりした静かな教養からの情報が、無理なく語られる。その辺りが企画物との本と一線を画すのかな。
学生の時頑張って学芸員の資格を取れば良かったな、とすら思う(学芸員の資格が取れる大学だった)。
ドキドキハラハラ、とかどんどんページをめくってしまう、みたいな本ではないけれど、良い本だと思う。
美術にあまり縁がなかった人に読んでほしい。 -
Posted by ブクログ
第一章はとても良かった。
ビジネスの世界では「アート思考」が流行しているのに、実際に美術館に足を運ぶ人は少ない。この矛盾の指摘は鋭く、一気に引き込まれた。
一方で、本書自体が「忙しい人のための」という構造を持っているのも興味深い。
本書が指摘するように、アート思考が流行しても人々は美術館には行かず、代わりに本や要約、フレームワークといった“手軽な知識”に向かう。つまり問題は「時間がない」というより、「タイパ(時間対効果)」の感覚にある。
そう考えると、「忙しい人のための」というタイトル自体が、この状況を皮肉なかたちで体現しているように思える。美術館に行く余裕はないが、アートについて“効率よく”知りたい。。。その欲望に、本書はあえて乗っている。その自覚的な立ち位置が面白いと感じた。
同時に、武田砂鉄のいう「わかりやすさの罪」も思い出す。私たちは本当に、そんなに急いでいるのだろうか。
また、「日本人は美術を勝ち取っていない」という話を思い出した。フランスでは革命によって貴族の所有物だった美術が民衆のものになった。美は奪取された公共財である。その歴史を持たない日本では、美術館はどこか「他人の空間」のままなのかもしれない。
後半は美術館の歴史やSNS事情などが語られるが、やや本筋から外れている印象もあった。私は具体的な「歩き方」を早く知りたかったのだろう。
実践的な学びは二つ。
一つはアウトプット前提で鑑賞すること。
もう一つは、まず一周してから、二周目で好きな作品をじっくり見ること。
この二段階方式は確かに有効だと思う。実際、ビュッフェでもまず全体を見てから皿を決める。美術館も同じなのだ。
結局のところ、美術を楽しむには「余裕」が必要だ。本書には「余裕のある時代は美術、余裕のない時代は技術に向かう」という趣旨の一節があったが、まさにその通りだと思う。だからこそ私たちは、美術にも技術的な意味でのメリットや効率を求めてしまう。それは少し寂しいが、現実でもあると感じた。