浅暮三文のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
メフィスト賞を受賞した、でもミステリじゃない風変わりな小説。行方不明になった恋人を探して、ついに辺境の地・ダブ(エ)ストンに漂着した主人公が繰り広げる恋人探し道中…の合間に、謎の王様と執事ピエールその他の大集団の謎な旅模様、変なところで道徳的な半魚人、蝶ネクタイに手間取る熊、さまよう幽霊船、「白馬に白タイツ」の白雪仮面などなどなどなど…ダブ(エ)ストンを迷い歩く者たちの小話が突然紛れ込む!迷うファンタジー。タイトルの絶妙なバランス感覚、本文冒頭の文章の引き込みのうまさが瞬間的にレジ行きを決意させる本!?癖のないさっぱりした文章は非常に読みやすく、ダブ(エ)ストン全体の妙さ加減も面白い作品です。というか、良く考えると謎に満ちたお話。
-
Posted by ブクログ
けっこうおもしろかった。初読の作家さん。メインキャラの白井氏より、白井氏の大学時代の知り合い(知り合い?だったかしらんが同窓生)の警察犬ハンドラーの原が主人公に思えてくる。一人、関西人異邦人の原友美。関西弁というか神戸系っぽいような、結構オセンティックな発音が頭に浮かぶ、いい話し言葉なので、作者は関西人だろうか、といらんことも考えてしまう。動物が専門ではなさそうだが、良いトピックを拾って面白く設定つくっているな、という印象。
カラスの貯食を利用した事件解決。文鳥と鳩の審美眼を利用した事件解決。警察犬の嗅覚とニホンリスの習性で事件解決。セミの習性で解決。オオムラサキ、ツバメ、イヌワシ、カモシカ、イノシシで解決。キツネで解決。馬で解決。
超個人的に気になったのが、
p127 「靴底に記されたサイズは25.5。これなら俺にも履ける。」
って、足ちっさ!
ジョーイ・トリビアーニかっ(古っ)
犯人と被害者の靴サイズが同じで、犯人が被害者の靴を履いていたために、足がつくというネタ。
ちなみに私26です。
決め台詞は「動物は嘘をつかない!」
と、書いていましたが、
ほんとのところは
動物も嘘をつきます。
おのおのがたご注意めされよ。 -
Posted by ブクログ
【感想】
・このミステリは「こう」と明確な推理はしない。動物の行動を根拠に確率を少しずつ上げてゆき絞り込む。最後まであくまでも蓋然性の問題であり確定はしない。このパターンは新しい気がする。
・著者は関西の人みたいやけど、作中の関西弁がなんかヘン。関西弁に「ですます」をつけてるからかな? もともと関西弁、特に大阪の商人言葉はそれ自体で敬語を含む用法が可能やから。
【内容】
・誘拐犯が死んで誘拐された人の居場所がわからない。
・鳩や文鳥の絵画鑑賞能力が盗まれたシャガールを見つけ出す?
・バラバラ殺人で身許不明の腕や足から犯人を追う犬たち。リスやアリの行動をヒントに。
・現金輸送車襲撃犯はつかまったが現金の隠し場所が私らない。日本最大級の蝶オオムラサキの羽が手がかりになるか?
・乗馬クラブで偽装自殺か。
▼簡単なメモ
【移動通信鳩】通常の伝書鳩が一方通行の移動しかしないのに対して移動通信鳩は往復する。一方を餌場とし、もう一方を寝床とするらしい。
【イヌワシ】警戒心の強いハンター。
【イノシシ】山登り好きですが、イノシシについては一見かわいげがあるが、山で出会ったら大ケガ、最悪生命の危険を覚悟する必要があると教えられてました。時折映像で見ますが、たしかにあの突進力は脅威ではあります。それに、意外と敏捷にターンしてくる。
【オオムラサキ】国内最大級の蝶。縄張り意識が強く、メスを探す目的もあってエリア内を巡回するが視力が弱いのでツバメだって追いかける。
【河童】白井にとってはいないと決まったわけでもなく、非科学的でもない。
【カモシカ】臆病だが好奇心旺盛で人の行動をじっと眺めてたりする。
【カラス】カラスはコミュニケーションする。カラスの大群に友美は《生まれて初めて鳥に恐怖を感じた。》p.31。礼文島を歩いているときある沼か池の周囲がカラスのたまり場で恐ろしい数がいてやはり恐怖を感じたことがある。
【カレンダー】白井の屋敷にはカレンダーがたくさんある。
【岸本】友美の鑑識課での上司。
【シナントロープ】人間に寄り添って生きる動物。
【白井旗男】友美の動物学科での先輩。三十代後半。身長百八十センチほど。顔立ちは整っている。乾燥肌で冬は痒い。穴子が好物。かつては明るく外交的で将来の教授候補だったが現在は他者と没交渉。動物園のような屋敷で暮らしている。奇矯な格好をしていることが多い。両親がアルゼンチンで行方不明となっていて調べている。
【スカベンジャー】腐肉をも食す雑食性の生物。
【ツバメ】意外に弱い鳥。スズメに巣を乗っ取られることすらある。弱さゆえの「ツバメ型繁殖」というのは人間を用心棒にする生態。カルガモなども。
【動物の行動】動物の行動には必ず理由があるというのが白井の信条。
【土橋源造】捜査の鬼。通称「ハシゲン」。
【友美】原友美。警察犬を操るハンドラー。二十八歳。学生の頃モデルにスカウトされることがあったルックス。大阪出身で関西弁。相棒はジャーマンシェパードドッグのビスマルク号。《一度こうと決めたら岩おこしより硬い》p.19。半ば引きこもり状態の白井をなんとか社会復帰させようとしているお節介だが、その能力を惜しむとともにおそらく気があるからのようだ。縁起かつぎが好きで「コアラのマーチ」占いや「おっとっと」占いをちょっと気にする。
【化かす】《本当はレナードが我々を化かしたんじゃない。我々がレナードに化かされる能力を備えていたんだ。》p.319
【鳩】ギリシャ神話ではアフロディティの聖鳥なんだとか。
【ビスマルク】友美の相棒でジャーマンシェパード。のんびりした性格。クラッカーが大好き。
【マックス】白井が飼っているビーグル犬。スヌーピーがたしかビーグルだったと思う。小型だが純然たる狩猟犬。
【眉毛コアラ】「コアラのマーチ」で時折出てくる絵柄。
【盲腸コアラ】眉毛より珍しいというウワサ。 -
Posted by ブクログ
「セブン」シリーズの2作目。
主役は、文京区本郷M署の女刑事、如月七。親しい者は、彼女を「セブン」と呼ぶ。
カナダ人の父親と日本人の母親の間に生まれたハーフで、彫りの深い美しい女性だ。
1作目も同様なのだが、捜査を主導するのは先輩であり、
彼女の師匠でもある土橋。
セブンと土橋の間で交わされる、クイズのような、禅問答のようなやり取りは、たまに「?」となる。
土橋から捜査のヒントを得ながら、事件を推理、捜査を行う、つまりは、彼女の成長物語ともとれる。
また、五歳の時、自宅が全焼し、その際、両親を失っている。
そのショックで、感情を置き忘れたようで、そのせいか、彼女自身の感情の揺れは、あまり描かれていない。
だからこそ余計に、ストーリーは淡々と展開していく、ように思う。
上野、不忍池で、切断された子どもの手首が見つかる。
身元を突き止める手がかりは、ひとさし指の付け根に残る骨折の痕だけだった。
捜査が進むうち、一人暮らしの高齢者を狙った詐欺グループの存在が浮かび上がってくる。
で、今回は、セブンの活躍というより、事件関係者である「おばあちゃん」の、「家族」を救おうとする勇気と愛の行動力が心に残る。
結局、おいしいところを持っていったのは、この「おばあちゃん」だったな。 -
Posted by ブクログ
また、新たな女性刑事モノに出会えた。
だが、最近、過去にさまざまな事件で傷を負っていたり、事件で家族を失ったりしている刑事がやたらと多すぎませんか。
この作品の主人公、文京区本郷M署に勤める如月七(ナナ)もそうなんですね。
カナダ人の父親と、日本人の母親との間に生まれたハーフ。彫りの深い顔、長い手足、170cmに近い身長とくれば、ああ、きっと「美しすぎる刑事」とか呼ばれるんだろうなと、余計なことを思ってしまう。
だがどうやら、幼児期にその両親が殺害された模様。
(まだ、この作品では真相が明らかにされていません)
その傷のためか、感情を置き忘れたようなところがあるが、一人の親友と、そしてかつての上司の土橋刑事だけは七をもじって「セブン」と呼び、彼女の後押しをする。
物語の展開もそうだが、誰もが振り返りそうな容姿で、
ヘビーな過去を持っている割に、キャラが際立ってこない。
むしろ、相棒となる土橋のほうがいい味出してるし、心に残る。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ夢遊病のためにどこかよく分からない場所に行ってしまった恋人タニヤを探して旅立った考古学者ケン。乗っていた船が難破して辿り着いたのは、目的地ダブ(エ)ストンだった。地下鉄を運行する親子や人食い熊、郵便配達人など、様々な人や人じゃないものと出会いながら旅を続け、やがて自己の本質に思い至る。
ダブ(エ)ストンとは架空の場所で、なぜ(エ)なのかというとそこにいる人々が各々違う発音をする為だ。それで(現実の)書店では(エ)を発音するかどうかで混乱したという。本当なら面白いエピソードだ。勿論本編も面白い。カテゴリとしてはファンタジーよりも冒険小説だと思う。ダブ(エ)ストンの環境は厳しく、生きていくだけでもかなり大変なのだが、悲壮感は全くない。人々は心ならずも迷ってしまうのだが、迷い続けることを是として受け入れているので、楽しそうにも思える。まあ迷うの実際楽しいし(実体験)。ラストでケンはタニヤに会えたのかどうかは分からない。でも会えたと信じたい。そして今度は二人で楽しく迷い続けるのだろう。 -
Posted by ブクログ
メフィスト賞受賞作だけどミステリではない異色作。
夢遊病である日突然いなくなってしまった恋人のタニヤを追って、謎の島ダブ(エ)ストンへ向かったケン。
ダブ(エ)ストンでは誰もかれもが道に迷っている。
幽霊や王様、人食い熊や半魚人なども道に迷っている。
ケンは郵便屋のアップルと出会い、ともに旅をする。
不思議の国のアリスみたいな雰囲気もあり、正直かなりとらえどころのない作品。読み終わるまでにけっこうな時間かかってしまった。。
でもラスト近くで繰り返される「たどり着くことではなく目的地をめざしてさまよい続けることが楽しいのだ」という感覚はわかる気がする。
あまりに心もとなくてどうしても「それでいいのか?」と思ってしまうけど、人生とはまあいつまでもどこまでも何かを追い求めながら果てしなく歩き続けていくようなものかもしれない。