テッドチャンのレビュー一覧
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ネタバレ『ゼロで割る』
本質的な理解などできない、意味がないということを、魂と同じように信じていたものから突きつけられてしまった孤独と、それが理解できず苦しむ孤独、分かり合えないものを数学的な視点と重ね合わせて描かれている。絶望と、伸ばした手の行き場がない苦しみがこの数学的問題に直面した数学者たちの痛みをわずかでも伝えてくれるような錯覚をいだいた。
『あなたの人生の物語』
どうやったらこんなお話が生まれるんだろう。ヘプタポッドたちの文字に関する化学的な部分の理解は私には難しくて理解しきれなかったけれど、結果としてそこにありながら過去、未来、現在が同時に同じように存在し、その全てを同じように知覚するこ -
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当代随一のSF作家、テッドチャンの2冊目。前作は心に残るけれど難しい、と思ったんだけど、今作は泣けた。
もう1作目の「商人と錬金術師の門」から文字通り泣いたもんね。事実は変えられないタイムマシンで亡くなった妻に会いに行く夫。泣くしかない。悲しいんじゃなくてよかったよねって。
「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」は心に残った。アナとデレク、どっちの決断を自分なら支持するだろうか…デレクがかわいそうじゃん、みんな結局自分が可愛いんじゃん、と思っちゃったけど。
「不安は自由のめまい」はタイトルが美しすぎて。自由意志ってないかもだけど、だけどその時自分がした決断に意味がないってことはないよ! -
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ネタバレ映画「メッセージ」の原作が短編だったという理由と、映画で描かれたことを小説ではどのように表現されているのか、という好奇心で読み始めた次第だ。
この作品は短編集で、8篇の物語で構成されている。当然ながら映画原作でもある表題作から読んでみたが、映画のような緊迫した争いごとは特に描かれていない。それよりも言語のデザインを逐次的から同時的に変えることで時間を超越するという発想にこそ重きを置いて、主人公のプライベートなエピソードはその補完として扱われているのだろうと初見では読み取ったのだが、いまひとつ自信のないまま最初の1ページ(「バビロンの塔」)から本作を改めて読み始める。
「バビロンの塔」は円筒 -
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ネタバレテッド・チャン作品がハードSFでありながら広く受け入れられている理由は、映画化のタイトルに象徴されるように「メッセージ」が明快で、美しいことにあると思う。ハードSFらしい現実離れした世界観やアイデアがありながら、詩的で流麗な筆致が読者を引き込み、力強いメッセージを胸に刻んでいく。本当に稀代の作家だと思う。
様々な価値観、背景を持った人間たちが「運命」(世界の運命かもしれないし、自分の運命かもしれない)に直面した時、何を考え、どう振る舞うのかを徹底的に突き詰めていく作品が多い。ここまで多様な価値観を一人で想像できるのか、と驚かされる。
著者は死ぬほど頭が良く、人間の知性を強く信じてもいるので -
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『あなたの人生の物語』から18年ぶり2冊目の短篇集。
相変わらずどれも完成度が高く、世界設定や近未来的なガジェットは明らかになるたびワクワクさせてくれるだけでなく、私たちの現在を鋭く照射して思考を促してくる。
だが、前作に比べて幻想的なモチーフがグッと減り、倫理的な問題を扱う傾向が強くなった。そのためなのか、前作では割り切ってばっさりとバッドエンドを書く作品もあったが今作はどれも道義的な決着がつくところが教訓じみていて、個人的な好みと少しズレたなぁと思った。
読んでるあいだは夢中で楽しめたけど、良くも悪くもたとえ話が上手な科学ノンフィクションの読後感。
以下各篇感想。
◆商人と錬金術師の -
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ネタバレ寡作で知られるテッド=チャンの2冊目の著作.
テッド=チャンには「未来がわかっている時に,人はどのような選択をするのか?」というテーマが多いようだ.個人的に本書のベストである「不安は自由のめまい」も,少し設定は違うが近いパターンである.これは「ある場面で別の選択肢を選んだことによって分岐したパラレルワールドとコンタクトができる」世界を描くが,登場人物たちは別の世界の自分を見て,自分自身の選択の結果に,ある場合は安堵し,ある場合は嫉妬し失望する.あまり詳しくは書かないが,ある登場人物は,過去の自分の行動について責任を感じて罪悪感を抱き続けていたが,実は....という救いのある話である. -
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『あなたの人生の物語』のテッド・チャンによる 17年ぶりの短編集。映画化もされた世界的な有名作家なのに専業ではなくものすごい寡作ぶりで、そのぶん一編一編が奥深く、消化するのに時間もエネルギーもかかる。
収録は全 9本、ネビュラ賞やヒューゴー賞など名だたる賞を獲得した珠玉の作品ぞろい。
この人の頭の中はどうなってるんだと思うようなぶっ飛んだ設定の上で、さらに話が想像もつかない方向に発展していくので、一度読んだだけではなかなか理解が難しい。
毛色の違う作品ばかりだが、「避けられない運命、受け入れ難い真実を知ったとき人はどうするか」というテーマは一貫している。
「息吹」
舞台が地球でもなく主人公 -
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ネタバレ表題作
映画メッセージは、随分前に観て、感動して泣いた。
原作はそれから何年も経って読んだ。
積読チャンネルの飯田さんが、最も美しい物語と言っていたので。
正直、言語学とかよく分からない用語など次々出てきて、いつも寝落ち。
何日もかかって、ついにカフェで読み終えた。
後半、どんどん主人公の思考と現在の描写が近づき、混ざっていく。
私はラストを知っていたけれど、それでもゾクゾクして、最後は心がギュッとなった。
妻として、親として、どんな人生か分かっていても、きっと私も同じことをする。
大切な人を大切にしたい。
ちゃんと言葉や行動で伝えて。
○バビロンの塔
書かれていることの意味が分からず -
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ネタバレようやく文庫を発見した。
待ちに待ったテッド・チャン二冊目。
『商人と錬金術師の門』はハヤカワ文庫のSF傑作選『ここがウィトカなら、きみはジュディ』で、『息吹』は『SFマガジン700』でそれぞれ読んでいたが、テッド・チャンの文庫として入手できてとても嬉しい。
私がテッド・チャンの文章を表現する時よく「緻密」という言葉を使用するのだけど、今回も改めて。もっとも緻密なのは表題作の『息吹』。静かで、息を殺して主人公の一挙手一投足を見守るような、そんな読書体験。
そして『息吹』もそうなのだが、構築された世界観にも言及したい。
『息吹』は人間ならざるもの(ロボット?)が生きる世界。
そして神が世界 -
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ネタバレ第一作品集は全作面白かったが、本作9編もまた、全作面白い。
ひとつひとつ感想は書かないが、第二作品集は親子のテーマが多いせいか、人の善性を歌い上げるような話が印象的。
もちろん、徹底した思弁と、辛い状況をふまえて、なお人には自由意志があるのだ、と。
絵面としては「息吹」が可愛くてお気に入り。
■「商人と錬金術師の門」
■「息吹」
■「予期される未来」
■「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」
■「デイシー式全自動ナニー」
■「偽りのない事実、偽りのない気持ち」
■「大いなる沈黙」
■「オムファロス」
■「不安は自由のめまい」
◇作品ノート
◇大森望 訳・解説