テッドチャンのレビュー一覧
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ネタバレ「地獄とは神の不在なり」が意外と印象に残った。神は祝福だけじゃなくて災害ももたらす。神は公平じゃない。私は神もあの世も信じていないけど、ラッキーとか不幸とかは日常で起こるわけで。すべては偶然だから、起こることは平等じゃなくて。だから関係あると思った。
結局は、ささやかな日常を楽しむことが大事なんだと思った。コントロールできる範囲でしかどうにもならないから。この話の最後のように、自殺のようなことをして一か八かするのはよくない。ただ、愛する人が亡くなるって経験はしたことがないから、どれほどショックなものなのかは想像ができないから、そんなふうになってしまうのも仕方がないのかもしれないけど。 -
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どれも非常に読みごたえがある、文章密度の高いSF短編集だ。中には設定が難解すぎて脳内でイメージするのにひと苦労するものもあり、いくら短編集とはいえ一冊に詰め込みすぎている感もある。なので一気読みはお勧めしない。連作集ではないので、自分にとっては毎日一編ずつ読み進めていくくらいがちょうど良かった。
SFということで物理や数学が関わってくる作品が多いが、これらをストーリーを進めるための単なるツールとしてではなく、「ゼロで割る」あたりが顕著だが、原理や定理にまつわる思想そのものを作品のテーマに昇華させている点が面白かった。
一番印象に残ったのは「地獄とは神の不在なり」。以前本作にインスパイアされた国 -
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テッド・チャン2作目にして最新刊。どうしてこんなに寡作なの、かなしいね、テッドチャン。
全作品を通して破滅と隣り合わせでひやひやするが、すんでのところで持ち直し希望を見出す展開が読み取れる。SFってどこかディストピアを描き救いがないって方向もあるが、本作品は善のSFである。
キーワードとしての「自由意志」。オートマトンとしての人間観が科学の発展におって否応がなしに突き付けられる世界。それでも人間の知性や感性を駆使して、自由意志消滅の現実にもがきながら人間として生きる道を模索する。まさに人間賛歌、オーバードライブである。
もう一つ、科学の産物との関わり方。
生成AIが跋扈する今まさに。巷で -
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ネタバレ初テッドチャン。ごりごりのSF作家だと思い込んでいたのですが、結構神話の世界を物理で語りきる作品もあって、なんだかちょっとファンタジーな雰囲気もあり新鮮な感じ。スターウォーズのように、観たり読んだりしている最中よりも、考察を余儀なくされる感想文を書くこの時間が一番楽しくなる作品。
考察すればするほど、そもそも欧米と日本の価値観の違いが浮き彫りになる。
日本語に ままならない という言葉があるように、人間や人生というものはどうしようもない側面があるものだという前提を含んでいるのに対し、
欧米は 人間=この世の支配者 説明がつけばコントロールできるものである というスタンスがあるように思う。
この -
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テッド・チャン「息吹」大森望訳を読み終える。
間違いなく傑作の短編集!
積ん読になってたけど、読んで良かった。
ひとつひとつの作品が深い思考のもと、入念に作り上げられた緻密な絵画のよう。
物の見方や既定の認識についてに改めて見直させ、深く考えさせてくれる。
SFの部分だけではなく人の心も描いていて、とにかく凄い作品ばかり。
出会えて良かった1冊だ。
表題作の息吹も良かったけど、その他には、タイムトラベルを扱った「商人と錬金術の門」、神の信仰と科学を描いた「オムファロス」、ある分岐点で別れるパラレルワールドはなにをもたらすのかをテーマとした「不安は自由のめまい」が特に印象に残ったかな。 -
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映画「メッセージ」の原作である表題作が収められた、短編集である。
どれも良い読書体験ができたが、やはり映画を先に見た私としては「あなたの人生の物語」が一番印象深い。
地球外の知的生命体との交流によって目覚めを経験し、時間軸が狂うことで人生を理解することになる女性。
過去から未来へ続いていく時間軸の中では、言わば知らぬが仏の状態で手探りの道になる。
これが普通の考え方である。
でも未来に起こることを知っていたら?
それが悲しく耐え難い出来事だったとしたら?
進もうとしている道をそれでも歩めるだろうか?
覚悟と理解が必要だ。
進むと決める覚悟。
行くの?なぜ?その答えを自分で理解すること。
「 -
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ネタバレとても面白かった。
一つ一つの短編が骨太であり、読むのに時間がかかってしまったが、楽しい読書体験だった。
一つづつ振り返っていこうと思う。
「バビロンの塔」
この短編集の中で一番読みやすかった。
情景描写が見事だった。
「理解」
詳細な描写に思わず読み込んでしまった。
「ゼロで割る」
一回読んだだけでは意味があまりわからなかったが、何回か読み直したり、考察サイトを見ることでやっと理解できた。
レネーは自身が発見した形式的発見によって自分の中の既存の世界が崩れてしまい、自殺未遂をしてしまうほど追い込まれる。恋人であるカールは、自身がかつて自殺未遂をした際、その時の恋人に傷を癒してもらった経 -
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ネタバレSF × 哲学の魅力
単なるSFではなく、哲学的な問いや人間の根源的な悩みと自然につながっている点が素晴らしかった。高度な設定を土台にしながらも、難解さより「人間の感情」に重心があり、読んでいて心に残る。自分はSFに身構えていたけれど、むしろ哲学小説として楽しめた。
短編集ならではの多様さ
長編のように構えて読む必要がなく、それぞれの物語に個性があってリズムよく読めた。とくに冒頭とラストは印象が強く、最短の「予期される未来」にも思想の鋭さがあり、「短さ=軽さ」ではないことを痛感した。一方で「デイシー式の進化論」は難解すぎて、自分にはまだ理解が追いつかなかった。再読したら違う景色が見えるのかも -
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本屋では毎回ハヤカワSF文庫の棚を凝視している自分ですが、ちょっと厚めの本作「息吹」は毎回視界に入って印象に残って、しかし購入はしないというパターンが続いてました。
決して軽くはないボリュームですが、2日で一気に読んでしまいました。
SF小説の最高峰とネットのあちこちで書かれていますが、読んで納得。SF小説に求めるものが全部入っていると思います。
私がとりわけ感銘を受けたのは作品のラストを飾る中篇「不安は自由のめまい」です。
人生の選択によって分岐した別並行世界と通信できる装置が、この中篇の中心的なギミックです。誰しも思い描いたことのある「あの時こうしていれば自分の人生はこうなったんじゃな