牧野美加のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
分かっちゃいるけれど、人生には正解なんてないんだろうなということ。
韓国という、日本よりもさらに激しい競争社会の中で、客観的には成功したヨンジュ。大学まで行ったけれど、社会の中でうまく居場所を見つけられなかったミンジュン。そもそも大学へ行かないことを選んだミンチョル。
この本には、ある意味で、決められたレールから少し外れた人たちが出てくる。でも、彼らは別に負けた人として描かれているわけではない。悩みながらも、自分の選択を少しずつ受け入れて、自分のペースで日々を過ごそうとしている。そこがとてもよかった。
大きな成功をすることや、誰かに認められることだけが、人生を豊かにするわけではないのかもしれない。今日一日をどう過ごすか。本を読むこと、人と話すこと、働くこと、休むこと、少し考えること。そういう小さな時間の積み重ねが、結局その人の人生になっていくのだと思った。
ヒュナム洞書店は、本を売る場所でありながら、疲れた人が少し立ち止まれる場所でもあった。誰かを劇的に救うわけではないけれど、その人がその人のペースで考え直す時間を許してくれる。そういう場所があるだけで、人は少し楽になれるのかもしれない。私の近所にもそんな場所があればいいのに。 -
Posted by ブクログ
良かったー、、、刺さってしょうがない。小説のような、自己啓発のような、ビジネス本のような、不思議なジャンル。
仕事に悩んだときや生きるのに疲れたとき、本を無性に読みたいときなど、人生の色んな局面で読み返したくなる作品。
「ミンジュンは休みたかった。振り返ってみれば、中学一年のころから心穏やかに休んだことがない。ひとたび優等生になるとずっと優等生であり続けなければならなかったし、優等生は常に努力しなければならなかった。努力するのは嫌いではなかった。でも、努力した結果がこれなら、努力しないほうが良かったのかもしれない。」
↑まさに心底共感する文章。私の社会人なりたてのやさぐれ期は、ここからくる挫折だった。無気力症候群を的確に言語化してくれた。
「目的もなく一つの対象にこんなに長い時間を費やしたことはなかったと考えながら、今自分がとても贅沢なことをしていると感じた。時間をたっぷりと費やす贅沢。時間を存分に費やしながら、少しずつ自分自身の好みを知っていった。ミンジュンはうっすらと感じていた。ある対象に関心を寄せていれば、やがては自分自身を見つめるようになるのだろうと。」
↑今の生活をこんな風に感じられる人間になりたい、なろう。とても贅沢で貴重な時間の費やし方であること。時間を無駄にしていると捉えるのか、贅沢な自分探しの旅中と捉えるのか。
「あれこれ考えた末、自分はただの平凡な人間なんだ、という結論に至ったりもします。いくらがんばって前に進んだところで、行き着く先は「平凡な人間」でしかないんだ、と。平凡な人間である自分はどうしても、他人を悲しませたり、苦しめたりしてしまう、ただそれだけのことなんだ、と。人間は、笑い合いもすれば、苦しめ合いもするものなんだ、と。……本を閉じて考えました。自分は未熟な人間だという思いにばかりとらわれないようにしよう。
それでも自分にはまだチャンスがあるんじゃないか。未熟な自分もまだ、善い行動をとったり、善い言葉を口にしたりできるんじゃないか。情けない自分も、ごく、ごくたまにはいい人になれるんじゃないか、って。そう考えると、ちょっと元気が出ますね。これからの日々が少し楽しみになったりもします。」
↑不機嫌をぶつけてしまったり自己嫌悪することも多いけれど、未熟な自分でも、自分のことを後回しにして他者を優しく思いやれる長所があるではないかと、ごく、ごくたまにはいい人になれるんじゃないかっていう言葉がとても良かった。救われた。 -
Posted by ブクログ
韓国の翻訳本で一番最初に読むならこの本だと勝手に決めてずっと読みたいと思っていたこちらの本
心があったかくなる、ほっこりする話であると同時に、生きることや幸せについての問い、作者なりの答えが書かれているものだった
本屋で心が救われたことはない
私にはその経験は全くない
でも、そこで出会った本に心を動かされ、救われた経験なら幾度かある
そして、その本を並べてくれているのはその書店
そう考えたら、本屋の重要性は言うまでもないことだと思う
本を読む時間がない
本はあまり読まない
そういう人でも、本を一度も読んだことがないと言う人はきっといない
人生の節目に、そのひとの心に寄り添えるようなそんな本と出会えること
書店はその懸け橋なのかなと思います -
Posted by ブクログ
仕事して、ちょっと休んでまた仕事してちょっと休んでまた仕事……。
目まぐるしく進む状況に振り落とされないように、必死に生きているような感覚だった今日この頃。
この本は、どんなに頑張っても肯定して貰えず、苦しんでいる社会人に休息を与えるような……そんな本だった。
誰しも生きていれば、立ち止まりたくなったり動けなくなったりする場面はあるだろう。
この小説に出てくる登場人物も、みんな何かしら問題を抱えていて、ヒュナム洞書店での人との関わりを通して、みんな自分の人生について考えるようになる。
そこで得られた気づきによる言葉や、互いを慰め合うために紡ぐ言葉は、読者である私にも語りかけてくれているようで、時に感情を揺さぶられたり、時に肯定されているような気持ちになったりした。
ヒュナム洞書店の「ヒュ」は、韓国語で「休息」の「休」という字を使うそうだ。
名前のとおり、この小説に出てくる書店は人々の休息所になっていて、休んだあとにそれぞれの肩を借りながらゆっくり立ち上がり、歩き出すことが出来る場所となっていた。そして、読者にもそんな力をくれるようなとてもいい本だった。
また、作者のあとがきに『「かもめ食堂」「リトルフォレスト」のような雰囲気の物語を描きたかった』と書かれていて、どちらもとても好きな作品だっただけに、とても嬉しかった。