藤沢周平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
一昨年くらいに映画化され、ずいぶん話題になっていたのでためしに読んでみた。
地方藩士の姿をうつした短編が8編入っている。
あまり裕福でもなく、容貌も性格も地味だが筋の通った生き方をしている普通の人々の話だ。
表題となった短編も、病気の妻を療養に出すため藩の政変で働く事になった「たそがれ清兵衛」と呼ばれる侍の話。
彼らは静かに決まった仕事をこなし、仕事が終われば朋輩と飲みに行ったりする。藩とか侍というのは今でいう大企業と社員みたいなもんなのかなぁ、などと思う。
かなり短いので、これで映画ができるのかと不思議に思ったけど、どうやらこの本の3つの短編が合わさって1本の映画になったようだ。 -
Posted by ブクログ
藤沢周平の2冊目、やはり超娯楽作品で楽しめました。
どの話も愛すべきキャラクターの設定で、しみじみ佳かったですが、私は最後の「祝い人助八」のラストシーンにグッときました。
でも(どの話も)結局は「剣の力」で解決なんですよね。(時代劇だから仕方ないのかもしれないですが)
「剣」の無い私は何で勝負できるかなぁ。
勝負しなくても(勝てなくても)良いかぁ。命を取られることはないしね。
【追記】
調べてみたら映画「たそがれ清兵衛」では、「祝い人助八」のエピソードも組み込まれているらしいです。映画を見た方おられるかな?
見ようか、見ない方が良いか迷っています。 -
Posted by ブクログ
以前、蝉しぐれの周辺を調べた際に、蝉しぐれの映画化の折に出版されたムック本で、作家たちが好きな藤沢作品は?ときかれて、この本を挙げるひとが多いのをみて、私も気になって読んでみた。
事情があって脱藩した青江又八郎が、江戸に出て、ちょっとわけありな仕事斡旋業者、相模屋のタヌキ親父・吉蔵に頼んで、主に用心棒稼業を世話してもらいながら、そこでのアクシデントを体験していく連作集。
そのなかで、浅野家の浪人たちが吉良邸への討ち入りを計画していることと関わっていく。
同僚、細谷もユーモラス。全体にシニカルな明るさがある。
デビュー以降、暗い作風が続いた藤沢作品が、ここから転換点を迎えたと表される作品で、確か -
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新井白石ってすごい人だったんだなぁ、というのが感想。
下積みを経て徳川家宣に信頼され重用を受け幕府の頭脳とも言える働きをし家継の世もサポートして、白石がいなければ日本はどうなっていたのだろうと思わせる存在になりながら吉宗の世になると一気に凋落と言って良いような扱いを受けるようになる。弊履を捨つるが如き扱い。
1人の人間の栄枯盛衰、かくも残酷なものか。
講談社文庫で読んだので伊集院静さんの解説が巻末にあった。
これが良い。
藤沢周平ファンの思いを代表して語ってくれている。
フランスの日本料理店で初めて藤沢周平さんの用心棒日月抄に触れてから一気にファンとなってのめり込んでいったエピソードには「そ -
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藩主暗殺の陰謀を知ってしまった故に許嫁の父を斬り脱藩、刺客に追われる身となった青江又八郎。
江戸の裏長屋に暮らし、用心棒稼業で糊口をしのぐが、浅野内匠頭の刃傷事件からの浅野浪士討ち入りの噂が流布するにつれ、請け負う仕事に浅野、吉良両家の争いの匂いが立ち込める。
10篇の連作は忠臣蔵に関わる浅野浪士の動きと心情をとらえている。
そして青江個人は用心棒生活を続けるうちに時として感じる堅苦しい侍暮らしからの解放感と、そんな暮らしに満足してしまいそうな堕ちていく自分を良しとしないせめぎあいに心を痛める。
許嫁の娘が自分を仇として討ちに来るならば討たれようという気持ちになる理由の一つにはそんな自分の人