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Posted by ブクログ
立花登は、20代の若い町医者にして、獄医、そして柔術の達人という設定である。町医者だから底辺の庶民の暮らしの中にいる。獄医なので犯罪仲間や冤罪等々凡そ世の事件の様々に関わるし医師だから彼らの本音と向き合いやすい。そして柔術達人なので、危ない橋を自ら渡り早急な解決も可能である。尚且つ、若いので、熟れた女房の女の匂いに敏感だったり、下宿先の姪となし崩し的に恋仲になったりする。清廉潔白のスーパーマンでないところに、読者の共感も得やすいだろう。本書が連作短編でありながら、四集まで続いたのも宜(むべ)なるかな。
なし崩し的に三集までレビューしたので、最終巻まで付き合うことにした。最終巻なので、最初叔父の娘の立場を傘に着て生意気だった小娘が、しおらしく甲斐甲斐しく恋する「女」になった。おちえの成長をも、見届ける事が出来た。祝着である。
一方、こんな描写もある。
うす暗い部屋の中に、彦蔵が寝ていた。その寝姿の薄さに、登は胸を衝かれた。部屋の中に、ふわりと夜具をひろげてあるだけのようで、その下に人間の身体が横たわっているように思えない。(「戻ってきた罪」より)
ホラーではない。胃癌で何も食べれなくなった人間は、そこまで痩せ細ることもあるのだ。若い頃サナトリウムにいた藤沢周平の実感だったかもしれない。死の間際の彦蔵の告白が登をして、のうのうと犯罪を続けるシリアルキラーに辿り着かせる。
或いは、こんな描写も。
登は立ちどまって女を見た。元気な人間の中に立ちまじっていると、病人は目立つ。まわりから孤立してさびしげに見える。そういう人間を何となく見過ごしに出来ない気持になるのは、格別登が医者だからというわけではない。性分である。もっとも立ちどまって、声をかけるとは限らない。大方はいっとき見送るだけに終わるのだが、それでも登は立ち止まらざるにはおられない。(「見張り」より)
近づくと女は酉蔵の女房だった。そこから酉蔵も関係する押し込みグループの逮捕に繋がってゆくのである。ただ、この登の「性分」は、おそらく藤沢周平の「性分」でもあったろう。エッセイの中で、娘に「普通」を忘れるな、と諭す文章がある。その普通とは、こういう女を「見守る」という普通なのである。藤沢周平の小説を読みながら、優しい気持ちになるのは、こういう箇所が、所々に現れるからである。
立花登の推理は、少し主観的な飛躍があるように思える。その割には好都合に早急な解決に向かってゆく。それは、登は十手持ちでもないし、第一短編だから尺の都合で仕方ないだろう、とも思う。ただ、藤沢周平は楽しんで書いているのが、ありありと見える。このクライムミステリー的な構成は、明らかに藤沢周平が大好物だった海外サスペンスの影響である。何度もテレビドラマ化されたのは、大まかな筋の骨格がしっかりしていたからに他ならない。
面白いよ
時代物の本を買ったのは、初めてだったけど、読んでて面白いと思った。
この本、シリーズものらしいから、他のも買ってみようと思ってる。
事件が短編で書かれてるから、どこから読んでもいいっていうのも読んでて楽かな。
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