あらすじ
子供をさらって手にかける老人の秘密。裁きを終えた事件の裏に匂い立つ女の性(さが)。小伝馬町の牢内に沈殿する暗く悲しい浮世の難事を、人情味あふれる青年獄医がさわやかに解決する。だがある日、かつての捕物の恨みから、登の命をもらうと脅す男が現れた――。著者が5年にわたって書き継いだ傑作シリーズ完結編。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
全巻を通してとても面白くこの巻で
最後かと思うと残念。
キラキラ輝いた青春の日々は終わりを告げ
最後にそれぞれの大人の道を歩んで行く事を
自覚する登。
おちえとの最後はちょっと切なく甘い。
Posted by ブクログ
獄医立花登手控えシリーズ第4巻完結。《女の部屋》病気の亭主に代って、店を取り仕切るおむらに挑みかかった槌屋彦三郎の頸をしめた手代新助は、情状を汲まれて八丈遠島と決まった。新助の身を案ずるおむら。裁きを終えた事件の裏に匂い立つ女の性。小伝馬町の牢内に沈殿する暗く悲しい浮世の難事を、人情味あふれる青年獄医がさわやかに解決する。だがある日、かつての捕物の恨みから、登の命をもらうと脅す男が現れた…。最終話《別れゆく季節》前巻から事件に巻き込まれたおあきも幸せをつかみ、登もついにちえとの距離がなくなり完結。
Posted by ブクログ
最後、泣きました。青年が大人になる、もう何の曇りもない若者では居られない、仲間で集まったあの気楽な日々は戻ってこない・・・と主人公が自覚するシーンが秀逸でした。いきものがかりの「Yell」の歌詞に通じるところがあるなあ。
Posted by ブクログ
立花登は、20代の若い町医者にして、獄医、そして柔術の達人という設定である。町医者だから底辺の庶民の暮らしの中にいる。獄医なので犯罪仲間や冤罪等々凡そ世の事件の様々に関わるし医師だから彼らの本音と向き合いやすい。そして柔術達人なので、危ない橋を自ら渡り早急な解決も可能である。尚且つ、若いので、熟れた女房の女の匂いに敏感だったり、下宿先の姪となし崩し的に恋仲になったりする。清廉潔白のスーパーマンでないところに、読者の共感も得やすいだろう。本書が連作短編でありながら、四集まで続いたのも宜(むべ)なるかな。
なし崩し的に三集までレビューしたので、最終巻まで付き合うことにした。最終巻なので、最初叔父の娘の立場を傘に着て生意気だった小娘が、しおらしく甲斐甲斐しく恋する「女」になった。おちえの成長をも、見届ける事が出来た。祝着である。
一方、こんな描写もある。
うす暗い部屋の中に、彦蔵が寝ていた。その寝姿の薄さに、登は胸を衝かれた。部屋の中に、ふわりと夜具をひろげてあるだけのようで、その下に人間の身体が横たわっているように思えない。(「戻ってきた罪」より)
ホラーではない。胃癌で何も食べれなくなった人間は、そこまで痩せ細ることもあるのだ。若い頃サナトリウムにいた藤沢周平の実感だったかもしれない。死の間際の彦蔵の告白が登をして、のうのうと犯罪を続けるシリアルキラーに辿り着かせる。
或いは、こんな描写も。
登は立ちどまって女を見た。元気な人間の中に立ちまじっていると、病人は目立つ。まわりから孤立してさびしげに見える。そういう人間を何となく見過ごしに出来ない気持になるのは、格別登が医者だからというわけではない。性分である。もっとも立ちどまって、声をかけるとは限らない。大方はいっとき見送るだけに終わるのだが、それでも登は立ち止まらざるにはおられない。(「見張り」より)
近づくと女は酉蔵の女房だった。そこから酉蔵も関係する押し込みグループの逮捕に繋がってゆくのである。ただ、この登の「性分」は、おそらく藤沢周平の「性分」でもあったろう。エッセイの中で、娘に「普通」を忘れるな、と諭す文章がある。その普通とは、こういう女を「見守る」という普通なのである。藤沢周平の小説を読みながら、優しい気持ちになるのは、こういう箇所が、所々に現れるからである。
立花登の推理は、少し主観的な飛躍があるように思える。その割には好都合に早急な解決に向かってゆく。それは、登は十手持ちでもないし、第一短編だから尺の都合で仕方ないだろう、とも思う。ただ、藤沢周平は楽しんで書いているのが、ありありと見える。このクライムミステリー的な構成は、明らかに藤沢周平が大好物だった海外サスペンスの影響である。何度もテレビドラマ化されたのは、大まかな筋の骨格がしっかりしていたからに他ならない。
Posted by ブクログ
「獄医立花登手控え」シリーズ完結編。
最終話「別れゆく季節」より
幼馴染のおあきを賊の手から救い出し、おあきや、従妹のおちえとの若き日々が終わり登も大坂に医術を学びに旅立つ。
「若さに任せて過ぎてきた日々は終わって、ひとそれぞれの、もはや交わることも少ない道を歩む季節が来たのだ。おあきはおあきの道を、おちえはおちへの道を。そして俺は上方に旅立たなければならぬ。」
「春秋の檻」にはじまったシリーズの4作は立花登青春記だったな。
面白いよ
時代物の本を買ったのは、初めてだったけど、読んでて面白いと思った。
この本、シリーズものらしいから、他のも買ってみようと思ってる。
事件が短編で書かれてるから、どこから読んでもいいっていうのも読んでて楽かな。
Posted by ブクログ
すべて読み終わってみて、感想を一言でいうと、さわやかな物語だった、ということ。
小伝馬町の牢獄医師という主人公の設定の他に、4冊それぞれのタイトルに「檻」という単語が用いられているので、窮屈で真面目な話というイメージもあったのだが、そんなことはまったくなかった。
なぜそういうタイトルにしたんでしょうね。
手品のように次々に物語が生み出されていくさまは圧巻ともいってよく、中井貴一主演でNHKでテレビドラマ・シリーズが作られたそうだが、それも当然である。
Posted by ブクログ
内容(「BOOK」データベースより)
子供をさらって手にかける老人の秘密。裁きを終えた事件の裏に匂い立つ女の性。小伝馬町の牢内に沈殿する暗く悲しい浮世の難事を、人情味あふれる青年獄医がさわやかに解決する。だがある日、かつての捕物の恨みから、登の命をもらうと脅す男が現れた―。著者が五年にわたって書き継いだ傑作シリーズ完結編。
Posted by ブクログ
子供をさらって手にかける老人の秘密。裁きを終えた事件の裏に匂い立つ女の性。小伝馬町の牢内に沈殿する暗く悲しい浮世の難事を、人情味あふれる青年獄医がさわやかに解決する。だがある日、かつての捕物の恨みから、登の命をもらうと脅す男が現れた―。
Posted by ブクログ
シリーズ最終巻。
子供が攫われ、身代金を払っても遺体で発見されるという痛ましい事件があり…。
牢医のまま終わるのかと思っていた。自分も先々のことを考えて動き出さないといけないなと考えさせられました。
Posted by ブクログ
前にも読んだ気がするけどと思いつつ読んだ。たぶんもう一度読んでも前にも読んだ気がすると思いながら読むだろう。そんな話。
ごく普通の町の人たちの物語。登が牢医で人情があるため囚人が気を許して犯罪の端っこの方を語ることが事件解決の糸口になっていく。何気ない話だけれど、登の人情がほっとさせてくれる。さすが藤沢周平さんだと思う。
けれどもインパクトがないので絶対にすぐに忘れると思う。