藤沢周平のレビュー一覧
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藤沢周平の連作時代小説『新装版 愛憎の檻―獄医立花登手控え〈3〉』を読みました。
『麦屋町昼下がり』、『春秋の檻―獄医立花登手控え〈1〉』、『風雪の檻―獄医立花登手控え〈2〉』に続き、藤沢周平の作品です。
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娘の病を治したお礼に未解決事件の情報を教えてくれた男が牢内で殺害される。
悠々と出牢した犯人を追い、登は江戸の町を駆けるが。
藤沢周平の代表的時代連作集「立花登」シリーズ全4巻の3巻目。
医者になる夢を叶えるべく江戸に出た登を迎えたのは、はやらない町医者の叔父と、口うるさい叔母、驕慢な娘ちえ。
居候としてこき使われながらも、叔父の代診や小伝馬町の牢医者の仕事を黙々とこなしている。
新しい女囚人おきぬは、顔も身体つきもどこか垢抜けていた。
下男を手なずけ貢がせるしたたかさに、登るは牢に入るきっかけとなる事件を探るが――。
起倒流柔術の妙技とあざやかな推理で、若き青年医師が、獄舎にもちこまれるさまざまな事件を解いていく。
『愛憎の檻』には、「秋風の女」「白い骨」「みな殺し」「片割れ」「奈落のおあき」「影法師」の6篇を収録。
1982年に中井貴一主演で連続ドラマ化。
そして2016・2017年に溝端淳平主演で、NHK BSプレミアムにて連続ドラマ化。
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講談社発行の月刊小説誌『小説現代』の1981年(昭和56年)1月号から1982年(昭和57年)1月号に『青年獄医立花登』というタイトルで連載された後、1982年(昭和57年)に改題して刊行された作品、、、
叔父・小牧玄庵を頼り東北の小藩から江戸へやってきて伝馬町牢屋敷にて獄医を務めることとなった若い医師・立花登が、囚人たちにまつわる事件を得意の柔術と推理で次々に解決していく姿を描く、獄医立花登手控えシリーズの第3作です。
■秋風の女
■白い骨
■みな殺し
■片割れ
■奈落のおあき
■影法師
■中井貴一インタビュー
柔術と推理で悪に迫る立花登の活躍! 娘の病を治したお礼にと、登に未解決事件の情報を教えてくれた男が牢の中で殺された……大胆な殺しの後、ゆうゆうと出牢した犯人を追い、登は江戸の町を駆ける、、、
家では肩身の狭い居候だが、悪事には敢然と立ち向かう若き牢医師・立花登が、得意の柔術と推理で事件を解き明かす……大人気時代連作第3弾。
本シリーズも3作目、作品の中にどっぷり入り込んで愉しんでいます……本作品では、
女牢に新しく入った性悪女おきぬに骨抜きにされた下男・佐七……登が佐七の危機を救うのですが、結末でおきぬが意外な本心を吐露する展開が印象的な『秋風の女』、
入牢前から家出をしていて長年妻のおむねと離れ離れだった辰平……出牢後におむねの元へ戻るも殺され、骨壺に入った辰平と2人だけの時間を惜しむおむねが健気で、結末後の余韻が心地良い『白い骨』、
登は、稀に見る悪相の男の金瘡を手当てした数日後、小伝馬の牢に夜盗の片割れで金瘡を持つ男が入牢してきたことから、まだ逃げ回っているらしい片割れの夜盗に悪相の男の顔を重ね合わせ不安になるが……登の思い過ごし、ほのぼのとして、ややコミカルな結末が印象的な『片割れ』、
おちせは加賀屋伝助を出刃包丁で刺して入牢したが、刺された本人伝助の嘆願によって軽い刑で済み出牢……牢を出た日、恋仲の杉蔵は現れず、加賀屋の駕籠が現れておちせを押し込めようとして、登はすんでのところでおちせを助けるが、その後おちせの行方が分からなくなる、おちせが母の死に不審を持ったことから始まった事件の意外な結末が愉しめる『影法師』、
あたりが印象に残りましたね……叔父宅での登の存在感も徐々に増してきて、従妹おちえとの関係も良くなってきましたねー 次作が最終巻、どういう結末を迎えるのか愉しみです。 -
Posted by ブクログ
立花登は、20代の若い町医者にして、獄医、そして柔術の達人という設定である。町医者だから底辺の庶民の暮らしの中にいる。獄医なので犯罪仲間や冤罪等々凡そ世の事件の様々に関わるし医師だから彼らの本音と向き合いやすい。そして柔術達人なので、危ない橋を自ら渡り早急な解決も可能である。尚且つ、若いので、熟れた女房の女の匂いに敏感だったり、下宿先の姪となし崩し的に恋仲になったりする。清廉潔白のスーパーマンでないところに、読者の共感も得やすいだろう。本書が連作短編でありながら、四集まで続いたのも宜(むべ)なるかな。
なし崩し的に三集までレビューしたので、最終巻まで付き合うことにした。最終巻なので、最初叔父の娘の立場を傘に着て生意気だった小娘が、しおらしく甲斐甲斐しく恋する「女」になった。おちえの成長をも、見届ける事が出来た。祝着である。
一方、こんな描写もある。
うす暗い部屋の中に、彦蔵が寝ていた。その寝姿の薄さに、登は胸を衝かれた。部屋の中に、ふわりと夜具をひろげてあるだけのようで、その下に人間の身体が横たわっているように思えない。(「戻ってきた罪」より)
ホラーではない。胃癌で何も食べれなくなった人間は、そこまで痩せ細ることもあるのだ。若い頃サナトリウムにいた藤沢周平の実感だったかもしれない。死の間際の彦蔵の告白が登をして、のうのうと犯罪を続けるシリアルキラーに辿り着かせる。
或いは、こんな描写も。
登は立ちどまって女を見た。元気な人間の中に立ちまじっていると、病人は目立つ。まわりから孤立してさびしげに見える。そういう人間を何となく見過ごしに出来ない気持になるのは、格別登が医者だからというわけではない。性分である。もっとも立ちどまって、声をかけるとは限らない。大方はいっとき見送るだけに終わるのだが、それでも登は立ち止まらざるにはおられない。(「見張り」より)
近づくと女は酉蔵の女房だった。そこから酉蔵も関係する押し込みグループの逮捕に繋がってゆくのである。ただ、この登の「性分」は、おそらく藤沢周平の「性分」でもあったろう。エッセイの中で、娘に「普通」を忘れるな、と諭す文章がある。その普通とは、こういう女を「見守る」という普通なのである。藤沢周平の小説を読みながら、優しい気持ちになるのは、こういう箇所が、所々に現れるからである。
立花登の推理は、少し主観的な飛躍があるように思える。その割には好都合に早急な解決に向かってゆく。それは、登は十手持ちでもないし、第一短編だから尺の都合で仕方ないだろう、とも思う。ただ、藤沢周平は楽しんで書いているのが、ありありと見える。このクライムミステリー的な構成は、明らかに藤沢周平が大好物だった海外サスペンスの影響である。何度もテレビドラマ化されたのは、大まかな筋の骨格がしっかりしていたからに他ならない。 -
Posted by ブクログ
(1)で止めようと思ったのだけど、ブリが付いてやめれなくなった。若いイケメン獄医と不良娘あがりの美人の従姉妹との進展も気になり、本巻はまるまる五つの短編を通して獄医の柔術仲間・新谷弥助の転落を後一歩で止めるという顛末も描かれていた。次第とシリーズモノらしき仕掛けも増えてくる。
文庫うしろにある年譜を見ると、1978年「小説現代」に連載を始めた頃、藤沢周平は月に2つも3つも短編を書いていて「隠し剣」や「用心棒日月抄」シリーズを次々と産み出していた。80年6月に(1)を刊行、81年3月にこの(2)を刊行している。脂の乗り切った頃の作品である。
それぞれに哀しい女が出てくる。
悪人を避けて何度も転居を繰り返す女。
ホントは隣の牢にいるのに、男の中では清いままの女。
(1)で入牢していたおしんが、少し元気になっていた。
登もいったんは騙される「化粧する女」。
夫を冤罪で嵌められているのに、色男に騙される妻。
藤沢周平の筆は凡ゆるタイプの女を描くが、その「真相」を突き止めるのは、「コイツホントに女の心のヒダはわかっているのか」と疑問を抱くような若い獄医である。
主人公だし、イケメンだし、基本は正義感溢れる人情篤いいい男なので、こういう評価はほとんどないとは思うのだが、立花登は基本「むっつりスケベ」である。それはラストのページに現れている。立花登の行為は、むかしは許されていただろう。現代果たして許されるのだろうか?少し気になる。
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Posted by ブクログ
「獄医立花登手控えシリーズ」全四巻の第三巻です。
起承転結に当てはめれば「転」のはずですが、むしろ少々中だるみ感が有ります。
不良娘だった従姉妹のおちえもすっかり大人しく、悪く言えば平凡になり、口煩かった叔母も登に頼る事が多くなって、そのぶん登を大切にするようになって、なんだか淋しい(笑)。登の身辺が波立たなくなると、どうしても捕物要素頼りになってしまいます。
代わってと言えば変ですが、おちえの友達が活躍。「片割れ」ではおちえの最近の友・おちかのとんでもない悪相の亭主が捕物を惑わせ、「奈落のおあき」では昔の友で登に懸想するおあきの転落が描かれます。
とは言え、単純明快な捕物に仕立てること無く、そこに僅かな苦みや哀しみを上手く混ぜ込むとことろは流石です。 -
Posted by ブクログ
「獄医立花登手控えシリーズ」全四巻の第二巻です。
何度目かの再読です。新装版では無く、昭和58年の講談社文庫の第一刷。本は崩壊寸前です。
主人公の登は牢医という仕事にもすっかり慣れ、時には与力にも強く抗議するまでになっています。また、蓮っ葉だった従姉妹のおちえは事件に巻き込まれた(前巻)事に反省したのか、次第に落ち着いてきます。なんと、これまで呼び捨てにしてたのが「登兄さん」と呼ぶようになり、登もまんざらでは無いようです。
登と共に鴨居柔術道場の三羽烏の一人である新谷弥助の行状不良を背景にして、牢内の罪人たちの話を聞き、例によっておせっかいにも首を突っ込み、事件を解決して行く連作短編です。
丁度、2016年にリメイクされたNHKドラマが再放送されていて、家内と話になっりました。知りませんでしたが、家内もこの小説が好きで何度も再読したとの事。珍しい事も有るものです。