藤沢周平のレビュー一覧
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ネタバレ本作は昭和48年〜51年にかけて「小説現代」にて発表された8篇の短編小説集。つまり、作者が48歳〜51歳頃の書き盛りの作品集でもある。
作者が生涯に発表した短編小説は数知れず、従って玉石混交があるのも致し方ない。とはいえ、完全な駄作というものが少ないのが作者の強み。
また、多くの出版社から短編集が編纂発行されているので、短編集によってはダブった作品もちらほら散見。私の様に、一度読んだものを忘れやすい人間には、再読のチャンスだとありがたく拝読させていただくが…
個人的に(藤沢周平作品の中で)本作の面白さに上中下をつけるなら、中の上かな。
特に「入墨」「冤罪」「暁のひかり」「雪明かり」の出来がよく、「遠方より来る」が再読でした~。
駒田信二氏の解説と巻末の年譜が充実しているのもありがたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ初めての藤沢周平作品だったけど、読みやすく面白かった。
各話に美しい女性が現れ、どの女性も又八郎のことを憎からず思っているのはちょっと面白かった。男性が考える理想のモテ方を主人公がしていた。
その又八郎の男ぶりの良さが、信頼のおける主人公へグレードアップさせている。
特に、普段若い男性と話す機会がなく、又八郎と話すときにはしゃいでいる若い女の子の描写などは、世慣れた男性の視点だなと思ったし、女性の目線から見ても、あるわ…という感じで又八郎の小慣れた視点はやはりモテを感じる。
彼の生活の仕方も、仕事は一所懸命やる、でも余裕があるときはダラダラもする、懐が寂しいときは寝るしかしないなど、一貫して態度がさっぱりしており、そこにも好感がもてる。
剣術もすげーし女にモテるし誠実だし、非の打ち所がありませんってところは王道っぽいキャラクター作りだけど、一方で作者や時代の好みも反映されてる感じもあり、時代小説ってロマンを盛り込む枠組みとして有効なんだなあと感じた。
あと初めて侍が主人公の小説を読んで新鮮で面白かったのは、殺陣の描写。意外とすぐスパッと人を斬るし、斬られるし、殺す。時代劇の殺陣って派手に見せるために長尺なことが多いけど、この小説ではほんの一瞬の出来事として描かれている。あとは、刀を抜いて相手と向き合ったときの描写が面白かった。強者と対峙したときのその強さの言語化ってこんなふうにするんだ、と新鮮だった。
「鈍く光る一本の剣の陰に、塚原の五体はほとんど隠れるばかりに圧縮されてみえる。その姿勢が、すさまじい弾力を秘めていることは明らかだった(p.298)」
でも相手の描写がどんなに強そうでも、又八郎が負けることは絶対にあり得ないと途中からわかったので、ハラハラすることはあんまりなかった。
逆に相手から又八郎はどんなふうに見えてるんだろう。
そのうち続編も読みたい。細谷とのコンビけっこう好き。 -
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藤沢周平の2冊目、やはり超娯楽作品で楽しめました。
どの話も愛すべきキャラクターの設定で、しみじみ佳かったですが、私は最後の「祝い人助八」のラストシーンにグッときました。
でも(どの話も)結局は「剣の力」で解決なんですよね。(時代劇だから仕方ないのかもしれないですが)
「剣」の無い私は何で勝負できるかなぁ。
勝負しなくても(勝てなくても)良いかぁ。命を取られることはないしね。
【追記】
調べてみたら映画「たそがれ清兵衛」では、「祝い人助八」のエピソードも組み込まれているらしいです。映画を見た方おられるかな?
見ようか、見ない方が良いか迷っています。 -
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以前、蝉しぐれの周辺を調べた際に、蝉しぐれの映画化の折に出版されたムック本で、作家たちが好きな藤沢作品は?ときかれて、この本を挙げるひとが多いのをみて、私も気になって読んでみた。
事情があって脱藩した青江又八郎が、江戸に出て、ちょっとわけありな仕事斡旋業者、相模屋のタヌキ親父・吉蔵に頼んで、主に用心棒稼業を世話してもらいながら、そこでのアクシデントを体験していく連作集。
そのなかで、浅野家の浪人たちが吉良邸への討ち入りを計画していることと関わっていく。
同僚、細谷もユーモラス。全体にシニカルな明るさがある。
デビュー以降、暗い作風が続いた藤沢作品が、ここから転換点を迎えたと表される作品で、確かに明暗、重軽、乾湿のバランスが絶妙な作品。
奇妙な縁で、浅野の浪人たちを見知っていた又八郎が、討ち入りののち、本懐を遂げて練り歩く彼らを見た独白。
堀部にしろ、大石にしろただの男たちだったと思い返すと、命をかけて復讐ということを仕とげた男たちのけな気さが胸にせまってくるようだった。(p461)
国許に変えるも、意外にアッサリしたラストに驚き。
最後の女暗殺者はなんだろう?おりんはどうなったんだろう?
主人公が特になんの努力もなく、女にモテやすいのは藤沢作品共通のナゾ。 -
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新井白石ってすごい人だったんだなぁ、というのが感想。
下積みを経て徳川家宣に信頼され重用を受け幕府の頭脳とも言える働きをし家継の世もサポートして、白石がいなければ日本はどうなっていたのだろうと思わせる存在になりながら吉宗の世になると一気に凋落と言って良いような扱いを受けるようになる。弊履を捨つるが如き扱い。
1人の人間の栄枯盛衰、かくも残酷なものか。
講談社文庫で読んだので伊集院静さんの解説が巻末にあった。
これが良い。
藤沢周平ファンの思いを代表して語ってくれている。
フランスの日本料理店で初めて藤沢周平さんの用心棒日月抄に触れてから一気にファンとなってのめり込んでいったエピソードには「そうそう、私もおんなじ」という声が聞こえてきそうです。 -
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藩主暗殺の陰謀を知ってしまった故に許嫁の父を斬り脱藩、刺客に追われる身となった青江又八郎。
江戸の裏長屋に暮らし、用心棒稼業で糊口をしのぐが、浅野内匠頭の刃傷事件からの浅野浪士討ち入りの噂が流布するにつれ、請け負う仕事に浅野、吉良両家の争いの匂いが立ち込める。
10篇の連作は忠臣蔵に関わる浅野浪士の動きと心情をとらえている。
そして青江個人は用心棒生活を続けるうちに時として感じる堅苦しい侍暮らしからの解放感と、そんな暮らしに満足してしまいそうな堕ちていく自分を良しとしないせめぎあいに心を痛める。
許嫁の娘が自分を仇として討ちに来るならば討たれようという気持ちになる理由の一つにはそんな自分の人生を終わらせたいという思いがあるのではないかと感じた。 -
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娘たちを捨てた父親が最後に娘たちのための一太刀が感動を呼ぶ「入墨」。とあるところでの武家の妻女との出会いから救うための算段をする町人・浅次郎と武士・塚本伊織の物語「穴熊」は爽やかさと、割り切れなさがそこはかとない叙情を感じる。従姉との心の絆が微笑ましく、色っぽさを感じさせる「恐喝」など。「冤罪」は道すがら会う女性に魅かれ、その父親の冤罪を追う源次郎。「暁のひかり」は病気から立ち上がろうとする小娘に会う都度優しい心になるやくざの市蔵。「遠方より来る」は招かざる客が押し掛けてきた何とも言えない滑稽な状況が可笑しい。主人公の人の良さが見事に描かれている。 表題作は血の繋がらない義妹との心の通い合いと、新しい世界へ跳ぶ決断のときを見事に描き出している。どれも登場する人物、特に女性たちの描きが秀逸で、魅力的。そしてそこはかとなく哀しい無常感が美しい。