原作者に「井手久美子」とあるが、この人こそが作中に出てくる「久美子様」その人。
江戸幕府最後の将軍徳川慶喜の七男で、徳川慶喜公爵家2代目となった徳川慶久の四女にあたる女性。
彼女は2018年7月に95歳で亡くなったが、その1ヵ月前に「徳川おてんば姫」という自叙伝を出しており、本作はこれを原作
...続きを読むとしているのだろう。
まず、絵は少女マンガっぽい雰囲気で、非常に読みやすい。
また、本人が原作とあってか時代考証等もしっかりしており、当時の華族の生活を知るうえで興味深い作品。
一方で、当時の華族は「夢のような貴族生活」を送れたわけではない。
実際、「久美子様」の兄で徳川慶喜公爵家3代の徳川慶光は公爵の身分でありながら最下層の陸軍2等兵として徴兵され、実際に戦地に赴いている。
「久美子様」自身も疎開時代は苦しい生活を強いられ、最初の結婚相手が戦死するという苦労も味わっている。
そして戦後は一般人としての生活。
元々「お姫様」であっただけに、そして姉(次女喜久子)が高松宮宣仁親王妃として皇族になっているだけに、そのギャップは大変だったと思われる。
原作ではそのあたりまで触れられているようなので、本作も連載が続けば戦時中~戦後の激動期も語られると思う。
なかなか一般に知られていない内容の話として、歴史好きならぜひ読んでもらいたい。