能田優のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ始まってすぐに亡くなった養父をゴミ袋に入れ焼却炉で火葬する。このスピード感がずっと続く。
過保護に育てられてきたサリーの人生がここから動き出す。
彼女の壮絶な過去を少しずつ明らかにしつつ、自分をコントロールしようと奮闘するサリーの日々が恐ろしいくらい面白い。
が、この小説はあらすじでは明かされていない事件が、終わりまでずっと展開するけど、この描写が無理な人は読むのは無理かもしれない。
ルームという映画が近い話になると思う。
この映画を一緒に見ようとした友達は始まってすぐに見るのをやめて退席した。
登場時のサリーは42歳、この年齢でこの設定は珍しい。
読んでいると彼女に肩入れしたくなるが、感情移入をさせないような行動を起こし、不安にさせてくる。
トビーが警察に勝手に送られる場面、終盤のクリスティン叔母さんへ怒る場面なんかサリーが本当に恐ろしく思える。
町に住むキャラクターもみんな印象的、すごく暖かく優しい人たちばかり。
彼らとの交流がやっと実を結んでサリーの生活が幸せと呼べるものになりかけては無情にも崩れる。
この話でハッピーエンドにならないってまじかよ!ささやかすぎる希望のような話で終わるけどこれでは読んでいる自分が救われないw
サリーの物語はまだ途中なのに放り出されたような気分。
今年読んだ中で1、2を争う面白さだった。 -
Posted by ブクログ
ジェイ・カシーム三部作の二作目ということである。前作のラストは異様であった。本作はそれを継いで始まる。ぼくは前作で、町の移民である若者ジェイが悪を倒すために国家的組織に利用される構図を、『傷だらけの天使』のヒーロー修とアキラの兄弟に例えてしまったのだが、それは本作でもあまり変わぬ印象のまま。
『傷だらけの天使』という稀代のTVドラマをかつて青春真っただ中で体感したぼくには、木暮修たちは純情なコアの部分を持ちながら青春を精いっぱい生きる若者たちであるにも関わらず、東京という大都市に蠢く大人たちの欲望や駆け引きに否応なく利用されてしまう悲しき天使たちとして描かれていた。等身大のヒーローならまだしも、社会の底辺で、教育もなければ立派な家庭もなく、到底平均生活レベルに達していない純情な青年たちであるように見えた。
さて本作だが、イギリスに移民として暮らすイスラム社会の若者たちと対照的に、イスラム移民たちを極度に差別してテロに走る歪んだ白人青年たちの世界をも同時並行的に描くことで、より二極化した対立構造が浮き彫りになっているところが特徴である。しかも若い世代間でのストレスの捌け口としての人種差別が、誤ったヒーローイメージを作り出し、人種が異なるということだけで嘲りや暴力の対象としてしまう。この辺りから物語は、平和な国ニッポンの『傷だらけの天使』の世界をぐっと離れて、よりきな臭く、根深く見えてきた国際問題・人種問題を孕む現代的対立構造へと傾斜してゆく危険な風景として見えてくる。
乾いた暴力の残酷さを露にする子供たち。彼らを操る冷血な大人たち。彼らのふるう暴力によって犠牲となる無垢な異人種の子供たちの運命をも過酷なまでに描いら印象的な悲劇として本書の前段の中心に持って行く。平均的日本人が知るイギリスとは全く異なる闇の部分をぼくらは読まされることになる。ずんと来る衝撃のような感覚。
本書では、二つの一人称が並行する。「おれ」で描かれるジェイに加え、「わたし」で描かれる複雑な二重生活の青年イムラン。さらに白人のテロ組織に勧誘されかかっている少年ダニエルが三人称で登場。それぞれの章は、最初は独立して描かれてゆくのだが、彼ら三人の運命は、血と憎悪とヘイトと暴力によって徐々に物語の核となる場所へと手繰り寄せられてゆく。
トライアングル構造のこの三人主人公で物語を進めることにより、本書は前作よりもさらに奥行きのある立体構造を持つ。イギリスという国における宗教や人種の問題の複雑さ、またそこに住む者たちの分断や苦しみを日常レベルで表現しているように思う。一方の側からだけではない三つの視点を経験しつつ、またもクライマックスの新たな大規模テロ事件へと本書は疾走し続ける。
前回とは異なるスリルと厚みを持った二作目の本書。暴力の風が吹き荒れる国で懊悩する青春群像と、そこに蠢く魑魅魍魎のような仕掛け人たちの冷たい暴力装置に目を向けつつ、自分が自分であることに拘る主人公・ジェイたちの、独自としか言えない青春冒険小説が再び発火する。緊迫感が増し増しの第二作となった本作。注目あれ! -
Posted by ブクログ
ネタバレ敬虔、とはいえないムスリムでありドラッグの売人でもある主人公がMI5にスカウトされて、イスラム過激派のグループに潜入する。
なぜ彼がスカウトされ、なぜスムーズにグループに招き入れられたのか?一つのパズルがきちっと嵌り、ストーリーがしっかりと動き出す。
根底にあるイスラムの物語の上に、主人公の軽妙さや周囲の人間との結びつきが描かれ、スピーディーな展開で面白い。
主人公はチャチな悪党かと思いきや、母や友達を大事に思い、正義感をもった人物で本当に魅力的。
翻訳が素晴らしい。
が!ラスト!嫌な予感はしてたけど。
これは一体どうなるの…?
ここで終わるっていうことは、そういうことなんだろうけど、でもこれじゃあ無理では…。
早く、早く続きを…! -
Posted by ブクログ
イギリス在住の作者クラム・ラーマンはパキスタンはカラチ生まれ。一歳で英国移住、ロンドン育ちの現在はIT企業会社役員、という珍しい肩書の新人作家だ。本書は、作者お馴染みの、ロンドン西部の移民率が高い自治区にあるハウンズロウに育ったムスリムの青年たちの日常からスタートする。
主人公のジェイ・カシームは麻薬の売人だが、友人の一人は警察官、もう一人はテロリストキャンプにまで参加する民族主義者。再婚相手ができたばかりの母は冒頭からカタールに引っ越ししてしまい、父なし子のジェイは、初めての独り立ちを迎える。
本書はそうした環境下で、青春小説、成長小説としての基盤を持ちながら、大枠ではイスラム・テロを主題として扱ってゆく。ジェイは独りになった途端、麻薬の元締めに追われ危機を迎え、MI5のテロ対策室メンバーから唐突なスカウトを受ける。
そう。これは青春小説であると同時に、スパイ小説でもあり、最後は大掛かりなテロ計画とそれを阻止しようと動くMI5や、その中心になぜか巻き込まれてしまったジェイを描く壮大な冒険小説でもあるのだ。平凡な警察小説でもミステリーでもなく、今時珍しいれっきとしたスパイ・アドベンチャー・アクション!
最初に言うべきだったが、本書は、ひとたびストーリーに入り込むとなかなか読みやめることができなくなる超面白本である。
ハイテンポな描写力。見知らぬ情報世界の闇の深さ。テロの裏側へのスリリングかつ初心者主人公による潜入の奇抜さ。警官やテロリストであるご近所の友人たちとの駆け引き。そして主軸となるテロ計画への導線と時間単位での息を飲むその結末。それら、スケールある題材やアクションを、離れた第三者視点の中に、二十代の若者の視点を交えながら描き切っているところが秀逸なのだ。
面白いのは、ある部分はジェイの一人称で、ソフトかつ時にはユーモラスな視点で移民たちの文化、家族の歴史を綴ってゆく部分。それとは逆に、三人称で描かれるMI5を含めた大人たちの側からは、ジェイの勧誘に至る経緯や、テロの実行に至るスピーディな流れが、物語に変則的なリズムを与える。ジェイの内と外と、まさに両側から描かれる立体感である。どうにも緊張と面白さに震えるこの最終部分がたまらない。
さらにラストのラストは、ショッキングだが、あとがきを見てなお唖然! ネタバレに触れそうなので言えません。ここでは、次作の翻訳も決まっているとのこと、その作品への期待感と強い好奇心とをお伝えできれば、と思う。
☆もう一つ気になる視点からのレビューを以下に追加します!
おかしいかもしれないが、ぼくの印象では、主人公ジャヴィド(ジェイ)・カシームは、ムスリム版『傷だらけの天使』木暮修である。舞台は英国。イスラム過激派のテロ組織という、木暮修には荷が重いくらいの相手だが、彼を起用するのはジェイムズ・ボンドが在籍したMI5。世界中で一番有名なスパイアクションの胴元なのだ。
そうなるとスケールとしては『傷だらけの天使』よりずっと大掛かりじゃないか、との声が聴こえてきそうだ。しかし、そうでもない。主人公は、大人になり切れていない不幸な家庭の一人息子だ。でも愛の対象であるママはどんな形であれ存在しているのは、木暮修よりずっと有利に働く。でも彼が生業としているドラッグ売人は木暮修の探偵助手という職業より、ずっとずっと腐敗していて、かつ危険だ。
何も『傷だらけの天使』と比較しなくても良いのだろうけれど、読むにつれますます比較したくなってくる。きちんとした将来が見据えられない青春の時代、傷ついた心が求める何ものかを、利用する誰かがいて、利用される若い主人公はすべての傷を負い、叫ばざるを得ない。そうした環境自体が両方の作品を印象として繋ぐのだ。そして愛せる。ここは重要ではないだろうか? 両作品に通停する魅力の在処として。如何? -
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ネタバレ幼児誘拐、監禁、虐待、女性蔑視などなど、テーマがとても重いんですが、サリーの独特な会話(あまりにストレートすぎる言い回しなど)やブラックユーモアが溢れていて暗くて重い内容も少し緩和されている。
1人称語りで作品が進んでいくこともあり、グイグイ引き込まれて一気読みではなかったけれど、ページをめくる手が止まらなくなりました。
ただ、終盤にかけてサリーは以前のようにまるで聾唖者のように振る舞い、ピーターは実の父のような怪人になるべく負の連鎖は断ち切れていないようだし、ピーターの娘が自分の本当の両親については面倒だから暴かれたくはないけれど、自分の将来のためには『物語』も必要ってちょっと打算的で、現実はそんな簡単に綺麗に解決もしないし、トラウマの連鎖は断ち切れない冷徹な感じがするけど、実際はそうなんだろうなって。朝井リョウさんの作品みたいだなあって読後に考えていました。 -
Posted by ブクログ
聡明な少女が連続猟奇殺人事件に挑む
テーマがテーマなだけに、死体の腐敗や損壊の描写がエグく、やや読む人を選ぶかもしれない。
少年が狙われる連続猟奇殺人事件を巡る物語。舞台は80年代のイギリス、バーミンガム。複数の人物の視点から描かれる重厚なミステリーだ。600ページ以上ある。
メインの視点は犯罪史や解剖学に詳しい少女・エイヴァ。匿名で提供される彼女の知識や情報には警察も舌を巻く。
二番手は善良な刑事のデライエ。エイヴァを信頼し、また市民と良好な関係を築くのがうまく、事件の情報を集めていく。
とにかく邦題がかっこいい。センスにあふれている。動物が鍵となる本作だが、邦題はエイヴァのパーソナリティに焦点を当てている。
子どもが活躍する物語ということで、ワクワクしながら読める。
エイヴァは特殊な興味や知識を持つ少女だが、友人のジョンの前以外では死骸への興味を表に出さないので、異物扱いされることは基本的にない。自身の身の振り方を考えている聡明な少女だ。
それでも、家族との関係や殺人事件への恐怖などに神経をすり減らしているところは年相応の子どもである。
一方のデライエは、子どもが凶悪な事件の真相に首を突っ込むことの危険性をよく理解している。いくら聡明なエイヴァといえど、力のない少女だ。
それ故に、物語が大きく動く終盤の緊迫感はとてもハラハラする。
少年の死体に添えられた犬の死骸。死体に残された噛み跡や、謎の生き物の目撃情報。地域に暮らす小児性愛者。ある事件の現場の所有者である認知症の老人。そして読者にだけ明かされる、ある人物の行動の不審さ。
本作では、様々な情報が渦巻く複雑な事件が丁寧に描かれていると思う。 -
Posted by ブクログ
冒頭から不穏な感じで惹きつけられます。早々に犯人がわかる設定、むしろわかるようにしているのかな、と。犯人がどうしてああなったのか描写するのがメインだったような。映像にしちゃえば荒唐無稽、CG満載B級チックですが、そうなった背景があるのだと文章で説明することで重みが生まれたように思います。こうした作品でいつも思うことですが、家庭環境が酷すぎると子どもは逃避せざるを得ません。エイヴァの知識が光りますが、あれほどクレバーになったのは彼女の持ち前の聡明さもさることながら家庭環境がそうさせたのでしょう。それを思うと悲しくなります。犯人もそう。非常にヘビーな場面が多々登場し、この邦題は可愛すぎるのでは、と思いましたね。エイヴァにまた会いたいけれど、これ以上重い事件に遭遇させるのも辛いです。
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Posted by ブクログ
ネタバレ面白くて読み進める手がとまらなかった。読み終わるのが寂しいと思ったほど。でもラストが…以下完全にネタバレです。
ラストがどうにも理解できなかった…非常にモヤモヤする。小児性愛者のコナー・ギアリーが当時11歳だったデニースから人生を奪いめちゃくちゃにしておきなながら、さらにその後誘拐したリンディの人生も奪っておいて、逮捕されて社会的制裁は一切受けず息子の車での事故であっさり亡くなるなんて罰としてぬるすぎるし、息子のピーターもリンディを解放せず最後は死なせたくせにこちらも制裁を受けずに野放し。幼い少女2人が本来は家族と過ごせるはずだった人生を完全に奪われ、デニースは自殺、リンディは再会すらできておらず病死。なんて救いのない話なんだろう。
ミステリーお決まりの勧善懲悪ではなく悪が裁かれないオチって最近流行ってるのかな?