あらすじ
CWA賞&MWA賞ダブルノミネート!
イスラム過激派による
テロの緊張が高まるロンドン。
MI5が命運を賭したのは、
モスクに通う麻薬の売人だった――
各賞ノミネート、鮮烈なデビュー作!
2018年CWA賞新人賞最終候補
2019年シークストン・オールドペキュリア犯罪小説オブ・ザ・イヤー賞最終候補
2021年MWA賞ペーパーバック部門最終候補
「飛び抜けた魅力。新進気鋭のスリラー作家の登場」 デイリー・メール紙
「アクション・スリラーであり、青春小説。完全に心?まれる」 ガーディアン紙
ロンドンにあるモスクが人種差別主義者たちに荒らされた。
モスクに通う“敬虔な”ドラッグの売人ジェイ・カシームは怒りを覚えながらも、
同胞の過剰な反撃に疑問を抱く。
そんなとき、麻薬密売の容疑で逮捕されたジェイは、
無罪放免と引き換えにMI5の一員となってテロ対策に協力するよう命じられる。
やがてイスラム過激派の中枢部に迫るにつれ、
無差別テロが現実味を帯びていき――。
英国発の話題作!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
敬虔、とはいえないムスリムでありドラッグの売人でもある主人公がMI5にスカウトされて、イスラム過激派のグループに潜入する。
なぜ彼がスカウトされ、なぜスムーズにグループに招き入れられたのか?一つのパズルがきちっと嵌り、ストーリーがしっかりと動き出す。
根底にあるイスラムの物語の上に、主人公の軽妙さや周囲の人間との結びつきが描かれ、スピーディーな展開で面白い。
主人公はチャチな悪党かと思いきや、母や友達を大事に思い、正義感をもった人物で本当に魅力的。
翻訳が素晴らしい。
が!ラスト!嫌な予感はしてたけど。
これは一体どうなるの…?
ここで終わるっていうことは、そういうことなんだろうけど、でもこれじゃあ無理では…。
早く、早く続きを…!
Posted by ブクログ
イギリス在住の作者クラム・ラーマンはパキスタンはカラチ生まれ。一歳で英国移住、ロンドン育ちの現在はIT企業会社役員、という珍しい肩書の新人作家だ。本書は、作者お馴染みの、ロンドン西部の移民率が高い自治区にあるハウンズロウに育ったムスリムの青年たちの日常からスタートする。
主人公のジェイ・カシームは麻薬の売人だが、友人の一人は警察官、もう一人はテロリストキャンプにまで参加する民族主義者。再婚相手ができたばかりの母は冒頭からカタールに引っ越ししてしまい、父なし子のジェイは、初めての独り立ちを迎える。
本書はそうした環境下で、青春小説、成長小説としての基盤を持ちながら、大枠ではイスラム・テロを主題として扱ってゆく。ジェイは独りになった途端、麻薬の元締めに追われ危機を迎え、MI5のテロ対策室メンバーから唐突なスカウトを受ける。
そう。これは青春小説であると同時に、スパイ小説でもあり、最後は大掛かりなテロ計画とそれを阻止しようと動くMI5や、その中心になぜか巻き込まれてしまったジェイを描く壮大な冒険小説でもあるのだ。平凡な警察小説でもミステリーでもなく、今時珍しいれっきとしたスパイ・アドベンチャー・アクション!
最初に言うべきだったが、本書は、ひとたびストーリーに入り込むとなかなか読みやめることができなくなる超面白本である。
ハイテンポな描写力。見知らぬ情報世界の闇の深さ。テロの裏側へのスリリングかつ初心者主人公による潜入の奇抜さ。警官やテロリストであるご近所の友人たちとの駆け引き。そして主軸となるテロ計画への導線と時間単位での息を飲むその結末。それら、スケールある題材やアクションを、離れた第三者視点の中に、二十代の若者の視点を交えながら描き切っているところが秀逸なのだ。
面白いのは、ある部分はジェイの一人称で、ソフトかつ時にはユーモラスな視点で移民たちの文化、家族の歴史を綴ってゆく部分。それとは逆に、三人称で描かれるMI5を含めた大人たちの側からは、ジェイの勧誘に至る経緯や、テロの実行に至るスピーディな流れが、物語に変則的なリズムを与える。ジェイの内と外と、まさに両側から描かれる立体感である。どうにも緊張と面白さに震えるこの最終部分がたまらない。
さらにラストのラストは、ショッキングだが、あとがきを見てなお唖然! ネタバレに触れそうなので言えません。ここでは、次作の翻訳も決まっているとのこと、その作品への期待感と強い好奇心とをお伝えできれば、と思う。
☆もう一つ気になる視点からのレビューを以下に追加します!
おかしいかもしれないが、ぼくの印象では、主人公ジャヴィド(ジェイ)・カシームは、ムスリム版『傷だらけの天使』木暮修である。舞台は英国。イスラム過激派のテロ組織という、木暮修には荷が重いくらいの相手だが、彼を起用するのはジェイムズ・ボンドが在籍したMI5。世界中で一番有名なスパイアクションの胴元なのだ。
そうなるとスケールとしては『傷だらけの天使』よりずっと大掛かりじゃないか、との声が聴こえてきそうだ。しかし、そうでもない。主人公は、大人になり切れていない不幸な家庭の一人息子だ。でも愛の対象であるママはどんな形であれ存在しているのは、木暮修よりずっと有利に働く。でも彼が生業としているドラッグ売人は木暮修の探偵助手という職業より、ずっとずっと腐敗していて、かつ危険だ。
何も『傷だらけの天使』と比較しなくても良いのだろうけれど、読むにつれますます比較したくなってくる。きちんとした将来が見据えられない青春の時代、傷ついた心が求める何ものかを、利用する誰かがいて、利用される若い主人公はすべての傷を負い、叫ばざるを得ない。そうした環境自体が両方の作品を印象として繋ぐのだ。そして愛せる。ここは重要ではないだろうか? 両作品に通停する魅力の在処として。如何?
Posted by ブクログ
主人公はイギリス生まれのパキスタン人。ムスリムでありながら、麻薬の売人、酒も飲む、と言う設定。イギリスの組織に計略的にスパイの仲間入りをさせられる。始めは主語は一人称だが、ある時から主語が変わっていき、それと共に物語のスピード感も増す。ジハードの話?と懸念する必要はなかった。訳が上手くて、明治維新の時の戦いとかにも置き換えられそう。最後はびっくり‼️それって英国の差金かとも思った。悲しい物語。
Posted by ブクログ
普段読まないタイプのの内容。
とても、ハイテンポで読みやすかった。
ムスリムについて知識はあまりない私でも分かりやすく、そして、宗教について考えさせられた。
Posted by ブクログ
ジェイは、パキスタン系でロンドンでドラッグの売人をしている。イスラム教徒とキリスト教徒の対立に巻き込まれ、金を失いドラッグの総元締に迫られる。すると、MI5からリクルートされ、テロ組織に潜入するよう言われる。
なかなか面白かった。作者自身がパキスタン系で、これがリアルロンドンの人種、宗教対立なのかと、ヒリヒリしながら読んだ。あっと驚く展開も良かった。特になぜジェイが選ばれたのかが分かったときが。
Posted by ブクログ
スパイスリラーとして面白かった。
一人称での語りは、主人公ジェイの視点で世界を認識する際の葛藤や苦しみ、怒りが強調されたので、うまく機能していた。世界を知っていく中で信念が揺らぐなど、未熟だが等身大の語り口は読者に感情移入させやすかった。
テーマとしては、ロンドンでのムスリムの立ち位置、今なお続く憎しみの連鎖、と言った非常にセンシティブで身につまされるもの。ジェイの語りでどちらの立場に対しても共感させられるためモヤモヤした気持ちになるが、現代このテーマを語る上ではこれくらいのバランスが最適解だと感じた。
Posted by ブクログ
ロンドンにあるモスクが人種差別主義者たちに荒らされた。モスクに通う“敬虔な"ドラッグの売人ジェイ・カシームは怒りを覚えながらも、同胞の過剰な反撃に疑問を抱く。
そんなとき、麻薬密売の容疑で逮捕されたジェイは、無罪放免と引き換えにMI5の一員となってテロ対策に協力するよう命じられる。
やがてイスラム過激派の中枢部に迫るにつれ、無差別テロが現実味を帯びていき――。
後半、予想の斜め上を行く展開に。