ハンナ・アレントのレビュー一覧

  • 人間の条件

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    この本は、生き甲斐を考える上での思考の土台を作ってくれる。自分探しの前に読むべき。
    人間の条件を、「労働」「仕事」「活動」の三点から、数多くの思想家の言葉や書物や当時の科学の発見を引用しながら、淡々と現したものである。その幅は広く、そして深い。理解に達しているとは言い難く、これから何度も読むことになりそうだ。
    結局のところ、どう生きるかは、どう世界を捉えるかとほぼ同義である。故にその前提を何処に置くかが重要である。生物学的にヒトだとしても「人間の条件」を必ずしも有しない、というのがこの本の言いたいことでもある。
    友情ものの物語では、「ヒトは一人では生きていけない」という思考停止ワードだけで終わ

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    2014年07月10日
  • 人間の条件

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    本書では、「活動的生活」の中核たる不死への努力を浮き彫りにしている。第1章によれば、「活動的生活」は、労働、仕事、活動という三つの活動力からなる。第2章によれば、かつてポリスでは家族という私的領域を前提とし、その上に公的領域での政治的活動は展開されていた。しかし、公的でもなく私的でもない社会的領域が近代に勃興したという。第3章の議論によれば、「労働」とは、生命維持の必要物を生産するための活動であり、マルクスのようにこれを「仕事」と混同すべきではない。第4章は、「仕事」を扱っている。「仕事」とは、耐久性のある物をもたらす行為であり、これが活動や言論が存続するための条件となる。第5章によれば、「活

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    2018年02月20日
  • 人間の条件

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    500頁を超え、さまざまなテーマやアイデアが布置されているこの著書をレヴューするのは難しい。
    観照(理論)と対照させながら、〈活動的生活〉内の、労働、仕事、活動の推移を見るというのが概略。
    第1、2章の読みにくさを通り越せば、いくらかアレントの言いたいことが視えてくる。

    神を利用する必要のなくなったあとの哲学書は、別のところに人間の行動の根拠や目的、担保を求めなければならず、
    アレントのそれへの応答が〈約束〉や〈許し〉なんだろうけど、代置された概念は、なんと脆くみえることだろうか。
    それが人間のもつ困難だ。
    そのことからか、アレントは仕事に依拠した科学への関心を示しているんだろう。

    活動、

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    2012年07月02日
  • 人間の条件

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    名著だと思う。ハイデガー・ブルトマン・ヤスパース等に薫陶をうけながらも、ナチスの台頭によって、フランスへ逃れ、ユダヤ人として収容所暮らしもしたアレントが、国を失った人間の「生存の恐怖」を感じながら、亡命先のアメリカで1958年に上梓した政治哲学の書である。テーマは「私たちが行っていること」を理解することで、文中では「どうすべきか」という主張を抑制しているが希望も語っている。全体として、西洋古典文明・キリスト教・デカルトの懐疑・ガリレオの科学革命などの分析を通し、生命観・宗教・科学などを分析し、これらの営みが深く政治に関わっていることを指摘している。人間の行動は「労働」(生存のため消費されすぐに

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    2012年06月01日
  • 人間の条件

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    これはいい本だと思う。広く勧めたい。
    しかし、かと言ってここでのハンナ・アレントの思想に深く共感できるわけではなく、そもそも彼女の思想は私には非常に隔絶したところから不意にやってくる「他者の声」にすぎない。それでも、この本は素晴らしく豊かな示唆に満ち、読者に沢山の思考をもたらすだろう。考えさせてくれる本である。
    ただし、論述が下手なせいもあり、また、発想があまりに独創的なせいもあって、少々わかりづらいかもしれない。たとえばアレントは「活動力」を「労働」「仕事」「活動」の3つに分けるのだが、「労働 Labor」と「仕事 work」の違いは、どうもわかるようでわからない。
    先が見えない(論旨のみと

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    2011年07月10日
  • 人間の条件

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    1958年、ユダヤ系ドイツ人であるハンナ・アレントによって出版された政治理論を扱う英語版の訳書。彼女自身、ユダヤ人であるという偶然性によってナツィによる迫害を受けた経験をもつため、人間は先天的な要素ではなく後天的で自発的な行動が見止められる存在であろうと説かれている。
    アレント思想のその後の軸ともなる用語-例えば「労働labor」「仕事work」「活動action」-はたくさん出てくる。けれども、ここで強調されるのは、人間が、有機体として種の生命を担うと同時に、個人として独自的な生も担い、誰一人として同じ人間などいないということ。『人間の条件』では、そのような人びとが、それぞれの独自性を保ちな

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    2019年01月16日
  • 今を生きる思想 ハンナ・アレント 全体主義という悪夢

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    約100ページと言う制限のためか、抽象的な書き方が多く、具体例が少ないため何の事を言ってるのか分からず、読み切るのがしんどかった。先に同じテーマの「悪と全体主義(仲正昌樹)」を読んでなければ即死だった。要点はまとまっているのでしょうけど、私には、、、。頭がいい人のための入門書。

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    2023年08月02日
  • 今を生きる思想 ハンナ・アレント 全体主義という悪夢

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    「100分de名著」ならぬ、「100頁でハンナ・アーレント」という挑戦的な一冊。
    ハンナ・アーレントを100頁にまとめるというのは、なかなか難儀な挑戦だが、それでも「全体主義」というキーワードを中心に据えながら、できるだけ簡潔にまとめようという著者の意図は伺えた。またこの挑戦はある程度奏功しているように思われた。

    ただ強いて言えば、展開される議論の全体における位置づけが不明瞭に感じられる所があったり、(これは著者の文体の癖かもしれないが)「〜ではない」といった否定語で議論を進めている箇所が散見され、これが読みにくくさせているように思われた。全体のマップを示しつつ、思い切って肯定文体で踏み込ん

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    2023年01月05日
  • 責任と判断

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    ネタバレ

     こうした問題の議論において、特にナチスの犯罪を一般的な形で道徳的に非難しようとする際に忘れてならないのは、真の道徳的な問題が発生したのはナチスの党員の行動によってではないということです。いかなる信念もなく、ただ当時の体制に「同調した」だけの人々の行動によって、真の道徳的な問題が発生したことを見逃すべきではないのです。誰かが自分の「悪党ぶりをあらわに」しようと決心し、折りさえあれば、モーセの十戒の掟を逆転させて、「汝、殺すべし」という命令から始めて、「汝、嘘をつくべし」という掟で終わるような行動を試みることがありうることを理解することは、それほど難しいことではありません。
     どんな社会にも犯罪

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    2023年03月29日
  • 人間の条件

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    現代では、人が「必要」から解放され、自由のままに自分が自分であることを表現できる「公的領域」が無くなってしまっている

    ■本書のメッセージ
    ・人間は「労働」「仕事」「活動」という3つの活動力で、人間は環境に関わる
    ・かつてギリシアのポリスにおいては、「活動」が公的領域でなされた。言論によって、自分が何者であるか、他者と異なるということを示していた
    ・しかし、現代にかけて、公的領域は消滅した。人間の自由な活動は無くなり、生命維持のための必要にかられた労働偏重の世界となっている
    ・公的領域は無くなり、私的領域が全体に拡大しつくした現代において、本当に、個人本来が自由に生き、行動をすることは極めて困

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    2022年08月13日
  • 人間の条件

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    とても難しい。何を問題にしていいるかさえ最後までわからなかった。自分の力不足なので、一応最後まで目は通したが、またチャレンジする意味もこめて読書中とする。ところで、この本、料理研究家の土井さんが読んでいるので手にとったのだけれど、こんな本をよんでいるなんてある意味敬服した。

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    2024年07月22日