芸人青木さやか氏の母とのお話。
と思って読んだら、それ以外の独身時代の話もあった。
やっぱり芸人、彼女にその意図があるかは不明だが、ところどころでクスっとしてしまった。
最後には母とのわだかまりが消えたようで良かった。
小川糸さん(彼女も生前の母親とは微妙な関係だった)が何かに書いていたが、人との関
...続きを読む係は(その人が)亡くなってからでも変えていけるという言葉が印象にある。
青木さやかさんは、生前にある程度納得のいく関係を築けたし、やはりお互いが生きているうちにそうなるのが一番だけれど、亡くなってからでもという発想に人との関係というのは、一方ではその人と対峙している時の自分なんだと改めて思った(平野敬一郎氏がいうところの分人)。自分自身の中で変化がなければ、相手との関係に変化を生むことはできないのだろう。
他にも、青木さんが癌に罹ったときの話が印象的だ。
「癌を患ったからといって癌になった人の気持ちをわかるなんてことはないのだ。状況が違う年齢が違う性格が違う。過去の病気の乗り越え自慢は聞いちゃいられない。いま病気の人の気持ちは、いま病気の人にしかわからないのだ」(p206)
これは本当に激しく同意する。
私自身、癌に罹ったことこそないけれど、不妊治療の経験から「私も治療してたけど」ってすでに子持ちの人に言われた経験に重なった。
不妊治療や癌治療は、まさにそれをしている最中でなければ、下手に口を開くべきではない。
単なるマウンティングになりかねない。
本書を読んで、青木さんの少し面倒臭そうな性格、それでいて繊細で優しい人柄が伝わってきた。
思った以上に人間臭い人だった。
彼女は生きるのが上手なタイプではなさそうだけれど、だからこそそれが芸に生きているのかもしれない。
頑張ってほしい。