高楼方子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『緑の葉がしげる枝えだに、たくさんのブランコのようにぶら下がっているという、ヘリオトロープ色の、小さなリンゴのように愛らしい、やさしく切ない、遠い夢のような味のする』フラココノ実。
なんて美味しそう。素敵な描写にうっとり。
このフラココノ実は、大人になると食べたくなるという。けれど食べると自分の中の「何か」が消えてしまうらしい。
それでも食べたいのは、誰もが食べているのに食べていない自分は「何か」が足りない気がするからと。
その気持ち何となく分かります。
「「何か」を得れば「何か」を失う。見方を変えれば、どっちかの「何か」は持っているのだ。そこいらじゅうの人がなくしてしまった「何か」を大事に -
Posted by ブクログ
ネタバレ由々、57歳。
一人息子も巣立ち夫とは程よい距離感を保ち、翻訳の仕事もマイペースに続けている。
何事も順調に進む彼女が、11歳の頃の自分"ゆゆ"と向き合うことから始まる物語。
人生も半ばを過ぎ、特に不自由なことはないけれど、ふと立ち止まり過去の自分と対峙する。
訳もなく不安になったり物足りない気持ちに駆られたり。
遠い日の記憶の中に迷い混み、いつの間にか絡め取られたり。
控え目で節度をもったモデラートの人生を歩んできた由々にとって、ざわざわした気持ちを持たせる一時は、自分らしさを取り戻せた瞬間。
人生は楽しいことばかりではない。
失敗したり傷ついたりしたことも、その時は辛