フィリパ・ピアスのレビュー一覧
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主人公トムは、夏休みをおじさんの家で過ごします。その理由は弟ピーターが、はしかにかかったため。やむなく預けられるのです。
退屈な夏休みかと思うとそうではなく、真夜中になると、昼になかった素敵な庭園がトムの前に出現し、ハティという少女との出逢いがありました。想像の世界は広がります。自然描写にうっとりです。
自分にとっての、ハティにとっての「時」や「時間」とは何なのか。自問自答するトム。
最後にトムが、真にハティのことを理解する物語の展開、構成は素晴らしいとしか言いようがありません。謎が解けたとき、感動が溢れました。
本書の巻末に作者ピアスの文章があり、この作品の理解が深められます。
ピ -
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尊敬する作家のひとりである小川洋子さんが、忘れがたい作品として挙げていた一冊。本当に素晴らしかった…!
できるならば子供の頃に読みたかったし、トムとバーソロミュー夫人の間の年代である今読んだからこそ、どちらの気持ちも感じ取れた気もする
イギリス児童文学らしく、庭園にまつわる描写や、それを愛で、共に成長する人々の暮らしの様相が手に取るように伝わってくる
そもそもが個人的にイギリス文化贔屓なこともあり、この点だけでも100点満点の読み応えだったのだけど、更に素晴らしいのが、トムやピーター、幼いハティらの子供らしい感覚を、「未熟な大人」として見下したり、過剰に幼く無知に描いたりは決してしていないこ -
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どうしてこんなに、子どもそのものが描けるんだろう。
子どもの気持ちで、なんて言葉が陳腐に聞こえるくらい、ここには子どもそのものがいる。
できなかったことができるようになった瞬間。自分より小さな子に振り回され、うんざりしたり、大人からしたら危なっかしくてハラハラする小さな冒険。
でも、いつだって大人の目を盗んで、叱られそうなことをやってしまう。だってワクワクするから。
やっちゃったあとのがっかり感と疲れ切った気持ち。
そういう子ども時代の感情が記憶の彼方から思い出された。
トムは真夜中の庭で、に比べるとこちらは短編だし地味かもしれないけど、子どもそのものが描き出されているという意味ではこちらの -
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児童書なんだけど、おとなのほうが楽しめるかも?
めちゃめちゃ面白かった。
冒険への期待と不安、部屋からスケート靴が出てきたときの興奮!ハティとの別れを予感したときの寂しさ、再会できたときの喜びときたら!
今目の前にいるハティは、いったいいつのハティなのか?庭園の謎も深まり、ミステリー要素もあって、思わず懸命に推理するはめに。
結末は予想しやすいけど、十分泣ける。
印象に残ったシーン。
「トムは「過去」のことを考えていた。「時」がそんなにも遠くへおしやってしまった「過去」のことを考えていた。「時」はハティのこの「現在」をとらえて、それを「過去」にかえてしまった。しかしそれは、いまここで -
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ネタバレこれは確かに名作ですね。児童文学ながらページをめくる手が止まりませんでした。
近所に住む気難しいお婆さんが昔は木登りする少女だったなんて、子供には想像もつかないことだと思います。頭では理解できても、感覚としては分からないでしょう。これは子供にかぎらずかもしれません。見知らぬお婆さんは生まれた時からお婆さんだし、さっきすれ違ったおじさんは一生おじさんのまんまの存在として、なんとなく受け流しつつ生きてませんでしょうか。でもそれが今を生きてる感覚なんだと思います。
トムは真夜中の庭でハティと友情を育みます。2人の生きている時代は違っても、2人の過ごした時間は同じです。同じ時間を子供として共に過ご -
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星5個じゃ足りないくらい。
読み終えるのが勿体ない、でも先を知りたい、そして読み終えてみると、また反芻したり、読み返したくなるような、本当にステキな本に出会えました。
弟がはしかにかかり、隔離するために、子どものいないおじとおばの家に預けられることになったトム。
退屈な日々を送ると思っていたところ、夜中の0時にホールの古時計が12回ではなく13回鐘を鳴らしたことを不思議に思い、階下へ、そしてもう既にないはずの裏庭への戸をくぐると、そこには広い庭が広がっていたのです。
時代をまたがる不思議な世界でハティーという少女と出会い、遊び、夜だけ楽しい時間を過ごすのですが、ハティーは会うたびに小さくなて