平野紗季子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ食べるって、こんなにエモいことだったんだ…!と読んでると何度もそう思わされる、五感と記憶がぎゅっと詰まったエッセイです。
平野紗希子さんは、子どものころから味覚がちょっとだけ鋭かった(食中毒と表現w)らしく、給食、レストラン、おやつ、家庭の食卓……その一つひとつの“味の記憶”を、まるで宝物のように拾い上げて描いてくれます。
何か特別な料理の話をしてるわけじゃないのに、そこにある感情や空気の温度まで伝わってきて、「あ、わかる…」と静かに共鳴してしまう。たとえば「冷蔵庫、いつもは真っ暗なんだと思うと寂しい。寒いし。」なんて一文、もう最高にエモい。
「きらいな味があれば、想像力に終わりが来ないので楽しいです」これはもう、“嫌い”というネガティブな感覚を、創造の余白として肯定する逆転の美学ですね。味覚って普通、「好き」に向かうものなのに、あえて「嫌い」を大事にする。エモすぎる。
この本は、グルメ本というよりも、“食べることを通して自分を知っていく本”です。
読むうちに、自分の“記憶のなかの味”がどんどん呼び起こされて、なんだかちょっときゅんとする瞬間すらある。
美味しさの描写に浸るもよし、自分の思い出と重ねるもよし。食べることが好きな人、感性を言葉にしてみたい人、ちょっと生きづらさを抱えたことのある人には、すごく刺さると思います。
サクッと読めるけど、余韻がじんわり長く残る一冊。
エッセイというより、これは“味の詩集”かもしれません。