森下裕美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレオンナノコになりたいオトコノコ。
不妊治療にひとり悩む女性。
歳をごまかして、恋愛をするオトコノコ。
みんな、一生懸命。
『少年アシベ』、『COMAGOMA』と愛読。
ただ、この『大阪ハムレット』は私の読んだ2作品と違って4コマ形式ではなく、雰囲気もちょっと違う。
『ぼのぼの』を描いているいがらしみきをさんの『Sink』を読んだ時のように、形式が変わったことによるギャップに”酔う”かも!と不安で、雑誌などで紹介されてどんどん注目されている中、手をつけられずにいた。
(*『Sink』はギャップだけでなく、作品自体が強烈。ネットで公開されている時に全部閲覧していたのですが、毎回ゾォッとしながら読 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読み始めたら先が気になって一気に読みました。ここまで話が広がると思わなかったですが、ひとつ行き着くとしたらこうなるのかなという感じです。物語的にも、哲学的にも。
チコが可愛くてエロくて純粋で危うげで、それと地に足ついたトモちゃんのコンビは見ていて安心できたし、こんな友達がほしいと思わされました。
ただラストが広範な真理とか生死、ある種の宗教哲学のようなものを描いているため薄味なのかなと一気読みして思います。トモちゃんはすごいブス、というタイトルのインパクト、車谷の録画録音フェチという設定、先生の緊縛趣味とすごく独特で人間味がある設定たちが、途中からなくなってしまったようにも見えて残念でした。
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ネタバレ 購入済み
深くて結構きつい哲学書的な…
一巻を読んで面白かったけど、絵もストーリーも同時に強烈な毒気に当てられたので、しばらく放置してました。一巻を再読して、引き込まれて最終巻まで一気に読了。友情、親子間きょうだい間男女間の愛情、虐待、性風俗、風貌の美醜、大事な人を喪うこと、生きること…とにかくたくさんの問題提示に考えつつ読みこみました。ハーレクイン好きの単純な私には刺激が強かった。でも面倒くさがりの私が感想を書いておきたいと思うほどの魅力ある作品でした。(ちなみにこれ以外では「その女ジルバ」だけ書きました。こちらも考えさせられたから。)面白い感動する作品はとても好きだけど、私は読んだ後に考えさせられるものがもっと好きなのかもしれま
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Posted by ブクログ
【これはタイトル詐欺】
ただし読んで損はない。ルックスに対するコンプレックスをネタに描いた漫画は、けっこう出回っているし、新鮮さも無いので、そういう内容ならむしろ遠慮したいところだった。しかし、タイトルからは想像もつかない割と哲学系よりの内容であることに驚いた。
【話の展開】
長年の引きこもりで精神的にまだ幼いチコを支えるために奮闘するトモ。社会復帰にチコが選んだのは性風俗。そこで出会う多種多様な人々の闇や葛藤、成長をコミカルに笑いも含めて描く。シリアスな展開でも、デフォルメされたキャラの可愛さやゆるい雰囲気が緩衝材となりとても読みやすい。終盤にかけての展開が少々まとめ過ぎというか早足な印象 -
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3巻に至って、チコちゃんは風俗まがいから本物の風俗に移行する。それはただの深入りではなく、チコちゃんが社会性を獲得するための通過儀礼でもある。チコちゃんが社会性を獲得してゆくのは、極めてパーソナルな事情の積み重ねたプロセスの結果としてある。自分の手の届く範囲で出会った人々の個人的な事情、その奥の深淵を覗き込みそれに寄り添う。そうして少しづつチコちゃんは世界を広げ社会性を得ていく。ソーシャルなんちゃら的な何かとは逆の地味なプロセスといえる。
このプロセスを実現させているのも、ドブスのトモちゃんがいてこそ。チコちゃんにとってトモちゃんは世界と接続するためのただひとつの扉。
チコちゃんが自らの世界を -
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2巻はさらに様々な人々に出会うチコちゃん。少しづつ社会性を得ていく。
んで、チコちゃんのバイト先の同僚の名が姜さんというのは、この作品というか森下の姿勢を示す象徴的な部分だと思う。
日本の漫画で外国人が登場するとき、多くの場合その人が外国人であることに何らかの意味がある。読者も、外国人のキャラクターが登場したら、彼が外国人であるという事実が関係する展開を無意識に予想する。漫画において、外国人とはまさにその名の通り外の人であり、内の理論とは異なる何かをもたらすものとして機能する。外国人であることをカッコに入れることは許されず、外国人として振舞うことを求められる。彼らはどこまでも部外者であり、隣人 -
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唯一の肉親である父が死に孤独の身となったチコちゃん。中1からずっと引きこもりで何もできないし、財産も5万円しかないし、もう自分も死のうかというところから物語は始まる。そこに現れたのが謎のドブス、トモちゃん。トモちゃんは、食べろ、外へ出ろ、仕事を探せ、とチコちゃんを急き立てる。トモちゃんに引っ張り回され、さらに風俗斡旋の変態童貞・車谷も加わって、風俗まがいの仕事をしたり新しい出会い経たりしながらチコちゃんは図らずも生きることになる。
やはり市井の人々、それも底辺とまでは行かないにしてもそれに近い人々を描くという点において、森下裕美は非常に重要な作家だと思う。社会システムから零れ落ちた、あるいは零 -
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森下裕美といえば「少年アシベ」で、少年アシベといえばゴマフアザラシのゴマちゃんで、森下裕美はゴマちゃんの漫画家として認識されることが多い。
でもそれは森下裕美の魅力を表していないし、かえって魅力を覆い隠してしまっている。森下裕美の魅力は、市井の人々の生活、日常の悲喜劇を活写することにこそある。嬉しいことも楽しいことも辛いことも醜いこともすべてを引き受けるからこそ、少し意地の悪そうな四頭身のキャラたちがリアリティをもって描かれる。
市井の人々の描くという点、美醜ひっくるめた引き受け方という点において、森下裕美の立ち位置は業田良家に近いかもしれない。最近の業田良家が市井の人々をとりまく社会の制度や