高橋哲哉(哲学者)のレビュー一覧
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たしかに「騙される」には「騙される側の責任」もないとは言えない。しかし、補助金も何も地元にとっては「安全」が前提であって、その前提なしに原発を受け容れる住民は存在しない。大事故と補助金との「等価交換」など成り立っていないのであ
る。(P.33)
かつて「戦争絶滅受入法案」なるものがあった。前世紀の初めデンマークの陸軍大将フリッツ・ホルムが、各国に次のような法律があえれば、地上から戦争をなくせると考えたのだった。戦争が開始されたら10時間以内に、次の順序で最前線に一兵卒として送り込まれる。第一、国家元首。第二、その男性親族。第三、総理大臣、国務大
臣。第四、国会議員、ただし戦争に反対した議員は -
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ネタバレ「犠牲のシステムでは、或る者(たち)の利益が、他のもの(たち)の生活(生命、尊厳、日常、財産、尊厳、希望等々)を犠牲にして生み出され、維持される。犠牲にする者の利益は、犠牲にされるものの犠牲なしには生み出されないし、維持されない。この犠牲は、通常、隠されているか、共同体(国家、国民、社会、企業等々)にとっての『尊い犠牲』として美化され、正当化されている。そして、隠蔽や正当化が困難になり、犠牲の不当性が告発されても、犠牲にする者(たち)は自らの責任を否認し、責任から逃亡する」。
どうして危険な原子力発電所は存続し、なぜ米軍は沖縄に駐留し続けるのか。福島県での惨禍も沖縄への負担の集中も、ともに日 -
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まず、本書を読むまで勘違いをしていたことが一つある。いや、正確には勘違いというより、忘れてしまっていたという感じなのだけど。それは、靖国神社は決して「悲劇のヒロイン」なんかではないということだ。つまり、日本くんと中国くんが靖国神社ちゃんをめぐって小競り合いをしている、というだけではなく、靖国神社ちゃん自身もかなりの食わせ者だということだ。靖国神社ちゃんだって、自分の思想を持っている。さしずめ、靖国神社ちゃんは『機動戦士Vガンダム』のヒロイン「カテジナ」のようなポジションである。靖国神社ちゃんが日本くんと中国くんを無駄に小競り合いさせているという面もある。このことが本書を読むまで、すっぽり頭か
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内容(「BOOK」データベースより)
二十一世紀の今も、なお「問題」であり続ける「靖国」。「A級戦犯合祀」「政教分離」「首相参拝」などの諸点については、いまも多くの意見が対立し、その議論は、多くの激しい「思い」を引き起こす。だが、その「思い」に共感するだけでは、あるいは「政治的決着」を図るだけでは、なんの解決にもならないだろう。本書では、靖国を具体的な歴史の場に置き直しながら、それが「国家」の装置としてどのような機能と役割を担ってきたのかを明らかにし、犀利な哲学的論理で解決の地平を示す。決定的論考。
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靖国と -
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ネタバレ第1章。靖国神社は死者の〈追悼〉を〈顕彰〉に、〈愛する人を失った悲しみ〉を〈愛する人を天皇に捧げた喜び〉にすり替える装置である。
第2章。「A級戦犯」分祀論は、近代日本の戦争の歴史をアジア・太平洋戦争の戦争責任問題のみに矮小化する。
第3章。政教分離に立つ限り靖国神社の国家護持はありえず、靖国神社の「非宗教化」は国家神道(=神道非宗教説)の再来にほかならない。
第4章。自国の戦没者のみを選別的に祀るのは日本の文化伝統でも何でもなく(中世・近世においては「敵」も追悼していた)、国家の政治的意思にすぎない。
以上は論として筋が通っており、概ね首肯しうるが、第5章が決定的におかしい。非戦 -
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ネタバレ日ごろ話題になる「靖国問題」はどのようなものかを知るために読んでみた。
政治色が強いとされる靖国問題も、「誰のためのものか」「どうして靖国神社ができたのか」を知る必要がある中で、戦争を知らない自分は何に基づいて判断すればよいかわからなかった。
また、首相が参拝することによる他国の批判がなぜ生ずるのかもわからなかった。
「国への批判を避けるため」に作られた靖国神社に参拝するのは、日本国民として戦死者に対する道徳的な行動の面があるのだろう。一方で、他国の人にとって自国民を大勢殺した首謀者が奉られている神社への参拝は冒涜に感じるのは理解できる。また、戦争の正当化がされることもまま理解できる。
結局 -
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ネタバレ靖国神社がどのような面で問題になっているのかを論じた本。
この問題について、詳しい背景は省略するが、靖国神社が戦死者を顕彰することで国民を戦争に向かわせる”超”宗教的な存在であったこと、A級戦犯の「分祀」について不可という見解は古来の神道ではそうはなっていないこと、といった点は勉強になった。
ただ、結論が
「一、政教分離を徹底することによって、「国家機関」としての靖国神社を名実ともに廃止すること。首相や天皇の参拝など国家と神社の癒着を完全に絶つこと。
一、靖国神社の信教の自由を保障するのは当然であるが、合祀取り下げを求める内外の遺族の要求には靖国神社が応じること。それぞれの -
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※友達からこの本は遺族に関する部分について誤謬がある、との貴重な指摘を受けましたが、そういったことに関しては本質的には触れてないので、是非はともかくも、読んでいただけるとありがたいです。てか偉そうな書きっぷりですいません
靖国問題を様々な観点から捉えた入門書。
著者は第5章において、靖国の論理は軍隊を保有し、ありうべき戦争につねに準備を整えているすべての国家に共通の論理に他ならないと述べている。実際日本には自衛隊が存在し、その基本方針が専守防衛であったとしてもありうべき戦争に備えていることに疑いはなく、つまり作者は靖国神社のようなものは必然的に存在してしまうということを認めている。よって -
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小泉元首相が靖国神社に参拝するようになってからもう7年近くになります。福田首相になってから靖国参拝をめぐる「問題」として見る視点も少なくなってきてはいますが、本質的議論がなくなっただけで問題は残っているように思えます。
21世紀に入ってからの数年の間に、未来志向とも叫ばれていた日本と中国・韓国との関係が冷え込んだ歴史をたどりながら振り返る上で、お薦めできる本です。
また実際に靖国神社と国家および皇室のつながりが心理的、社会的にどのような影響を及ぼしたか、その構造がもたらす恐ろしい影響力も書かれています。小泉元首相が参拝の度に繰り返す論調がいかに靖国の宗教的歴史的位置づけに対して理解がない