濱野ちひろのレビュー一覧

  • 無機的な恋人たち

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    ドキュメンタリーの醍醐味は、自分では聞けない見ることのできない人々の想いや感情の一端に触れること、世界を理解するきっかけになることだと考えている。本作も、「聖なるズー」に続き、性愛について、命がない、つまりは無機的な存在を深く愛す者たちのリアルな声を集めた貴重な論文である。特に印象に残ったのは人間ラブドール製造所でのサービス。人間が無機的なものになる、その後葬られ、また人間に戻る儀式を通して顧客は生まれ変われる、生きるための活力が与えられるのだと思う。愛する、という行為、感情、形とは何かを考えるきっかけになる重要な作品と思う。様々な人たちに読んで頂きたい作品だ。

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    2025年11月16日
  • 聖なるズー

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    ネタバレ

    愛の意味、所在を考えさせられる本だった。特にクルトという人物が出てくる章は深く共感した。そして、意外と日本のアニメは自由度が高いんだなと感じた。

    愛は、自己嫌悪を紛らわすための麻酔なのかもしれないし、たとえそれが人ではなくても、その手を取り合うための通行手形なのかもしれない。

    愛を使う人によって、その定義が変わるのが興味深かった。

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    2025年07月01日
  • 聖なるズー

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    ネタバレ

    うーん面白かった。セックスやセクシュアリティについて考えていたことと交差して、思考が刺激され続けた。これはおすすめ。

    人間のセクシュアリティやセックスに善悪はつけようがない、と私は思っている。人々が求めるセックスの背景には、さまざまな欲求がうごめいている。…考えるべきは、人間の本能的な部分が社会とのかかわりのなかでどのようにして齟齬をきたすかということ、また、社会の一部分であるはずの私自身が、なぜ特定の性的実践を受け入れられないのかということだ(p.29)

    …相手のパーソナリティは自分がいて初めて引き出されるし、自分のパーソナリティもまた、同じように相手がいるからこそ成り立つ。つまり、パー

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    2025年05月23日
  • 聖なるズー

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    ネタバレ

    すごく良い本だった。
    自らの性経験から入り調査経緯を順々に綴っていくので、だらだらした書き方と感じた。が、結果として不可欠な要素になった。このような経験をした筆者だからこそ、そう感じたしそんな考察になったのだと分かる。
    「獣姦って何」「どんな人たちがするの」という当たり前の疑問。そこから、「性を知らぬ子どもの立ち位置」「主人とペット」「言葉を介さぬコミュニケーション」等の周辺事情へ目を向ける。更には「人間にとっての性行為とは愛とは」と進む。
    斬新な切り口で、親密な関係性の築き方選び方について、真摯に見つめた一冊だと思う。

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    2025年02月07日
  • 聖なるズー

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    正欲を読んだあとと少し似た感覚がある。読む前の自分には戻れない感覚。動物の性欲を無視できなくなってしまった。
    動物性愛としても、少数派の生き方としても、わたし個人にとってかなり興味深い本だった。おもしろかった。

    "「病気」「変態」という言葉が示す排他性は危険だ。あの人たちは自分とは違う、という線引きをして、そこで思考を鈍らせる"

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    2025年01月03日
  • 聖なるズー

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    石田衣良のオトラジでおすすめされているのを聞いて、読みました。
    読み終わったら元の世界には戻れない。

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    2024年12月31日
  • 聖なるズー

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    衝撃の一冊だった。動物性愛をテーマにした、何とも静謐なドキュメンタリー。「動物性愛」という言葉から予想されるようなグロテスクな描写はほぼありません。
    性の問題。個々の人格的尊厳を主題にしている本です。
    政治運動として展開されるLGBTやフェミニズムには正直批判な目を向けているが、本書に描かれているパーソナルに問題としての性や尊厳の問題には真摯に向き合うしかありません。

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    2024年11月19日
  • 聖なるズー

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    「正欲」(朝井リョウ)の次に読んだ作品。
    「正欲」が性を取り扱った作品だからこそ、本書を選んだ。

    単に可愛いというだけで犬や猫を飼うが、
    どこまで真剣に動物の性を考えているだろう。

    自分たちが人を愛するのと同じ感覚で、動物を愛して、動物にも性欲があり、それをどう受け止めてあげることができるか、を考える人たちがいる。
    動物性愛。
    これを動物虐待と呼んでいいのか。

    動物の声や気持ちを正確に分からない人間が、「それ」が愛なのか、虐待なのか、「それ」を法律や社会が決める事はできるのか。

    自分にまったく発想もできない価値観に出会えることこそ、読書の醍醐味。

    どこまで真剣に自分たち人間の性につい

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    2024年09月29日
  • 聖なるズー

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    ◎最近読んだ本で最もよかった。
    動物性愛というテーマで、こんなにも自己と他者の対等性を考えさせられるとは思わなかった。


    ◎「言葉を交わせない動物との間に合意はない」という非難が出てくるが、言葉が必ずしも対等な関係性を担保するわけではないだろう。
    言葉が本当の感情や想いを表すことは少ないわけで、機微を取り零したり、そもそも本心とは裏腹のものであったりすることが多い。
    また、言葉を発する前の関係性で、言葉には制限ができる(支配者―被支配者のような関係性では対等な言葉を交わせるわけはない)。

    むしろ相手との対等性をおざなりにしてしまうのが、見せかけの言葉によるコミュニケーションなのではないか。

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    2024年06月09日
  • 聖なるズー

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    動物性愛だけではなく、人間同士における「関係性」や「愛」、パーソナリティなど、様々なことを改めて考えさせられた。
    動物を無意識的に子ども視してしまっていたこと、それ故に、動物にも存在し得る性的欲求やセクシュアリティについて見事なまでに見落としてしまっていたこと。迂闊、というか、稚拙、というか。自分の想像力の足りなさを痛感した。
    「動物からは言葉の合意が得られない。だから、実際に動物が人間とのセックスをどう感じているかは想像できない。ゆえに、セックスを含む如何なる動物性愛も許されない。」という言説に対して、「言葉での合意があれば性暴力ではない、なんてことはない。」という著者の返し方には唸ってしま

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    2024年04月19日
  • 聖なるズー

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    これは頭ぶん殴られた気分になる本。動物性愛といっても、さまざまにある。数週間動物性愛の「ズー」と共に暮らすことで、理解から入る。その愛が真実と語られるが、しかし、さまざまな視点からその性愛についてスポットライトを当ててゆく。どの立場の人たちの言葉にも理がある。反する立場の人たちにも別角度の理がある。そしてそれぞれに矛盾や都合の良い解釈がある。しかし、それは人間同士の性愛に対してもだ。遠い世界かと思っていたら、距離を詰められて殴られる感覚。一度読んでみてほしい。

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    2023年03月13日
  • 聖なるズー

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    動物性愛(人間が動物に対して感情的な愛着を持ち、ときに性的な欲望を抱く性愛のあり方)をめぐるルポ。著者がドイツの動物性愛擁護団体「ゼータ」に所属する動物性愛者達と実際に会い、寝食を共にしながら話を引き出していく。

    動物性愛と聞くと著者も指摘するように「獣姦」のイメージがつきまとうが、本を読むと動物性愛とは明らかに峻別されていることが分かる。そしてページを繰るごとにイメージがどんどんと刷新され、新たな世界が垣間見える。

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    2023年03月11日
  • 聖なるズー

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    価値観を揺さぶる本。本書中のあるズーが語るように、セックスの話題はセンセーショナルだからどうしてもズーの話を性行為に限って取り上げてしまう。そのために動物愛護団体との対立も生じる。しかしズーたちの問題の本質はセックスではなく「動物や世界との関係性」にある。異種への共感、愛情。人間と動物が対等であるべきとの考え。性愛と対等性というテーマが、著者がかつてパートナーから受けていた性暴力の記憶と結びつき、愛とは何か、性とは何か、関係とは何か、人間とは何か、という問いになっていく。

    著者も書いているが本書によって動物の性欲について知ってしまったあとでは、今後の人生で動物を飼うことに抵抗を覚えてしまう。

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    2023年02月26日
  • 聖なるズー

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    動物性愛の取材というテーマもおもしろいし、さらに筆者のバックグラウンドも合わさってスパイラルのように進む考察もまたおもしろい。
    大学院の論文がベースのようだけど、こんなに面白い論文が書ける筆者にはただ脱帽。

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    2023年02月12日
  • 聖なるズー

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    動物性愛についてという、センセーショナルな題材のノンフィクション。とにかく文章がうまく、ぐいぐい読んだ。
    いやらしさは全くなく、むしろ真摯で感動的。動物、考え方の違う他者との関係性について考えさせられる。
    この本を読んだ後、動物をただ可愛がって性欲を無視する方が、ある意味虐待じゃないかとも思った。

    文庫版あとがきに、「人間は共感すべき対象を無意識にあらかじめ選択しているのかもしれない」という問題提起もあり、興味深かった。
    そっちの方面の研究を押し進めた本も、ぜひ著者の濱野さんに書いてほしい。

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    2023年02月10日
  • 聖なるズー

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    ネタバレ

    たしかTwitterでおすすめのような形で気になっており、たまたま書店で見つけたので一読。

    今まで「動物性愛」について考えてきたことはなかった中で、日常生活でも溢れるペットの性欲の視点は今までになかった。
    動物との対等な関係性を考えることは自分自身の他者へ関係の仕方を改めて考えるトリガーになりました。
    すぐには答えが出ないし、考え続けるべきものであることは間違えない。

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    2023年01月02日
  • 聖なるズー

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    動物性愛者をめぐるノンフィクション。著者の体験からセックスのことを理解したい、という強いおっもいがあり、ただのびっくりノンフィクションとは全然違う、切実な内容。
    対等、ってなんだろうなあ。愛がないとセックスってしちゃいけないのかな。etc...
    「タブー」とされることに切り込むのがノンフィクションの意義である。必読。
    ペットの去勢も、これまでは動物の健康上の理由から当然のことと思っていたが、これを読むとまた考えてしまうな。

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    2023年01月01日
  • 聖なるズー

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    ネタバレ

    多様性という言葉が広く認識されるようになった昨今、その多様性がどれほどの幅をもってしてそう呼ばれるのか考えさせられました。私はズーフィリアという言葉を著書にて初めて知り、性愛の対象が言語能力の無い動物であるということに非常に驚きました。ゼータの人々の言う「動物が誘ってくる」という言葉への疑念はありつつも、否定も出来ないなと思いました。ノンフィクションならではの臨場感をひしひしと感じました。

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    2022年09月15日
  • 聖なるズー

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    おもしろ半分、興味本位で読んだら痛い目を見る。
    愛とは、セックスとは、人間とは。さまざまなことを考えられる一冊。

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    2022年09月14日
  • 聖なるズー

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    夏休み-17

    しらひなが、【私が読んだ中で一番ロマンチックで愛のことを真摯に考えた本】と推してくれたから、私は手に取れた。
    性暴力を受け続けた著者が、セックスと愛を捉え直すために、ドイツで動物性愛について調査をする。ズーと呼ばれる動物性愛者と寝食を共にしながら、彼らの考えや、それを否定する愛護団体の声や、人間のセックスについても広く耳を傾けながら、考え続けるノンフィクション。
    テーマが衝撃的/未知の世界すぎて、正直読むのが怖かった。(セックスという言葉が出てこないページがない)なんかまだ、自分の言葉で語れないけど、動物の性欲にも目を逸らさず、丸ごと愛す生き方を一貫しているズーたちの言葉が、な

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    2022年08月25日