【感想・ネタバレ】聖なるズーのレビュー

ユーザーレビュー

Posted by ブクログ 2020年05月20日

 ドイツの動物性愛者達にただインタビューするのではなく数日共に生活して話をする文化人類学的なアプローチを重ねる。

 犬や馬と性交すると聞くととても暴力的に感じていたが、この本に出てくるズー(動物性愛者)達から感じるイメージは全く逆。彼らは驚くほど動物と対等であろうとする。言葉を介せずノンバーバルな...続きを読むコミュニケーションで動物達と自然な性行為を行う。なので、彼らは必ずしも挿入や性行為そのものにこだわらない。
 ズーとは動物と対等なパートナーでいたいという生き方なのだろう。筆者の被DV体験が対比として語られた時にそれは明確になる。言葉が通じる人と人の恋愛だからといって、私達は対等なコミュニケーションを取って恋愛をしているとは限らないのだ。

 動物性愛から全ての愛に通じる大事なものを感じられる良書。ぜひ多くの人に読んでもらいたい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年05月05日

本を開く前と後で、こんなにも気持ちが変わるなんて。

単純な好奇心だけだった頭の中が徐々に変化して、目に見えるもの全てを、形の無い感情の全てを、読む前とは違うところに連れて行く。最初から最後まで、ものすごくよく出来た構成だと思う。

「動物性愛」を選んだ人々(ズーフィリアが動物性愛、それを選んだ人々...続きを読むをズーと呼ぶ)の話を軸に、セクシュアリティ、パーソナリティ、愛、暴力、言葉について深く深く入り込んでいく。

特に、第一章「人間と動物のアンモラル」での、放埒な性の現場の描写を踏まえた上での、第六章「ロマンティックなズーたち」への流れ!
プロローグの著者本人の凄まじい体験がベースとなり、まるで自分まで、セクシュアリティや愛の見方をやり直している気持ちになる。

相手がもの言わぬ動物、特に犬(ズーのパートナーは犬がほとんどらしい)だからこその、「聖なる」ではないかという著書の視点にはわたしも同意。
全身全霊で相手を理解しようとする、対等であろうとする術としての、犬とのセックス。

「パーソナリティを発見する実践は、かたちあるひとつの愛なのではないかと、私はいま、期待してもいる。」
自分の被性暴力体験から、自分のために愛と性を考えたいと始めた研究で、著者はズー達と生活を共にし、徐々に心を開いていくズー達から話を引き出していく。その過程で、客観的視点を保とうとしながら、自分のほうがその考えの不遜さに泣き、逡巡しながら見出していった気づき、その過程に私もまた泣いてしまった。

人はみんな違うということを、これでもかと見せてくれる本。素晴らしかった。
町中で犬を見る目も変わりました。

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Posted by ブクログ 2020年04月10日

動物性愛というテーマがテーマなだけに、受け取り方に個人差が出そうなのでおすすめしにくいけれど、根源的な価値観が揺らぐセンセーショナルな読書体験でした。性暴力の被害者である筆者が、セクシュアリティを研究する中で自分の過去と向き合おうとする姿、彼女の脆さや強さを目の当たりにしながら共に少しずつ歩を進めて...続きを読むいく感覚で苦しくもあったルポタージュ。読み終わって3週間、ようやく振り返れた。

2019年開高健ノンフィクション賞受賞作品。

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Posted by ブクログ 2020年03月18日

面白かったといえば面白かったのですが、筆者の体験からして精神を削られるような内容でした。しかし、ドイツではすごいイベントやってるんですね…

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Posted by ブクログ 2020年03月09日

動物との性的な関係をもつ人々へのインタヴューを軸に、セックスについて正面から超ラディカルに考えていくノンフィクション。文体はまさしく手慣れた「ライター」のそれであるが、もとが論文執筆のための調査であるので、学術的な目配りや抑制はきちんと効いている印象。そして何よりも、観察者である著者自身が、なぜこの...続きを読むテーマに取り組む、その過程で自身がどうなっていったのかを自覚して、それをも読者に真摯に提示しているところが素晴らしいと思う。242頁の「「セックスは本能的で自分ではどうにもできないもの」ではない。セックスの本能が先にあってセクシュアリティが発生するとは限らない。セクシュアリティを考えるとき、セックスとセクシュアリティの位置を逆転させることもかにうだ。」という、一見常識外れの見解も、そこまで本書を読んでくれば、「そうかもしれない」と受け止めることができる。

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Posted by ブクログ 2020年03月01日

最初にこの本を開いて一気に半分、読み進め…そこからフリーズ、なんか読めなくなってしまい、別の本を何冊か読み終えて、気合入れて再開してまた一気ということで読み終わりました。フリーズしたのは、書かれているモチーフに衝撃を受け、そしてページから動物の臭いが漂ってくるような気になり、なんで、自分はこの本読ん...続きを読むでんだっけ?と思ってしまったからです。なんかソファーの上でもベットの上でも読みたくない気分になり、でもほとんど電車の中で読んだのですが、とにかく凄い本でした。途中で放棄しなくてよかったです。この本を読んでの変化。LGBTとか、ダイバシティとか時代のキーワード軽々しく口に出来なくなったこと。自分の中にある排他性を感じてしまったこと。その排他性を時代はどんどん煽ってくること。そして、小説でも論文でもなくノンフィクションじゃなきゃ書けないことがあるってこと。作者、濱野ちひろから目を離せなくなったこと。動物性愛者に対するコミュニケーションを自分のトラウマから構築し、セックスの問題を超えて人間のコミュニケーションの問題まで考察する一歩一歩の積み重ねに、結果ズッポリ巻き込まれてしまいました。

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Posted by ブクログ 2020年02月15日

これはすごい本だ.著者の赤裸々な体験から始まり,大学院での研究テーマから発展して,単に動物とのセックスのあり方への考察ではなく,セックスの捉え方に始まり人間同士の関係性,社会の中で愛の名の下に覆われていることの警告など様々な問題定義がなされていて,読みながら答えの出ないもどかしさとともにとても考えさ...続きを読むせられた.また,インタビューしていく中でズーの人達との交流がとても暖かく,人間同士の距離間,友情といったことも考えさせられた.

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Posted by ブクログ 2020年02月12日

自分と違うとかアブノーマル(異常なものに対する生理的忌避感)を理由に、知ることを放棄・反対する危険性を思い知る。動物とのSEXは動物性愛とイコールではない。ましてや獣姦と動物性愛は全く別物。紹介されるズー(動物性愛者)達は動物含め誰も傷付けていない。ただ心からパートナーを愛している。そんな彼らを攻撃...続きを読む・否定する権利が一体誰にあるだろうか。誰も傷付けない限り、セクシュアリティは自由であるべきだと感じた。
性は操縦できぬ本能と思っていたが自らズーになることを選ぶ人がいること、ほか、ズーにはパートナーの誘いが空腹と同じで自然とわかることには驚いた。

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Posted by ブクログ 2020年02月06日

動物性愛を初めて知る
今の認識はこう

動物性愛はレズやゲイと同じくセクシュアリティのひとつ

自分には理解できなくてもひとつの尊重すべきセクシュアリティ

レイプと合意の線引きは難しいかもしれない
でも間違いなく合意によるセックスがあるようだ

ズーフィリアの紹介にとどまらす
セックスとは何かみた...続きを読むいなことまで考えさせる

自分の価値観が崩れ落ちる
まさにノンフィクション
すごい

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Posted by ブクログ 2020年01月30日

いろいろあっていい。
などという簡単な言葉では表せない。
とても考えさせられる。
素晴らしい本だと思う。

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Posted by ブクログ 2020年01月29日

めちゃくちゃ面白かった。
帯にセンセーショナルな「動物との性愛!」などの言葉が並ぶのでドぎつい内容を想像してしまうけど、なんてことない人間ではない動物をパートナーとして生きていくことを決断した人達の人生に真摯に寄り添って書かれた本。
著者があまりに壮絶な性暴力経験を過去に追っていて、愛やセックスにつ...続きを読むいて今一度考えなおす作業が合間合間に入る。
あくまでパートナーと時間を過ごして生活をする中で、食事をしたり散歩をしたり、運動をしたりコミュニケーションを取ったりなどのひとつに、当然性衝動は入るわけで、パートナーの人生全てに寄り添おうと思ったとき、そこだけ見えないふりをするのは変だろうという考え方。言われりゃ当たり前なんだけど、相手が物言わぬ動物だからこそ理解を得るのが難しい。そこらへんはしっかり向き合って書かれているから読むのが早い。

パートナーのパーソナリティを徹底的に理解して寄り添うってあんまり考えたことなかったのでなんかわが身を振り返ってめちゃくちゃ考えてしまった。
相手が何も言葉を発してなくても触ってほしいと感じているところ、してほしいと思っていることを察してあげれているのか?相手をセックス・トイのように自分の快楽のために利用していないか?いやーーー、自分が満足することに熱中してるとき、ある。反省。そういった意味でも良い機会を頂きました。

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Posted by ブクログ 2019年12月10日

セクシュアリティはそれぞれと思っていても
相手が動物??
どこまで同等の立場であるのか
相手を思いやる事が愛なのか
消化しきれないけれど
読んでよかった
世の中にはイロイロな人がいてイロイロな幸せがあるんだと再確認

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Posted by ブクログ 2020年05月02日

インパクトとして最近では随一。

折に触れて読み返す本の一つに梨木香歩さんのエッセイ「春になったら苺を摘みに」がある。そこに出てくる言葉で、重要なテーマとなっているのが「(自分とは異質なものを)理解はできないけれど受け入れる」ということ。これは本当に難しいことだけど、できるだけそうありたい、少なくと...続きを読むもそこを目指したいとずっと思ってきた。

本書で取り上げられている「動物との性愛」について、共感したり理解するのはひどく難しい。「受け入れる」ことはできるだろうか。うーん…。

センセーショナルになりがちな内容を、冷静に深く掘り下げた著者の力に感嘆した。

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Posted by ブクログ 2020年04月19日

私たちは、何をもって相手が合意していると判断するのだろうか。
言葉?態度?表情?そのどれも、嘘をつくことが可能だ。そしてそれを本当の意味で見抜くことが出来る人はどれくらいいるのだろう。
それが対人であれば確かに確かめようはあるかもしれない。では、動物は?
今あなたの隣にいる、猫や犬や馬があなたを信頼...続きを読むし、愛していると何で判断するのだろう。
私はこの本を読んで、「合意」とはなんなのだろうかとぐるぐると頭の中を駆け巡った。相手が笑顔だったから、嫌だと言わなかったから、なんだかんだ受け入れたから、いいよと言ったから。その言葉にどれほどの本心があるのだろう。
人は言葉をしゃべる、同じ生き物だから態度の意味もわかる。でも、それが真意かどうかまではわからない。この本を読むと、私は今までどれくらい相手のこと考えられていたのだろうかと振り返ってしまう。

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Posted by ブクログ 2020年03月20日

動物をペットとしてではなく、パートナーとして対応するドイツのズーというグループを取材。本人のバックグラウンドを交えつつ、パートナーと対等にあるためにはどうすればいいか真剣に向き合う際動物であっても人間であっても同じ対応をするグループ。

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Posted by ブクログ 2020年02月16日

多くの人は、人間にとっての性行為の対象は同じ人間である、ということを信じ込んでいる。男性&女性、男性&男性、女性&女性、男性&ケモナー(これは違う)・・・と、パターンはあれど、全て同じ人間が対象となる。

本書は「動物との性行為を選ぶ人々、ズー」を対象として、我々が盲目的に信じ込んでいるテー...続きを読むゼに揺さぶりをかける。なぜ彼らは動物を選ぶのか、どのような性行為が実際には行われるのか、それは動物虐待ではないのか、という様々な疑問を、数年に渡るズーとの生活を元にまとめられている。

彼らの性行為に共通するのは、動物にも性欲がある、という我々が”直視したくない事実”を受け入れている点である(そのため、性行為は直接的なものだけに留まらず、間接的に動物の性欲を処理する、というケースも含まれる)。自身が自明と信じ込んでいることが実は全く違うのだということをここまであからさまに示してくれる読書体験はそうそうない。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年02月10日

LGBTに「PZN」を加えることがあるということを読後に知った。Pはペドフィリア(小児性愛)、Zは本書のテーマであるズーフィリア(動物性愛)、Nはネクロフィリア(死体性愛)。

ズーたちのインタビューの中で度々出てくる「相手のパーソナリティを理解して」「まるごと受け入れる」という言葉が印象的だった。...続きを読む

動物に「誘われた」と感じて行為、そして特別な関係が始まることが多いそう。人間が動物に対して「自分に特別な感情を寄せている」と信じられるかどうかという点では、宗教も同じなのではないかと思ってしまう。信じる人にしか分からない世界というものがあって、それが正しいか間違っているかなんていうことは、信じることのできない人にはジャッジすることすらできない。

18〜19世紀ヨーロッパでは、少年のマスターベーションが害悪とされており、勃起するとペニスにトゲがささる器具などが開発された。純粋な存在であるはずの子どもの性の目覚めが、大人から見るとおぞましいものだった。

「動物性愛」と聞いて嫌悪感を抱く背景には、もの言わぬ純粋な子ども的存在として動物を見ていることがあるのかもしれない。

「自分は人間だから人間を好きになる」というのは、もしかした、「自分は女だから男の人が好き」というのと同様に、思い込みに過ぎない可能性もあるのかも?

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Posted by ブクログ 2020年01月31日

これはすごい!一見禁忌と思える関係性を持つ人々への取材を通じて見えてきたのは、セクシュアリティの本質。読み出すことを躊躇する題材だが、読めば新しい世界の形を知れるノンフィクションの醍醐味あふれた快作!

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Posted by ブクログ 2020年01月26日

★トピックと取材力の勝利★動物とセックスする人(ズーと自称する)のノンフィクション、というだけでつかみは満点。ドイツの団体を軸に友人関係を広げて、取材を掘り進めたのも力がすごい。動物を対等のパートナーとして受け入れ、(たまたま)彼らがしたがるからセックスもする(主に受け入れる)、という人々の話を丁寧...続きを読むに追う。自らのDV体験を照らし合わせながらセックスのありようを探るのは論文ではなくノンフィクションならではの書きぶりであり読ませ方だ。

 ただ著者も中盤で書いているように、取材対象者のほとんどは受け入れる側。動物と心が通じ合う側面はあるのだろうが、もともと裸で寝ていたりして彼らの性的な本能を刺激しやすいのも確かだろう。書名ともしたように、この団体の人々を「聖なるズー」と揶揄する人もいる。要するにちょっとええかっこしい、だと。自ら動物としようとする人もそれなりにいるらしい。そこは取材しきれなかった、と書いているように、著者も物足りなさを感じているからこの書名としたのだろう。ぜひ、その先を読みたい。

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Posted by ブクログ 2020年01月24日

読む前から、これから私はすごいものを読むんだと覚悟した。
まず、プロローグの著者自身の体験がショックだった。
そして、そのあとのズー達へのフィールドワーク。あまりにも未知の世界で読みながらも戸惑ってしまう。ただ、読み進むうちに、ズー達の特殊性が(特殊、少数かもしれないけど)、自然に思えてくるというか...続きを読む、最初の抵抗感がなくなっていくというか…
ズー達との付き合いによって、結果として、著者自身が救われていくのが良かった。まだ完全とは言えないし、そう簡単に傷は癒えないだろうが、新しい地平が広がったようで何よりだった。

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