篠田謙一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大学生の時に教養科目の中で考古学関連の講義を受講し、非常に面白かったことを覚えている。当時は2006年発売の書籍を基に講義をしていたが、そこからどれくらい研究が進んだかを知りたく、この書籍を読み始めた。
当時はネアンデルタール人はホモサピエンスと交雑することなく絶滅した、が有力であったが、それが覆されていることを知り、また、デニソワ人という、遺伝情報を基に定義されている人類が登場していることも驚いた。
書籍の中では人類の進化の概要を大きく説明したあとに、各大陸内の移動や交雑の状況を説明しているが、昔考えられていた内容とは比べ物にならないほど複雑な動きがあったことが説明されており、まだ発展途中の分野だと改めて感じることが出来た。
また、これまで人種(この言葉の使い方は怪しいがあえて記載する)の移動、文化の遍歴というのは、大体重なるモノと決めつけていたが、どうも「農業」という大きな括りでさえそうとは限らない、ということがわかりつつあるようで、今後の研究が面白そうだと感じた。 -
Posted by ブクログ
ネアンデルタール人の研究で成果を挙げた科学者が、2022年のノーベル生理学・医学賞を受賞したというニュースがありました。
DNA解析技術が、古代人さらには人類の起源についての研究に、大きな革命をもたらしていると聞いて、興味を持っていました。
そんな中、日本人著者が書いたこの新書が出版されていることを知り、アウトラインでも理解できればと思い、読むことにしました。
本書は第一章から第七章、および終章で構成されています。
序盤の第一章、第二章は、現代人:ホモ・サピエンスが、どのような進化の経路をたどって誕生したかの説明
古代人の骨がなくても、その古代人が住んでいた場所の土壌で、DNA解析できる場合があると知って、驚いてしまいました。
これらの技術によって、(まだまだ分からないことが多いながらも)従来の説を覆す新発見が続いているのだと、理解しました。
第三章は誕生の地、アフリカ大陸で、第四章はヨーロッパで、ホモ・サピエンスがどのように、広がっていったのかについて。
アフリカ大陸の中にいた間に、複数の系統が生まれ、離散と集合を繰り返していたのですね。
それだけ、アフリカ大陸以外に進出する前に、長い年月がかかったのだと理解しました。
ヨーロッパにおいても同様で、進化が一方向に直線的に進むのではないということを学びました。
第五章は、アジアさらには南太平洋への進出について。
第六章は”日本人“の起源について。
日本人集団の成立については、従来から言われていた通り、農耕文化の伝播が大きく影響している。
しかしその経路は、考えられていたよりも複雑なのだと、理解しました。
沖縄と北海道の文化の変遷も、興味深く読みました。
第七章は、アメリカへの進出について。
終章は、これまでの研究から何が見出されたか、それをどう活かすかについて。
アメリカ大陸へのホモ・サピエンスの進出は、従来考えられていたよりも前に始まっていた。
しかしその後、地球の気温変化により停滞を余儀なくされていた。
ここでも、進化が一方向には進んでいかないこと、時間がかかるのだということを、学びました。
読み終えてまず、新しい技術によって新たな知見が見出されていること、その中には、これまでの常識や定説を覆すものが含まれているということに、大きな可能性を感じました。
著者も書いているように、まだ発展途上の研究なので、さらにわかってくることも多くありそうですね。
まだ、古代人のデータ解析が進んでいない地域のデータも多いようなので、この分野の本は今後もチェックして、最新の知識を得ていきたいと思います。
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Posted by ブクログ
現世人類(ホモサピエンス)がいつ発生して、どの様に地球上に広がったかを最新の研究に基づいて説明した本です。
元々興味があった分野の最先端の情報が紹介されており、時間を忘れて読み耽るほど面白かったです。出アフリカ後の人類は様々に枝分かれして、現在の形質を獲得したという漠然としたイメージを持っていましたが、集散離合を繰り返して現人類が形成されたという話は、今まで持っていた知識が如何に単純化されすぎたものなのか思い知りました。
また、本書に記載されてることが広く知られることは、社会的な意義も大きいと考えています。特に以下の事実についてより広く世の中に認知されるべきではないかと強く思いました。
■現代人類は全員、遺伝的に99.9%同じである。
■遺伝的な距離(差異)は、異なる民族間よりも、同じ民族内の個人間の方が大きい。
■そもそも「民族」や「人種」といった概念は、科学的に定義できない。
民族や人種に自身のアイデンティティを求めるのは全く悪いことではないと思います。ただ、それは科学的な定義ができない曖昧な概念であると知ることは、民族や人種という考えがもたらす社会的な対立を避ける為に重要だと思います。決して大げさではなく、本書の内容が世に広まることはそういった社会の中の軋轢を緩和する一助となるのではないでしょうか。 -
Posted by ブクログ
古代ゲノム解析にもとづく人類の進化史とホモサピエンスの拡散と集団の成立史。
ホモサピエンスという視点から民族を考察した場合、そもそも民族集団の成立が数千年前と人類史から見たらごく最近であり、また、その集団内の遺伝的な性格はそれぞれに違い、遺伝的な性格を変化させていることから何々民族が優秀だとか劣っているとかはナンセンスであり、将来は他集団との混合で民族が生物学的な実態を失っていくとの指摘はなるほどと思いました。
ホモサピエンスのゲノムは99.%が共通で0.1%に姿形や能力の違いの原因となっている変異があることからだが、その大部分は交配集団の中に生まれるランダムな変化であるとの指摘にもそうかと納得でした。
ゲノム分析により人類、文明や民族の認識が広く変わっていくのだろうと思いました。
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Posted by ブクログ
科博内部の研究者から初めて館長職に就任した著者が語る、
博物館とは。科学系博物館とは。そして、国立科学博物館の
足跡と未来の展望について。
・はじめに
PART1 文化としての科学
PART2 博物館の役割
PART3 科博の実践――「リアル」の価値を問い直す
・あとがき
コラム、写真出典一覧有り。
科博の歩み、実情と未来への展望を伝える内容です。
技術開発と科学の進歩は、ホモサピエンスの進化と
ゲノム研究。古代ゲノムの解析での人類の進歩の研究へ。
それは、自然科学と人文科学の関係性。
自然科学も文化の一部として社会に定着させる重要性がある。
国立科学博物館の歴史は、理工系と自然史。
5つの研究部に専門家な約60人の研究者たち。
本館以外の施設と収蔵庫。約5,000万点の収蔵品数。
自然教育園の事。実験植物園には、ショクダイオオコンニャク、
ニュートンのリンゴとメンデルのブドウの木がある。
文化財と自然史財について。標本の価値。
博物館と法律。独立行政法人という位置。
そしてコロナ禍の苦心惨憺とクラウドファンディング。
以前、「標本バカ」川田伸一郎/著を読んでいたので、
光熱費の高騰は標本保存に影響を与えるだろうと心配して
いましたが、標本・資料が“地球の宝”としてのスローガンと
成り、クラファンを行ったことには、胸が熱くなりました。
また、その地域ならではの研究と標本がある、
全国の博物館との協働も、未来への布石になると思います。
この本がSFの大御所の早川書房から出たことも、嬉しい。
「科学を文化に」は未来への希望とも感じました。 -
Posted by ブクログ
本書は、DNA分析を駆使する自然人類学の研究により、江戸時代の切支丹屋敷跡から出土した人骨が、18世紀に新井白石と対話したことで日本史の教科書にも名を刻むイタリア人宣教師ジョヴァンニ・シドッチのものであることを解明したことのドキュメンタリー的な記録である。
遺跡から出土した人骨が誰のものかを科学の力で特定するという内容で、読んでいてとてもワクワクした。(詳しく説明されてはいたのだが)DNA分析の原理などについて十分に理解できたとは言い難いけれども、自然人類学をはじめとする科学研究の面白さは、十分に感じることができた。
また、発掘調査の主体であった文京区に対する様々な不満も赤裸々に記されていて、行政における発掘調査や、その中での他機関との連携という点においても、教訓的な内容であった。 -
Posted by ブクログ
いま話題の国立科学博物館・篠田館長のご専門は分子人類学であり、DNAなど遺伝子分析から人類の進化史を探る研究をされてきた。昨年のノーベル医学賞ではOISTのぺーポ博士が選ばれたように、遺伝子シークエンスによる我々のルーツ研究は日進月歩で発展している分野だ。
驚くべきなのは、ネアンデルタール人やデニソワ人といった絶滅人類とも交配し、現在の我々の遺伝子にもその数%の痕跡が認められることだ。そしてホモ・サピエンスには約30万年前と約10万年前の二度、出アフリカしたと考えられ、初期拡散は約20万年前には失敗に終わった。つまり最初は、他の人類との競争に敗れたのだ!
この辺りの研究成果と、ハラリ氏の『サピエンス全史』等の考察を組み合せると、出アフリカ後の中央アジア地域の重要性に気づく。いわゆる肥沃な三日月地帯と呼ばれる、メソポタミア〜エジプト文明に至る農耕や牧畜の起源とされる人類社会揺籃の地において、ホモ・サピエンスが人口を増加させていった。それが他の人類を吸収・根絶させながら拡散する原動力となった仮説が浮かんでくる。
翻って現代の国際社会においても、この中東やウクライナを含むユーラシア大陸中央部は、食糧やエネルギー等の人類社会における最重要地域である。そして残念なことに、度重なる戦争によってこれら人類の進化史を記すような貴重な遺跡や化石資料が失われている状況でもある。人類はどこから来たのか、そしてどこに向かうのか。世界の中心はいまも混迷している。