篠田謙一のレビュー一覧
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いま話題の国立科学博物館・篠田館長のご専門は分子人類学であり、DNAなど遺伝子分析から人類の進化史を探る研究をされてきた。昨年のノーベル医学賞ではOISTのぺーポ博士が選ばれたように、遺伝子シークエンスによる我々のルーツ研究は日進月歩で発展している分野だ。
驚くべきなのは、ネアンデルタール人やデニソワ人といった絶滅人類とも交配し、現在の我々の遺伝子にもその数%の痕跡が認められることだ。そしてホモ・サピエンスには約30万年前と約10万年前の二度、出アフリカしたと考えられ、初期拡散は約20万年前には失敗に終わった。つまり最初は、他の人類との競争に敗れたのだ!
この辺りの研究成果と、ハラリ氏の『サピエンス全史』等の考察を組み合せると、出アフリカ後の中央アジア地域の重要性に気づく。いわゆる肥沃な三日月地帯と呼ばれる、メソポタミア〜エジプト文明に至る農耕や牧畜の起源とされる人類社会揺籃の地において、ホモ・サピエンスが人口を増加させていった。それが他の人類を吸収・根絶させながら拡散する原動力となった仮説が浮かんでくる。
翻って現代の国際社会においても、この中東やウクライナを含むユーラシア大陸中央部は、食糧やエネルギー等の人類社会における最重要地域である。そして残念なことに、度重なる戦争によってこれら人類の進化史を記すような貴重な遺跡や化石資料が失われている状況でもある。人類はどこから来たのか、そしてどこに向かうのか。世界の中心はいまも混迷している。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ新書大賞第2位ということで手に取ってみた。
以前は古人骨からミトコンドリアを取り出し分析することしかできなかった(十分すごいと思う)。しかし科学の進歩に伴い、21世紀になってから古代ゲノム解析が可能になった。古代ゲノム解析によって古人骨のかけらや便などからも多くのことがわかるようになった。それは性別や性別だけではなく食生活から集団の規模まで。それらの情報を集めることで人類の起源(どういった流れでホモサピエンスが世界展開を成し得たか)を読み解くのが本書である。
古代ゲノム解析によって非常に多くのことが解明できるというのは衝撃だった。特に遺伝的特徴を共有している集団と言語的集団が相関関係にあるというのは私にとって新しい発見だった。現代のグローバル社会ならいざ知らず、太古の昔であれば言語や文化を共有していると婚姻するのは当たり前といえば当たり前なのだが。
種の定義として「自由に交配し、生殖能力のある子孫を残す集団」とある。私もこの理解だったが、ではホモ・サピエンスとネアンデルタール人が別種である根拠は何なのだろう?交配は限定的だったから別種ということなのだろうか?また、アメリカ大陸に農耕が伝わった方法に関してもよくわからなかった。ベーリング陸峡を経てアメリカに渡ったのは狩猟採集民だよね?
内容は非常に濃密で興味深かったのだが、正直なところ私には少し難しかった。難解な内容が簡潔にまとめられているのだろうが、淡々と根拠と結論が提示されていくだけで、教科書を読んでいるような感覚になった。さすがは中公新書というべきか。予備知識があったりすればもっと楽しめるのだろう。
終章には古代ゲノム解析の結果を悪用し、人種や民族を差別することに対する警鐘を鳴らしていた。ここ最近読んだ『なぜ事実は人の意見を変えられないのか』でも人の行動の80%以上は共通しているとあった。人は皆そんなに変わらない。仲良くしていけばいいのにな。 -
Posted by ブクログ
書店で見かけて気になってはいたんだけど、直接のきっかけはどこかの書評から。科博、行きたいな~。一度だけ立ち寄った時も、短時間しか滞在できず、不全感しか残ってないからな~。本書を読んで、そういえばクラファンの話題で見かけたときにも、凄くいきたい気分が盛り上がったんだったと思い出した。それにしても、国立なのに国からの救済措置はろくに得られず、更には内部留保も許されんって、えらい厳しい条件だな。一般企業だと考えられんことだけど、こういうところにも、利潤企業最優先、公の部分については、自分たちが太ることしか考えん、っていう国の本質が垣間見えて嫌だな。本筋とは逸れるけど、そんなことが印象に残っちゃう。