篠田謙一のレビュー一覧
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著しい発展が日進月歩で進む人類の進化史は、今最も注目を浴びている学術分野の一つと言って差し支えないだろう。本書はホモ・サピエンスがいかに拡がり、そしてどのような集団を形成したのかを詳述している。
DNA配列の変異を追い、集団の近縁を知ることができるということを、多くの具体例やルートと共に検証していく過程にワクワクする気持ちを抑えられないほどに知的好奇心を刺激させられる。
日本史や世界史においての文明やクニの興りは、集団の移動の歴史とも捉えることができることは、いかに断片的な歴史認識をしていたかと考えさせられる記述が多く、科学と歴史の融合が非常に心地よく文に編まれている。
文理融合型の学 -
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何冊かオーディブルを聞いてきたけれど、この本ほどオーディブルらしいものはなかったように思う。
ナレーターはデジタルボイスで、内容が科博と科学についてというものだったため、私が子どもの頃に思い描いていたSFのような手触りをしていた。
とはいえ、手触りこそSFではあるものの、内容はれっきとした現実、あまり手放しで楽観視出来ない状況というか、いささか情けない気持ちになってしまう現状があったりする。しかし、著者はひたすらに前向きで言葉選びも丁寧だ。文理を超えての、人文学に教育の軸を……という考えにも同感だ。
残念なことに、こうした話を読んだり聞いたりするのは、興味を持つ人が多数を占めるわけだけれど…… -
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初期猿人は700万年前、200万年前に原人グループ(180万年前に出アフリカ)、複数のホモ種、ホモ・サピエンスとネアンデルタール、デニソワとの交雑。
ホモ・サピエンスは30万年前にアフリカで誕生、6万年前に本格的に世界に拡散(20万年前から一部は拡散)。
P66-人類の旅路。4-3万年前に日本に。
6万-1万年前に狩猟採集民が世界拡散(初期拡散)。後期旧石器時代は気候変動が激しい。
出アフリカ、ユーラシア基層集団とヨーロッパ系統、東アジア系統。
すべての集団は異なる集団との合流や離散、交雑や隔離を経て成立してきた。
アウトオブ台湾モデル。台湾の初期農耕民が6000-5000年前にポリネシアへ。 -
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2022年のノーベル医学・生理学賞を受賞者したのは古遺伝子学の創始者、スバンテ・ペーボさんだったことは記憶に新しい。ペーボさんの研究はシベリアのデニソワ洞窟で見つかった古人骨のDNA分析から、未知の古人類「デニソワ人」を「発見」した。
そんな、今最もホットな科学分野である人類史の最新情報を、本書はできるだけわかりやすく(少なくともこういった分野に関心がある人たちに対して)、嚙み砕いた言葉で丁寧に伝えてくれる。刊行から1年が経ち、時の流れとともに更新される情報も少なくないであろうことを差し引いても、今すぐに、手っ取り早く読める、「人類の誕生から拡散の過程、そして、DNA遺伝子学が描く未来」までを -
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大学生の時に教養科目の中で考古学関連の講義を受講し、非常に面白かったことを覚えている。当時は2006年発売の書籍を基に講義をしていたが、そこからどれくらい研究が進んだかを知りたく、この書籍を読み始めた。
当時はネアンデルタール人はホモサピエンスと交雑することなく絶滅した、が有力であったが、それが覆されていることを知り、また、デニソワ人という、遺伝情報を基に定義されている人類が登場していることも驚いた。
書籍の中では人類の進化の概要を大きく説明したあとに、各大陸内の移動や交雑の状況を説明しているが、昔考えられていた内容とは比べ物にならないほど複雑な動きがあったことが説明されており、まだ発展途中の -
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ネアンデルタール人の研究で成果を挙げた科学者が、2022年のノーベル生理学・医学賞を受賞したというニュースがありました。
DNA解析技術が、古代人さらには人類の起源についての研究に、大きな革命をもたらしていると聞いて、興味を持っていました。
そんな中、日本人著者が書いたこの新書が出版されていることを知り、アウトラインでも理解できればと思い、読むことにしました。
本書は第一章から第七章、および終章で構成されています。
序盤の第一章、第二章は、現代人:ホモ・サピエンスが、どのような進化の経路をたどって誕生したかの説明
古代人の骨がなくても、その古代人が住んでいた場所の土壌で、DNA解析できる -
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現世人類(ホモサピエンス)がいつ発生して、どの様に地球上に広がったかを最新の研究に基づいて説明した本です。
元々興味があった分野の最先端の情報が紹介されており、時間を忘れて読み耽るほど面白かったです。出アフリカ後の人類は様々に枝分かれして、現在の形質を獲得したという漠然としたイメージを持っていましたが、集散離合を繰り返して現人類が形成されたという話は、今まで持っていた知識が如何に単純化されすぎたものなのか思い知りました。
また、本書に記載されてることが広く知られることは、社会的な意義も大きいと考えています。特に以下の事実についてより広く世の中に認知されるべきではないかと強く思いました。
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Posted by ブクログ
古代ゲノム解析にもとづく人類の進化史とホモサピエンスの拡散と集団の成立史。
ホモサピエンスという視点から民族を考察した場合、そもそも民族集団の成立が数千年前と人類史から見たらごく最近であり、また、その集団内の遺伝的な性格はそれぞれに違い、遺伝的な性格を変化させていることから何々民族が優秀だとか劣っているとかはナンセンスであり、将来は他集団との混合で民族が生物学的な実態を失っていくとの指摘はなるほどと思いました。
ホモサピエンスのゲノムは99.%が共通で0.1%に姿形や能力の違いの原因となっている変異があることからだが、その大部分は交配集団の中に生まれるランダムな変化であるとの指摘にもそうかと納